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オフ会

 ぼくはオカマである。

 と言っても、本物のゲイではない。あくまでもネットゲーム上での話だ。ぼくはあるゲーム上でヒロインを演じている。音声もかわいい女子の声に加工してしゃべっているから誰にも気づかれない。チヤホヤされ放題を楽しんでいたのである。

 それでも問題はある。オフ会に出席できないことだ。メンバーの彼らに素顔をさらけ出すことができないのだ。たぶんその途端、ぼくは彼らから相手にしてもらえなくなってしまうだろう。だからオフ会にはなんだかんだと理由をつけて欠席し続けてきたのだ。

 ところが、何度もオフ会を欠席していると、主役不在のオフ会はつまらんと、あちこちから出席を切望するリクエストが集まり出した。どうしよう。このまま消える・・・・・・という手もある。しかしせっかく構築した現在の関係を手放すのも忍びない。そこでぼくは打開策を考えたのだ。


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「たのむよ。今回だけ」ぼくは彼女に手を合わせた。「一度でいいからさ。ミルクちゃんになって欲しいんだ」

「ミルクちゃん?」怪訝けげんな顔で彼女がぼくを見る。「なにそれ?」

「だからさ。ゲームの中のぼくに扮して出席して欲しいんだ」

「その顔で女やってる訳?」

「・・・・・・ごめん。だってそうでもしないと注目されなくてさ。試しに一度やってみたらこれが大受け」

「バカじゃない。嫌よそんなの。だいたいゲームのことなんかこれっぽっちも知らないし」

「教えるから。オフ会で話す内容なんてだいたい決まってるし。あのボスは手強かったとか、あの武器は使えないとか、今度はこういう作戦で行こうとか・・・・・・」

「絶対にイヤ」

「わかった。なんでも買ってあげる」

「いらない」

「じゃあ、ディズニー・リゾートに連れてってあげる」

「それだけ?」

「わかった。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも」

「ううん・・・・・・どうしよっかなあ」


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「どうだった?」

 オフ会の終わった頃、ぼくは彼女に電話を掛けた。

「めちゃくちゃ楽しかったよ。また行きたい」

「ほんと」

「だって、集まったのが女の娘ばかりだったから」

「え?」

「オフ会ってただの女子会じゃん」

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