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第20話 病院までの道のり


 賢一たちが休んでいると、ジャンとエリーゼ達は、既に出発の準備を終えて、外に出ていた。



「あの二人…………モイラとダニエル達は、どうしたんだ?」


「奥の方に、遊びに行ったのかしら?」


「いや、今に来るだろう~~? きっと、ダニエルは休んでいるだけだ? モイラは、お手洗いと言ってたし? 何なら呼びに行くが」


「私も、二人を探して来ましょうか?」


 姿の見えない仲間たちを、ジャンは気にして、後ろに振り返ってみる。


 エリーゼは、サップを取り出し、肩に担ぎながら店内を、目を細めながら見つめる。



 店の奥から、賢一は出てくると、背筋を伸ばして、二人に心配は要らないと答える。


 メイスーも、ガラス戸に顔を向けながら、取り敢えず、呼びに行くために歩こうとした。



「いや、その必要は無いぜ? ちっと、食える物がないかと探しててな」


「私も、用は済んだし、行くとしましょう」


 その時、ちょうど、ダニエルとモイラ達が、並びながら歩いてきた。



「この先も、歩いて行くのか? ん? 何か音が聞こえなかったか? いったい、何だ」


「あっ! 何でしょうか? 岩が斜面を転がるような?」


「まさかっ!? やっぱり、ゾンビの襲撃だよっ! 連中、波になって、押し寄せる気だわ」


「今すぐ、走るんだっ! ビーチの時と同じく、飲み込まれたら、お仕舞いだぞ」


 何処か遠くから、小さいが微かに物音が聞こえ始め、賢一とメイスー達は、それに気がつく。


 異変を感じて、モイラとジャン達は、音が鳴る方に振り向くと、様々なゾンビ達が目に入った。



「グアアアアアア~~~~」


「グオオーーーー!?」


 フレッシャー&ジャンピンガー達が、津波のように押し寄せてきている。



「そうは言ってもなっ! やっべえ~~のは分かってるが、このままじゃあ、追いつかれてしまうぜっ!」


「これで死ぬの? そんなの拒否するわよっ!」


 焦りまくり、ダニエルは咄嗟に取り出した、トカレフを両手で、撃ちながら叫ぶ。


 エリーゼも、少し驚いた表情を見せながら、逃げる場所を探して、頭を左右に振りまくる。



「あっ! アレだっ! あの車なら、全員が乗られるっ!」


「あんなポンコツ、ちゃんと走るのかいっ!」


 賢一が発見したのは、バジャイと言われる、インドネシアを走る、幌つき三輪車だ。


 屋根があるだけで、バイクと車を合体させたような見た目は、モイラにすれば、ボロ車に思える。



「だが、アレに乗るしかないっ! 急げっ!」


 道路左側に、前後二台に並んでいる、紅と青のバジャイに向かって、賢一たちは走る。



「鍵は…………不味いっ! いや、大丈夫そうだっ!」


「こっちも、動くよっ! 」


 ようやく、赤いバジャイに飛び乗ってから、賢一は鍵の事を考えだした。


 そして、モイラも、青いバジャイのエンジンをかけると、直ぐに発進させる。



「先に行くよっ! 賢一、はやくしなっ!」


「撃ちまくるぜっ!!」


「はあ、何とか間に合ったわ…………」


「分かってる、こっちも直ぐに動かすっ!」


「足留めは、任せてくれ」


「もう、そこまで来てますよっ!」


 モイラの赤いバジャイは、直ぐに、青いバジャイを追い越していき、道路を爆走する。


 ダニエルは、後ろの座席左側から、トカレフを撃ちまくり、ゾンビ達を牽制する。



 エリーゼは、座席右側の幌を掴みながら、向かってくる群れを眺める。


 賢一も、エンジンを何とか始動させると、すぐさま敵から距離を取るべく、発進させる。



 ジャンとメイスー達は、座席の左右から、リボルバーを敵に向けながら叫ぶ。



「ふぅ~~助かった? 後は、モイラ達に続いて、病院に向かうっ! これは、ポンコツに見えるが、意外と速度が出るな」


「何とか成ったなっ! 近くに来るのは任せてくれっ! ん、アレは運転手の死体か? どうやら、彼等は間に合わなかったようだな」


「来ないで下さいっ! 撃ちますよっ! 近づかないでっ!」


 青いバジャイを運転している、賢一は、スピードを一気に上げて、ゾンビ達から離れていく。


 ジャンは、狙いを定めて、一番形拳銃から、強力なマグナム弾を放つ。



