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第13話 街に向かって、道路を歩け


 賢一とモイラ達は、監視部屋から市街地を眺めると、ここが丘の上にあると分かった。


 赤みを含むオレンジ、深い青、銀色などの屋根が、遠くまで続いている。



「まず、道路を歩いていくよ? ハンヴィーを使っても、いいけど、走行音がゾンビを寄せ付けちゃうからね」


「あと、メモを見ると、複数の建物に寄らなきゃ成らない? 面倒だが、調べてみる価値はあるな」


「軍の歩兵部隊は~~? ガソリンスタンド、小さな町病院、町役場、缶詰め工場、漁協の建物に行ったようだな? ご苦労だぜ、全く」


「ビーチまでは、順番に通れそうだけど、そこは行くべきかしら? 危険が潜んでいる可能性が高いわ」


 モイラは、監視所を降りると、左側へと曲がっていく、敷地内を眺めながら歩きだした。


 賢一も、メモ用紙に書かれた各地の建物と、名前を見ながら呟いた。



 ズカズカと、ダニエルが道路を早歩きで、入口にあるハンヴィーに向かっていく。


 横から、紙を一回だけ見ると、エリーゼは呟きながら、彼を追って進んでいく。



「それでも、行くべきだっ! ゾンビに噛まれても、死なない俺達しか動けないんだからな」


「私も、叔父の経営する中華レストランが気に成りますし…………」


 熱血漢なのか、ジャンは直ぐに人々を救いに行きたがり、メイスー早く親戚に会いたいと急かす。



「まあ、まずは町病院に行こう? 下に行くぞ」


「出発よ、みんな着いてきて」


 賢一とモイラ達に続いて、仲間たちは監視室から階段を降りて、一階を目指した。



「出発するんだってな? ジョンソン看守長から聞いてるぞ」


「車両を移動させろ」


「分かってる」


 M4カービンを持った、白人看守が、ドアから出た六人を出迎えると、ハンヴィーから離れる。


 アジア系の看守は、黒人兵士に頼むと、彼は銃座から車内に入り、エンジンをかけた。



 そうして、車が移動すると、入口にあった鉄柵の門は開いたままに成っていた。


 ここを潜り抜けると、刑務所の外に出たが、左側には誰も居ない検問所があった。



 また、車両の通行を止めるバーは、上を向いたままにされており、不気味さを感じさせる。



「草むらに死体が見えるわね? 兵士や看守が排除したんだわっ! しかし、カメラを覗けば、遠くに人影が見える」


「ソイツが人間か、それともゾンビか? 或いは略奪者かは分からないんだから、不用意に近づけないなっ!」


 エリーゼは、両手で高性能カメラを保持し、倍率を上げた、レンズ越しに歩く何者かたちを見る。


 それを聞きながら、ダニエルは遠くを歩く人影を、険しい表情で睨む。



 いく宛もなく、彷徨う生存者か、それとも、物資を狙う暴徒か。


 はたまた、獲物を求めて徘徊するゾンビなのかは、彼と同じく仲間たちには分からない。



「グルアア~~~~!!」


「ガアガア、ガア、ガアア」


「出たね、お化けが」


「みんな、隠れよう」


 検問所から離れて、一向は丘を下りてから左側に曲がる道路のカーブを進んでいた。


 すると、草むらから素早く走るゾンビ達が現れて、彼等の行く手を阻んだ。



 モイラは、直ぐに今来たばかりの道に戻り、カーブで雑草に伏せて身を隠し、賢一も同じ事をする。


 何体かの連中は、獲物を探して、辺りに虚ろな目を向けたり、騒ぎながら歩き回る。



 しかし、食べられそうな物がないと思ったのか、群れは何処かへと、走りながら移動していった。



「助かったな? 連中は、動きが素早い走るタイプのゾンビだから厄介だ」


「でも、まだまだ先には散らばっているわよ」


「アイツら、何とか成らねぇのか? めっちゃ、邪魔だぜっ!」


「我々の邪魔をしやがって、消化斧さえ有れば、簡単に頭から真っ二つに出来るんだが」


 賢一は、走り回るゾンビ達が消え去ると、肩の力を抜きながら、愚痴を呟きつつ歩きだす。


 モイラも、前方を睨みながら多用途銃剣を逆手に握りながら進みだす。



 文句を垂れながらも、ダニエルは二人の後に続いて、周りを警戒しながら移動する。


