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第15話 次なる道へ


 ギャング達を倒し終わった、賢一は建物の中へと素早く飛び込み、急いで床に伏せる。



「やったね? みんなも来てるよ」


「ゾンビが、路地にまで入って来たからな、たくっ! 死体に囲まれるなんて、ここは地獄かってのっ!」


「し~~? 走る奴らが来るわよ」


「ふぇぇ…………怖いです」


 モイラは、窓の下に身を寄せて、コルト45を片手に、外を歩くゾンビ達を警戒する。


 左側から、フレッシャー達の様子を伺う、ダニエルは、文句を言いまくる。



 エリーゼは、リボルバーを握り締めながら、床に伏せたまま、じっと動かない。


 対するメイスーは、ガタガタと震えながら、頭を両手で押さえながら体育座りをしている。



「アアアアーー」


「グルゥゥ?」


 ビキニ姿の女性フレッシャーが、屋根から飛び降りてきて、道路で首を左右に振るう。


 ジャンプするゾンビ達は、屋根や建物屋上から、獲物は居ないかと、周囲を探る。



「グルゥゥ~~~~!?」


「ギュアアーーーー?」


 ゾンビ達は、暫くの間、自分たちを射撃していた人間たちを探していた。


 しかし、音が聞こえなくなってから、獲物が逃げたと思ったのか、続々と引き上げていく。



「奴ら、遂に諦めたのか? やはり、銃声は不味いか?」


「なら、救助を再開しよ…………しまった」


「グルエエ~~」


 賢一は、床に伏せていたが、立ち上がり、ノロノロと歩くゾンビ達を眺めた。


 それに続いて、ジャンも奥で身を潜めていたが、彼も病院に向かうため、動き出そうとする。



 だが、そこに一匹だけ、ジャンプするゾンビが窓から入り込んできた。


 奴は、六人を見ると吠え声を上げるべく、思いっきり、口を大きく開いた。



「グルエ?」


「させないわよっ! さあ、おねんねの時間よ」


 モイラが背後から、ジャンプするゾンビの喉を、多用途銃剣で掻き切り、叫ばないようにする。


 それと同時に、後頭部に刃を深々と差し込み、死体が倒れないように掴む。



「そっと寝かせよう、まだまだ外は敵が多いからな…………」


「賢一、頼むわよ」


 死体を抱えながら、賢一は床に下ろすと、モイラは礼を言いながら窓から、路上を睨んだ。


 普通のゾンビ達は、匂いを嗅いだりしながら歩き回り、まだ人間を探しているようだ。



「ふぅ~~? さっき、外のチンピラの死体から拳銃を、拾ったけど、どうやら使う必要はなさそうね」


「38スペシャル弾のリボルバーね? それも、S&Wのスカンジウムだわ」


 エリーゼは、銃身が短く、黒い小型リボルバーを、右手に握り締めながら呟く。


 モイラは、それの名前を言いながら、床に頃がっている死体を調べる。



「さっき、私が拳銃ごと撃ち殺したから、コイツのは壊れているわね? マガジンだけ、貰っておきましょう…………どうやら、トカレフのようだわ」


「コイツ等は、ギャングだな? なら、俺に寄越してくれっ!」


「こっちの奴は、撃たれた時に、外に落としたのか? 銃がない? しかし、マガジンの弾は45口径のようだぞ、モイラ、受け取ってくれ」


 モイラは、白人ギャングの死体から、トカレフ用弾倉を抜き取り、ダニエルに渡す。


 賢一は、黒人ギャングを調べて、三個ものコルト45弾倉を見つけて、彼女に差し出した。



「それより、病院に急ごうっ! こうしている間にも、俺たちの救助を待っている人々が居るからなっ!」


「ああ、そうだな? 早く行こうか?」


「コイツ、何発か予備弾を持っているわね」


「道路は、敵の数が多いから、路地から回り道するわよっ! みんな、着いてきて」


 ジャンは、皆より先に、裏口の草原へと歩いていき、賢一は彼を追う。


 死体のポケットから、エリーゼは予備弾丸を幾らか見つけると、モイラは仲間たちを先導する。



 彼等は、ゾンビ達が少ない路地を右に向かっていき、進路を邪魔する者は背後から暗殺する。


 射撃音で、集まった動く死体たちは、ステルスキルにより、後頭部や額を攻撃されて倒れる。



