目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第19話  休憩を挟んで


 賢一たちは、生存者たちの一団を助けて、ギャング達を、見事に殲滅した。



「俺たちの助けは要らないのか?」


「いや、大丈夫だっ! 護衛は必要ない…………刑務所に行こう? 少なくとも、ここよりは安全だろう」


「そうでしょ? だったら、直ぐに支度しましょう」


 生存者たちを心配して、賢一が声をかけると、黒人生存者は、自信満々に答えた。


 そして、アラブ女性の生存者も、彼とともに、軽トラへと向かっていく。



「おい? 行くぞ、軽トラの荷台に乗れっ!」


「刑務所に向かうわよっ!」


「分かったぜ、今そっちに向かうからな」


「もう、安心していいのね…………」


 黒人生存者が、軽トラのハンドルを握りながら、窓ガラスを下げて、スーパーに叫ぶ。


 助手席から、アラブ女性の生存者も、仲間たちを呼んで、シートベルトを締める。



 白人生存者は、M1ガーランドを抱えながら、店内から、ガラス戸を開いて出てきた。


 アジア人女性も、M1カービンを持ちながら、急いで、荷台に飛び乗った。



「じゃあな、そっちも達者でな」


「ああ、無事に行けよ」


 それだけ言うと、黒人生存者が運転する軽トラは、刑務所を目指して走っていった。


 彼に対して、賢一も短く答えると、遠ざかる車両の後ろ姿を見送った。



「さて、お前ら? 何をしているんだ? 戦利品を漁っているのか」


「その通りよ? 弾が無いと戦闘に成らないし、悪人から押収するんだから、泥棒じゃないし」


「トカレフは壊れているし? マガジンも空だぜ? コイツ、予備弾すら持ってないのか? いや、今ので射ち尽くしたか?」


「財布、僅かなドル紙幣、安物のアクセサリー? それに、煙草?」


 後ろに振り向いて、賢一は、ピックアップの荷台に上がっている、モイラ達を眺めた。


 ダニエルは、自分と同じトカレフを持っていた、東南アジア系ギャングの死体を調べる。



 エリーゼは、座席のダッシュボードを漁り、様々な品物を手当たり次第に、手で掴んでいく。


 ジャンとメイスー達も、何かしら使える物はないかと、武器やバッグを拾う。



「まあ、そうだわな? 使えそうな物は、敵から取らないとな? で、いい物は見つかったか…………とと、今さら手が震えてきた…………」


「コイツら、第二次世界大戦の武器で、武装しているわね? フィリピンと同じく、プロケトも軍の放出品が出回っているのね」


 賢一は、仲間たちが手に入れた道具を気にするが、今になって、戦いの恐怖感が脳裏に現れた。


 モイラは、ピックアップの荷台に載せてあるプラスチック製ケースを開けてみた。



「メイスー、君も護身用に持っておくんだっ! いつ、敵に襲われるか、それは分からないからな? 自分の身は自分で守るんだ」


「は、はい? これは…………何の拳銃でしょうか?」


 銀色に光る、マグナム・リボルバーと、通常のリボルバーを、ジャンは手にする。


 そして、片方の小さい拳銃を、女性であるメイスーでも扱えるだろうと思い、彼女に渡した。



「そうだな? メイスーにも護身用の武器は必要だからな? それは、二十六年式拳銃と言って、日本軍の拳銃だ? ジャンのも…………」


「S&Wの44マグナムだよ? おっ! マチェットと鞘を発見、これは私が貰うわ」


「二十六年式?」


 賢一が、マグナムの名前を言おうとすると、モイラが先に答えてしまった。



「まあ、正確には、一番形拳銃な? S&W社から日本軍が輸入してたからな? 漢字が書いてあるだろう」


「本当だ? まあ、体格のいい俺なら、これを扱う事はできる」


「あと、丸ノコが? 手裏剣に捕まえますね?」


「リボルバーとマグナムの弾薬も幾つかあるぜ? これで、撃ち合いは大丈夫だな」


 賢一が、名前を教える間、ジャンは一番形拳銃を両手で構えてみせる。


 メイスーとダニエル達も、それぞれ、ピックアップの荷台にある工具箱から、物品を取り出す。



「そいじゃ、休んだら、次の病院まで行こう? 済まないが、手の震えが止まらないんだ?」


「なんだい? PTSDかい? まあ、私達も休まないと、不味いからね…………戦い過ぎたし? スーパーの中に退避しますか」


 具合の悪そうな顔をしながら、賢一は荷台に背中を預けると、モイラが心配する。