 二十六年式拳銃を構えると、メイスーは群れに対して、弾丸を何発も撃った。


 こうして、先頭を走ったり、跳び跳ねたりするゾンビ集団は、射殺されていく。



「死体だと? 発進させるのに、夢中で気がつかなかった…………」


「ガアガアガア、ガアガアッ!?」


「ギャイーーーーーー!!」


 賢一が運転する、バジャイの猛烈なスピードには、流石にゾンビ達も追いつけない。


 連中は、徐々に距離を開けられていき、ついには彼等を取り逃がしてしまった。



「はぁぁ? ここまで、来れば? 連中も追っては来ないだろうな?」


「だねっ! そろそろ、止めようかっ? 燃料も少ないし?」


 賢一が、バジャイを右側の路肩に停車させると、モイラも左側に車両を寄せる。



「病院までは、かなり近い? ここからは、再び歩いて行くぞ? みんな、問題ないよな?」


 バジャイから降りて、賢一は腰から、特殊警棒を取り出すと、真顔で仲間たちを見る。



「ビル街だね? ここは上からの奇襲に気をつけて、行かないとっ!」


「ジャンプする奴が、降ってくる可能性があるからな、マグナムに弾丸を込めないと」


 市内・中央区域に到達して、モイラは幾度となく、経験した市街戦を思いだす。


 渋い顔をしながら、ジャンは一番形拳銃のシリンダーをずらして、マグナム弾を装填する。



「ああ、気をつけていこう」


 そう言って、賢一とモイラ達は、曲がり角や上方、地下室の窓などに気を配りながら歩く。


 だが、ゾンビ達やギャング達による奇襲攻撃に対する警戒は、杞憂に終わった。



「見えてきた? 大きな建物だ」


 七階建ての病院は、立派な駐車場を持ち、左右に小さな建物がある。



「ふぅ…………後は、あの曲がり角を曲がるだけだ」


「そうしたら、病院の正面ゲートだね」


「ここから、軍の車両が見えるぜ」


「きっと、警備のために駐留しているのよ」


 賢一とモイラ達は、レストランから右側を眺めて、病院が無事かどうかを確かめる。


 ダニエルとエリーゼ達も、緑色に塗装された数台の軍用車両を、険しい目付きで見つめる。



「ハンヴィー&ケネディ・ジープだな? 各二台ずつ停車している」


「さらに、後ろにはトラックから乗用車まで、並べて、第二のバリケードにしているわ」


 賢一は、青緑のポールフェンスにまで、歩いていき、モイラも後を追う。



「そこの連中、止まれっ! 止まらないと、撃つぞっ!」


「警告を無視した場合、即座に射殺するっ!!」


「撃つなっ! 俺たちは、ギャングじゃないっ!」


「俺は、プロケトの消防士だっ! 同じ公務員だろうがっ!」


 突如、横並びになっている、ハンヴィーとケネディ・ジープから怒声が響く。


 それは、白人兵士と黒人兵士たちが、こちらを見ながら、M16A2を向けてきたからだ。



 賢一は、彼等の前で、両手を上げながら、自身らが敵ではないと説得を試みた。


 同じく、ジャンは陸軍兵士たちを睨みつけ、なぜ銃を向けるのかと、怒鳴り返す。



「見慣れない迷彩服を着ている以上、反政府ゲリラの可能性があるっ!」


 隊長らしき、野戦帽を被る東南アジア系の兵士が、こちらに向かって叫ぶ。



「待って、私は合衆国海兵隊だよっ! この迷彩が見えないのかいっ!」


「白人女性の観光客と、か弱いアジア人女性も居るのよっ? それでも、撃つの?」


 モイラは、自身の所属を言って、エリーゼは自身が民間人である事を強調する。



「隊長さんよっ! 俺たちは、刑務所の部隊から偵察部隊を探すように言われてたんだっ!」


「そんなの信じられっ? は…………」


「見つけたっ! 撃ちまくれっ!」


「奴等を、殺せっ!! 薬を奪うんだっ!!」


 さらに、説得を続けようと、賢一は自分たちが、病院にきた理由を話してみた。


 しかし、隊長は信じていないらしく、敵意を向けたまま警戒するが、彼は何かに気づいた。



 それは、ピックアップを中心とするギャング部隊が、右側から道路を走ってくる音だ。


 白人ギャングは、荷台からM1カービンを撃ちまくり、黒人ギャングは、マカロフを乱射する。



 こうして、暴走族のように現れた連中により、病院は、たちまち戦場と化した。

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