賢一たちが休んでいると、ジャンとエリーゼ達は、既に出発の準備を終えて、外に出ていた。
「あの二人…………モイラとダニエル達は、どうしたんだ?」
「奥の方に、遊びに行ったのかしら?」
「いや、今に来るだろう~~? きっと、ダニエルは休んでいるだけだ? モイラは、お手洗いと言ってたし? 何なら呼びに行くが」
「私も、二人を探して来ましょうか?」
姿の見えない仲間たちを、ジャンは気にして、後ろに振り返ってみる。
エリーゼは、サップを取り出し、肩に担ぎながら店内を、目を細めながら見つめる。
店の奥から、賢一は出てくると、背筋を伸ばして、二人に心配は要らないと答える。
メイスーも、ガラス戸に顔を向けながら、取り敢えず、呼びに行くために歩こうとした。
「いや、その必要は無いぜ? ちっと、食える物がないかと探しててな」
「私も、用は済んだし、行くとしましょう」
その時、ちょうど、ダニエルとモイラ達が、並びながら歩いてきた。
「この先も、歩いて行くのか? ん? 何か音が聞こえなかったか? いったい、何だ」
「あっ! 何でしょうか? 岩が斜面を転がるような?」
「まさかっ!? やっぱり、ゾンビの襲撃だよっ! 連中、波になって、押し寄せる気だわ」
「今すぐ、走るんだっ! ビーチの時と同じく、飲み込まれたら、お仕舞いだぞ」
何処か遠くから、小さいが微かに物音が聞こえ始め、賢一とメイスー達は、それに気がつく。
異変を感じて、モイラとジャン達は、音が鳴る方に振り向くと、様々なゾンビ達が目に入った。
「グアアアアアア~~~~」
「グオオーーーー!?」
フレッシャー&ジャンピンガー達が、津波のように押し寄せてきている。
「そうは言ってもなっ! やっべえ~~のは分かってるが、このままじゃあ、追いつかれてしまうぜっ!」
「これで死ぬの? そんなの拒否するわよっ!」
焦りまくり、ダニエルは咄嗟に取り出した、トカレフを両手で、撃ちながら叫ぶ。
エリーゼも、少し驚いた表情を見せながら、逃げる場所を探して、頭を左右に振りまくる。
「あっ! アレだっ! あの車なら、全員が乗られるっ!」
「あんなポンコツ、ちゃんと走るのかいっ!」
賢一が発見したのは、バジャイと言われる、インドネシアを走る、幌つき三輪車だ。
屋根があるだけで、バイクと車を合体させたような見た目は、モイラにすれば、ボロ車に思える。
「だが、アレに乗るしかないっ! 急げっ!」
道路左側に、前後二台に並んでいる、紅と青のバジャイに向かって、賢一たちは走る。
「鍵は…………不味いっ! いや、大丈夫そうだっ!」
「こっちも、動くよっ! 」
ようやく、赤いバジャイに飛び乗ってから、賢一は鍵の事を考えだした。
そして、モイラも、青いバジャイのエンジンをかけると、直ぐに発進させる。
「先に行くよっ! 賢一、はやくしなっ!」
「撃ちまくるぜっ!!」
「はあ、何とか間に合ったわ…………」
「分かってる、こっちも直ぐに動かすっ!」
「足留めは、任せてくれ」
「もう、そこまで来てますよっ!」
モイラの赤いバジャイは、直ぐに、青いバジャイを追い越していき、道路を爆走する。
ダニエルは、後ろの座席左側から、トカレフを撃ちまくり、ゾンビ達を牽制する。
エリーゼは、座席右側の幌を掴みながら、向かってくる群れを眺める。
賢一も、エンジンを何とか始動させると、すぐさま敵から距離を取るべく、発進させる。
ジャンとメイスー達は、座席の左右から、リボルバーを敵に向けながら叫ぶ。
「ふぅ~~助かった? 後は、モイラ達に続いて、病院に向かうっ! これは、ポンコツに見えるが、意外と速度が出るな」
「何とか成ったなっ! 近くに来るのは任せてくれっ! ん、アレは運転手の死体か? どうやら、彼等は間に合わなかったようだな」
「来ないで下さいっ! 撃ちますよっ! 近づかないでっ!」
青いバジャイを運転している、賢一は、スピードを一気に上げて、ゾンビ達から離れていく。
ジャンは、狙いを定めて、一番形拳銃から、強力なマグナム弾を放つ。