 ジャンは、右拳に力を入れながら、眉間にシワを寄せながら着いていく。



「どうするのさ? カメラで監視するけど、はやく答えを出してね」


「うう…………いつまでも、ゆっくりと歩いてられないけど、これじゃあ?」


「少し待ってろ、無線で、ガンに連絡してみる」


 前方の街へと続く道路に、カメラを向けて、エリーゼは、走るゾンビや歩くゾンビ達を眺める。


 メイスー怖がっているので、賢一は、無線機を取り出して、刑務所に連絡してみた。



『甘っ! 街に行くまで、走るタイプが邪魔していて、これじゃあ道路を抜けられないっ? 連中に見つかったら、どうすれば良い』


『…………それは、フレッシャーだ? 私が命名したが、見つかったら叫び声に反応して、仲間を集めるだろう』


 賢一の言葉を聞いて、甘はゾンビに関する新たな情報を彼に提供する。



『ただ、心配するな? 遺体安置所で、死体を調べたが、感染してから時間が立っていないからか? 耐性があるのか? それは分からないんが…………そのため、通常のゾンビよりは弱い』


 甘は、さらに調査した、フレッシャーに関する説明を、ゆっくりと語る。



『じゃあ、どうすれば倒せるんだ? 俺達は、ザック・スナイダー版の走るゾンビに喰われたくないぞ』


『落ち着くんだ、君達は一度、連中と刑務所で戦っているだろう? スピードと連続攻撃は、脅威であるが? その分、通常のゾンビより防御力と体力が低い』


 映画を思い出して、賢一は走るゾンビが、スーパーマーケットに群がる姿を思い出す。


 興奮する彼の声を聞いて、甘は冷静に語りかけ、敵が持つ弱点を伝える。



『死体を調べたから分かるが? 少数、または一匹ならば、むしろ打撃や斬撃で簡単に倒せる』


『分かった、なら倒しながら進んでいくぞ、また何かあったら、無線で連絡する…………』


 甘は、研究者としての見解を述べると、賢一は納得しながら、顔を無線機から離す。



『分かった、こちらも研究を続ける…………』


「だそうだ、ステルスキルしながら行くか? 見つかり次第、戦闘に突入だな」


「なら、行くしか無いわ、着いてきて」


 甘が通話を終わらせると、賢一は渋々前進し始め、みんなの先を歩く。


 彼の後ろを歩きながら、仲間たちを率いて、モイラも移動を開始する。



「幾つか、建物に近づいてきたな? ガソリンスタンドは、もう少しだ」


「また、喉が渇いてきたぜ? 本当は、今頃は南国のビーチで、ビールを大ジョッキで飲んでいるはずなんだが」


「アルコールに、水分は殆ど無いわよ」


「あの黄色い屋根の建物が、スタンドですね? 食べ物もあるかも知れないです」


 広い道路の先には、周辺を、小さな家屋に囲まれている十字路があった。


 左側には、ガソリンスタンドの黄色い屋根があり、給油装置も見えてきた。



 賢一は、南国特有の暑さから、顔から汗を滴し、ダニエルも呑気に飲料を求める。


 舌を出す彼を、エリーゼは冷淡な声と鋭い目で見つめて、メイスーは元気な声をだす。



「気をつけて、鉄条網が壊れて…………いるわ? いや、これは敷いている途中で、戦闘になってしまったのね」


「ゾンビか? なら、気をつけて調べないとな? 死体が起き上がると、厄介だからな」


「待って、銃創が見えるわ? それに、防弾ベストやアサルトライフルが無いわ?」


「追い剥ぎ、いや、ギャングや略奪者に装備を取られたのか? 済まない、救えなくて」


 鉄条網や土嚢などが、中途半端なまま放置されており、それらを、モイラは注意深く観察する。


 賢一も、頃がっている死体を見ながら、慎重に近づいていき、いざとなった場合に備える。



 カメラのレンズ越しに、エリーゼは兵士たちの死体を眺めると、弾痕を見つけた。


 ジャンは、すごく悔しそうな顔をして、両拳をギュッと握り、うつむきながら呟く。



「ケネディジープがあるわ、調べてみる」


「動くと良いんだがな?」


 駐車場の左端に、二台停車しているケネディジープを見つけて、モイラは近づいていく。


 賢一は、彼女の背後に着いていき、背中にゾンビ達が不意討ちを仕掛けないように警戒した。

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