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インマイライフ
杉村行俊
現実世界現代ドラマ
2024年12月06日
公開日
52,516文字
連載中
第一話 主人公の主婦が実家の母親に勝手にテレビ番組の愛妻家コンテストにエントリーされてしまった。次々と紹介されるすばらしい愛妻家たち。こんなことならもっとちゃんとしておけばよかった・・・と後悔する。
第二話 妻が宝くじの当たりやすいひとの特徴記事が夫にマッチしていることを教えた。それからしばらくして、夫の素行が妙におかしくなったことに気づく。
第三話 主人公は母のすすめで舞妓になるため、置屋に弟子入りすることになった。苦しい修行の末、ようやく舞妓になることができたのだがすぐに実家に帰されてしまうことになった。意気消沈した親娘は・・・。
第四話 主人公は雑誌の取材のためフランス人シェフの家を訪ねる。和食器と洋食器の違いを教えてもらうためだ。ところが最後にとんでもない理由をきかされることになる。
第五話 真は世界チャンプを夢見るボクサーだ。練習のため恋人の千鶴と会えない日々が続いていた。だから千鶴は軽い気持ちでボクシングジムの練習生なることにしたのだった。
第六話 娘の七つのお祝いに天神さまにお札を収めに行った親子は、途中気味の悪いお婆さんに出逢う。
第七話 新しい試み。落語で漫才をやってみた。
第八話 主人公はネットゲームの世界でヒロインを演じてきた。そんなある日オフ会にどうしても出席しなければならなくなる。そこで彼女に頼み込んで主人公になりすまして出席してもらうことにしたのだが・・・・・・。
第九話 ふたつの部署に所属する新入社員の主人公は個性的なふたりの上司に翻弄される。
第十話 本日のコーヒーで使われている豆をクイズ形式てにしている喫茶店。マスターはある日コーヒー通のお客にちょっとした悪戯をすることを思いつく。
第十一話 北方領土でラーメン屋を営む主人公は、ある日隊と逸れたロシア兵にラーメンを奢った。
第十二話 家族写真に見知らぬ人間が写っていた。よくよく訊いてみたら・・・・・・。
第十三話 主人公はOLになって笑顔をつくる研修を受ける。
第十四話 仕事一筋でがんばってきた主人公は永年勤続で会社から休暇をもらうが、どう暇をつぶしていいのか分からず・・・・・・。
第十五話 主人公は妻からクリスマスツリーがもらえるクイズに参加させられる。
第十六話 主人公は涙ぐましい努力をして禁煙を成功させる。
第十七話 現代サッカーはデータを駆使していた。
第十八話・・・・・・

愛妻家

 封書が届いた。


“本日は『わが夫こそ愛妻家コンテスト』に応募いただきまして誠にありがとうございます。

 当番組では、あなたの愛する夫たちが、オフレコで奥様に何か喜んでいただくものをプレゼントしていただきます。その状況は、マイクロ・ドローンと隠しカメラで撮影させていただきます。

 もちろん、放送できない部分に関しましてはカットさせていただきますのでご安心ください。そしてそれらを採点し、みごと優勝したご夫妻には、世界一周旅行にご招待するという豪華な企画になっております。”


 洋子は驚いた。

 なんと実家の母親が、無断で番組に応募してしまっていたのだ。しかも収録はすでに終わっているという。妻の誕生日が同じ夫婦をテレビ局が募集する。その日の様子を隠し撮りし、後日会場と視聴者にみせてリモコン操作で採点させるのである。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 最初に画面に現れたのは、一流商社マンである。仕事帰りに高級フランス料理店で妻と待ち合わせをし、豪華なフルコースをいただいた。

 会場からは「うんうん」と納得する声が聞こえる。


 次に画面に映し出されたのは、恰幅かっぷくのいい経営者風の男である。高級車で帰宅すると、おもむろにポケットから箱を取り出した。見たこともないような大粒のダイヤモンドが入っていた。

 会場から「きゃー」という歓喜の悲鳴。


 三番目に現れたのは、口ひげを生やしたイケメンの紳士である。彼は帰宅早々、後ろ手に隠していた100本の薔薇の花束を妻に捧げた。

 会場からは羨望せんぼうのため息。


 四番目は気のいい爽やかな男である。口笛を吹きながら妻の前に、箱を置いた。妻が箱を開けると、中からスコティッシュフォールドという、可愛らしい子猫が一匹でてきた。

 会場は拍手喝采である。


 最後に洋子の亭主があらわれた。すこし頼りなさそうに見える、ごく普通のサラリーマンだ。

 こんなことなら、普段からもう少しいい背広を着せておくべきだったと思っったが今さらしかたがない。

 夜もふけている。夫は仕事で帰宅が遅くなってしまったらしく、洋子はすでに床についていた。夫は早々に食事を済ませ、食べた食器を洗い、風呂に入り、浴槽を洗って出てきた。

 この夫婦にはなにも起こらなかったように見えた。

 夫は音を立てないように寝室に入ると、洋子を起こさないように静かに顔を近づける。そしてそっと口づけをした。


 信じられないことが起きた。満場の拍手と膨大な点数が、洋子の夫婦に加算されたのである。

 電話が鳴った。テレビのコメンテーターからである。夫が受話器を取った。

「おめでとうございます!あなたは愛妻家コンテストでみごと優勝なさいました」

「はあ?・・・・・・それはまたどうもありがとうございます」

「ご感想をどうぞ」

「いえ、とくに何も。だっていつもやってることですし」

「それですよ、それ。それこそが愛妻家ってもんですよね!」

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