二十六年式拳銃を構えると、メイスーは群れに対して、弾丸を何発も撃った。
こうして、先頭を走ったり、跳び跳ねたりするゾンビ集団は、射殺されていく。
「死体だと? 発進させるのに、夢中で気がつかなかった…………」
「ガアガアガア、ガアガアッ!?」
「ギャイーーーーーー!!」
賢一が運転する、バジャイの猛烈なスピードには、流石にゾンビ達も追いつけない。
連中は、徐々に距離を開けられていき、ついには彼等を取り逃がしてしまった。
「はぁぁ? ここまで、来れば? 連中も追っては来ないだろうな?」
「だねっ! そろそろ、止めようかっ? 燃料も少ないし?」
賢一が、バジャイを右側の路肩に停車させると、モイラも左側に車両を寄せる。
「病院までは、かなり近い? ここからは、再び歩いて行くぞ? みんな、問題ないよな?」
バジャイから降りて、賢一は腰から、特殊警棒を取り出すと、真顔で仲間たちを見る。
「ビル街だね? ここは上からの奇襲に気をつけて、行かないとっ!」
「ジャンプする奴が、降ってくる可能性があるからな、マグナムに弾丸を込めないと」
市内・中央区域に到達して、モイラは幾度となく、経験した市街戦を思いだす。
渋い顔をしながら、ジャンは一番形拳銃のシリンダーをずらして、マグナム弾を装填する。
「ああ、気をつけていこう」
そう言って、賢一とモイラ達は、曲がり角や上方、地下室の窓などに気を配りながら歩く。
だが、ゾンビ達やギャング達による奇襲攻撃に対する警戒は、杞憂に終わった。
「見えてきた? 大きな建物だ」
七階建ての病院は、立派な駐車場を持ち、左右に小さな建物がある。
「ふぅ…………後は、あの曲がり角を曲がるだけだ」
「そうしたら、病院の正面ゲートだね」
「ここから、軍の車両が見えるぜ」
「きっと、警備のために駐留しているのよ」
賢一とモイラ達は、レストランから右側を眺めて、病院が無事かどうかを確かめる。
ダニエルとエリーゼ達も、緑色に塗装された数台の軍用車両を、険しい目付きで見つめる。
「ハンヴィー&ケネディ・ジープだな? 各二台ずつ停車している」
「さらに、後ろにはトラックから乗用車まで、並べて、第二のバリケードにしているわ」
賢一は、青緑のポールフェンスにまで、歩いていき、モイラも後を追う。
「そこの連中、止まれっ! 止まらないと、撃つぞっ!」
「警告を無視した場合、即座に射殺するっ!!」
「撃つなっ! 俺たちは、ギャングじゃないっ!」
「俺は、プロケトの消防士だっ! 同じ公務員だろうがっ!」
突如、横並びになっている、ハンヴィーとケネディ・ジープから怒声が響く。
それは、白人兵士と黒人兵士たちが、こちらを見ながら、M16A2を向けてきたからだ。
賢一は、彼等の前で、両手を上げながら、自身らが敵ではないと説得を試みた。
同じく、ジャンは陸軍兵士たちを睨みつけ、なぜ銃を向けるのかと、怒鳴り返す。
「見慣れない迷彩服を着ている以上、反政府ゲリラの可能性があるっ!」
隊長らしき、野戦帽を被る東南アジア系の兵士が、こちらに向かって叫ぶ。
「待って、私は合衆国海兵隊だよっ! この迷彩が見えないのかいっ!」
「白人女性の観光客と、か弱いアジア人女性も居るのよっ? それでも、撃つの?」
モイラは、自身の所属を言って、エリーゼは自身が民間人である事を強調する。
「隊長さんよっ! 俺たちは、刑務所の部隊から偵察部隊を探すように言われてたんだっ!」
「そんなの信じられっ? は…………」
「見つけたっ! 撃ちまくれっ!」
「奴等を、殺せっ!! 薬を奪うんだっ!!」
さらに、説得を続けようと、賢一は自分たちが、病院にきた理由を話してみた。
しかし、隊長は信じていないらしく、敵意を向けたまま警戒するが、彼は何かに気づいた。
それは、ピックアップを中心とするギャング部隊が、右側から道路を走ってくる音だ。
白人ギャングは、荷台からM1カービンを撃ちまくり、黒人ギャングは、マカロフを乱射する。
こうして、暴走族のように現れた連中により、病院は、たちまち戦場と化した。