 こうして、彼等は路上に出ると、なるべく敵とは、距離を取りながら病院に向かった。


 連中は、視覚や聴覚が鈍いのか、近づかなければ、こちらに気がつかないからだ。



「邪魔な連中は、タガネを突き刺せば」


「オラッ! 頭を叩きつければっ!」


「ここは数が少ないが…………バリケードがある?」


「誰かが、設置したんだね? これなら、通常のゾンビだけでも足留めできるよ」


 ジャンは、体を揺らすゾンビに近づき、タガネを脳天に勢いよく差し込んだ。


 敵を両手で掴むと、ダニエルは直ぐに、頭を固いコンクリートに叩きつけた。



 そうしている間に、賢一は遠くに停車させれた大型バスと、左右の合間を塞ぐ木箱を見つけた。


 モイラは、アイデアに感心しながら、バリケードに近づいていき、屈んでバスの下を眺めた。



「向こう側にも、木箱があるようだわ? これじゃ、下から潜るのは無理ね」


「ふぅぅ? それじゃ…………何か利用できる物は、無いだろうか? おっ! アレが使えるな」


 カーキ色の木箱が見えると、モイラは直ぐに体を起こして、両手を左右に振るう。


 賢一は、右側に目を向けて、小さな雑貨屋に青いドラム缶が、幾つか有るのを発見した。



「男連中は手伝ってくれ? アレを使って、上に向かうぞっ!」


「三個くらい並べれば、足場としては充分だな? これで、救助に行ける」


「ああ、少し面倒くさそうだが、やらねぇとなっ!」


 賢一が、バスの右側にある木箱へと、ドラム缶を運ぶと、ジャンとダニエル達も動く。



「よしっ! これで、三段重のバリケードも越えられる」


「みんな、向こうに行くわよっ!」


 賢一が、ドラム缶を束ねた台に飛び上がり、今度は木箱に登ると、モイラも同じように動く。



「敵影は無し…………」


「手を貸すわ、早く上がって」


「済まねえな、ふっ!」


 モイラは、木箱の上で、コルト45を周囲に向けながら、ゾンビやギャング達を探す。


 エリーゼも、ダニエルが飛んだ後、手を掴み、バリケード上に引き上げる。



「メイスー、手を貸すぞっ!」


「さあ、捕まるんだ」


「よっしょ、よ…………」


 賢一とジャン達も、最後になってしまった、メイスーを引き上げた。


 すると、何処からか、誰かが、ジャンプを繰り返すような音が聞こえた。



「グエエエエッ!」


「キュアアーーーー」


「不味い、飛び回る連中だっ! 銃は使えないぞ、音が他の奴らを呼ぶからな、ここは警棒を使うしかない」


「奴らは、ジャンプ力が強いっ! 銃がダメなら、どうするんだよっ? って、やはり殴るしかないか」


「当然…………殴るしか無いわよ、準備して」


「ひええっ! そんな」


 もちろん、叫びながら向かってきたのは、ジャンプするゾンビ達である。


 何人かの群れは、屋根から道路に、トラックから屋上にと、忙しなく次々と跳躍してくる。



 特殊警棒を片手に、賢一は真っ向から敵と対峙するべく、構えを取る。


 ダニエルは、ファンティングポーズで敵を迎え打つため、鋭い目付きで身構える。



 サップを両手で握り締めながら、エリーゼは冷たい視線を、敵に向ける。


 メイスーは、連中を怖がりながらも、中華包丁を振るうべく、背中を丸めた。



「グアアアアアア」


「ギャア~~~~」


「くるよっ! みんな、気をつけてっ! うわあっ!?」


「ぎゃあっ! このっ! 負けてたまるかっ! 救助を待つ人が居るんだっ!」


「モイラ、今助けるっ! 退け、この野郎っ!」


「グルアッ!!」


「離れなさい、邪魔よ」


 モイラを、バリケード上から突き落として、ジャンプするゾンビは、彼女を殴りまくる。


 ジャンも、いきなり右腕を噛まれてしまうが、相手の顔面を左手ではたく。



 自らに向かってきた敵が、飛び掛かる前に、賢一は特殊警棒で叩きまくる。


 サップを何度も振るって、エリーゼは横から彼を助けようとする。



 こうして、彼等は厄介な動く死者たちを前にして、窮地に陥ってしまった。

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