景気のいい
拍手とともに、舞台の袖から着物を着た
最初の拍手は、「待ってました!」の拍手。あとの拍手は「これから面白いのを聞かせてね」という期待の拍手である。
ええー、落語で
落語で漫才なんてやろうもんなら、それはもう、頻繁に首を左右に振らなければならないのでございます。
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「ハっつあん。わてもぼちぼち就職しよ思うてまんねん」
「へえ。熊さんが就職かいな。そんなナリして」
「そんなナリって何やねん」
「丸坊主にタンクトップに革の短パンて・・・・・・」
「外見は関係あらへんやろ」
「で熊さん。どんな仕事がしたいん?」
「そやな。人を笑わせる仕事がやりたいねん」
「人を笑わせるって言うてもいろいろあるで。熊さんくすぐり上手やさかいな」
「だれがくすぐり上手やねん。あるやろ、落語家とか漫才師とか」
「あるなあ」
「できればカッコいい方がやりたいねんけど・・・・・・八っつあん、なんで仕事って、“いえ”がつくのと“し”がつくのがあるんやろな」
「“いえ”と“し”、なにそれ?」
「だから、落語家とか、画家とか、写真家とか、小説家とか、武道家とか、政治家とかはみんな“家”がつくやろ」
「そやな」
「でも漫才師とか、医師とか、弁護士とか、消防士とか、教師とか、牧師とか、理容師とか、囲碁将棋の棋士とかはみんな“し”がつくやないか。あれはなんでなん?」
「ううん・・・・・・たぶんな、“家”がつく方は専門知識とか才能を必要とする職業やないかな」
「ほう、そんで」
「“し”の方は資格が必要な職業だと思うがな」
「あっそうか。なあるほど。家は才能、しは資格か。やっぱり八っつあんは頭いいなあ。今度いい男紹介したるわ」
「アホ言いなさんな。あんさんじゃないんだから、紹介するのは女にしてちょうよ」
「・・・・・・ん?でもおかしいなあ」
「なにがおかしいんや」
「医師とか弁護士とかは分かるよ。でも漫才師に資格はいらんやろ」
「それもそうやな・・・・・・おお、そうや!」
「なに、分かったの」
「よく考えたら詐欺師もシがつくけど資格なんていらへんやないか。漫才師も人をだまくらかして笑いを取るからやないのかな」
「失礼なことを言うたらアカンて。ぼくのなりたい漫才師は詐欺師やないよ」
「じゃあ熊さんがなりたいの何やねん」
「ゲイ(芸)人やて」
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お後あとがよろしいようで。