「PTSD? って、聞いた事が有りますけど?」


「心的外傷後ストレス障害、よく兵隊がなる病気よ」


「強いショックを受けると、トラウマになり、忘れられなくなるんだ」


「ああ、俺も似たような事があったから分かるぜ、辛い経験すると、誰でもなるのさっ!」


 メイスーが頭に、?マークを浮かべていると、エリーゼは、彼女の疑問に答える。


 真剣な表情で、ジャンは呟くと、悲しそうな顔を浮かべながら、ダニエルは言った。



 こうして、一行はスーパーの店内に入ると、ドアを閉めながら、奥を目指した。


 もちろん、ギャング&ゾンビ達に、姿を見られないように身を隠すためだ。



「何か貰っておきましょう? 喉が乾いたわ」


「いいねぇ? 私も、コーラが飲みたしっ!」


「代金は、ど~~すんだよ?」



 疲れた表情で、エリーゼが店の奥にある透明な冷蔵庫に向かっていく。


 モイラは、カウンターに、マチェットが入った鞘を置くと、店主が座るであろう椅子に腰掛けた。



 店の人間が居なくても、金を支払わないと、ギャング達と同じ悪党になってしまう。


 そう考えて、ダニエルは呟きながら両手を天に上げて、背筋を伸ばす。



「さっきのギャング達の財布があるわ、これで払えば、略奪じゃないわ」


「それなら、遠慮なく物資を頂こうか」


 そう言って、エリーゼは、財布から紙幣を取り出して、カウンターに代金を置いた。


 ダニエルも、それに納得しながら、食料品を探して、商品棚の間を歩き始めた。



「ふぅ? みんな、元気があるな…………しかし、やはり後から来るもんだな? 今思い出したら、ゾンビも銃撃も怖いもんだぜ」


「今に慣れるさ? 賢一、アンタは日本男児だろう? 艦隊と合流したら、軍医に見てもらうまで、我慢するしかないね…………」


 かなり実戦に近い、厳しい軍事訓練は、水陸機動団で何度も行った。


 だが、実戦を体験して、賢一は自身が対峙した、ゾンビ&ギャング達を思い出すと恐怖が浮かぶ。



 対する、モイラは何度も、東南アジア地域で、対テロ作戦に従事している。


 それ故、彼女は町にたむろするギャング達を殺すことは、テロリストを倒すのよりも楽だった。



「三分の一だけな? 俺は、爺ちゃんが台湾人だからな? 中国人と先住民の血が入ってるし」


「それは、前にも言ってたね? 詳しくは知らないけど? なら、三民族分の誇りを持ちなっとっ! そうだ、お手洗いに行ってくるね」


 賢一の言葉を聞いて、モイラは手を振りながら適当に答えつつ、何処かへと消えていった。



「三民族分ね? 大和魂だけじゃなく、中華民族や台湾人としてか? カンフー魂とか? そう言う奴だろうか」


「あの…………賢一さん、私も同じ日系で、中華民族なんですけど」


 賢一が、カウンターに背中を預けながら、座っていると、メイスーが右から歩いてきた。



「なんだ、メイスー? 君も、東南アジア? …………の血も入ってたな? なら俺たちは、似た者同士だな」


「えへへ…………似た者同士…………ですねっ!!」


 賢一は取り敢えず、隣に座るメイスーに対して、何か話してみようとした。


 すると、メイスーは顔を紅くしながら微笑んで、リンゴの缶ジュースを渡してきた。



「だな? ところで、メイスーは何で、この島に居るんだ?」


「親戚の店で、料理のバイトをしながら暮らしてたんです…………前に働いていた会社は、仕事がキツ過ぎて」


 何気なしに、賢一が疑問に思った事を、聞いてみると、メイスーは俯いてしまった。



「なんか悪いな? 思い出したくないなら、言わなくていい」


「い、いえっ! そんなっ! 私の事なんて、大した問題じゃないですっ!」


 賢一の優しい言葉を聞いて、メイスーは顔と両手を左右に振り回す。



「そこの二人? いちゃついてる暇が、あったら移動する準備をして」


「休憩ばかりしてられないっ! 次なる目的地の病院に行くぞっ!」


 エリーゼの声が聞こえると、ジャンも一番形拳銃を構えながら、外に出ていった。



「メイスー、外に行こう? 俺たちしか、保菌者は居ないんだからな」


「は、はいっ! 賢一さん、一緒に行きましょうっ!!」


 こうして、賢一とメイスー達も、店から出ていき、太陽の元へと向かった。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?