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第10話 刑務所の敷地内に、ゾンビを入れるなっ!

 賢一たちは、入口でどう見ても南米のカルテルにしか見えない、怪しい二人組と出会った。



「さあ、退いてくれっ! 俺たちは安全な場所に行きたいんだ」


「中に入ろうだと? ここの中も、ゾンビだらけだっ! 外に脱出した方がいい」


 ミュレットの言葉を聞いて、賢一は直ぐに彼を止めようと、前に立ちはだかる。



「今、ここに立て籠ろうとしても、無駄だ」


「そうは言っても、正門や装甲車からは続々と、ゾンビが出てくるぜっ!」


「はあ? 救出された民間人の中に、感染者が混ざってたのよ? 中の方が安全だわ」


「いや、内部も混乱しているわ、兵士と看守たちが、囚人とゾンビ達を相手しているのよ」


 賢一とミュレット達が、話していると、刑務所の建物よりも、向こうから異様な声が響いてきた。


 ダフネは、敷地内にある、コマンドウ装甲車やハンヴィー軽装甲車に、M16A2を向ける。



 モイラは、さっき戦っていた廊下に死体が積み重なり合っているのを目にする。


 刑務所内も、敷地内のどちらも、安全ではなく、ゾンビ達が徘徊している状況は変わらない。



「グエエーー!? グルウーー!!」


「ギュアアアアアアァァァァ」


「来たぞ、ドアを締めろっ! うわわ、コイツは不味いぜっ!」


「ダニエル、押さえててっ! このハンドリフトでっ!」


 囚人や看守のゾンビ達が、廊下を走ってくると、ダニエルは急いで、両ドアを開けた。


 エリーゼは、近くに放置されていた、段ボール箱が載せてある、黄色いハンドリフトを押し始める。



「手伝ってちょうだいっ! 間に合わないわっ!」


「分かってるっ! 力のある俺が押してやるっ!」


「頼む、早くしてくれ~~~~!!」


「ギュアアアアーーーー!!」


「グルルルルウウ~~~~!!」


「前からくるわっ! 走る奴だわ」


「ジャンプする奴も、存在するわよっ?」


 右側から、ハンドリフトを押すエリーゼを手伝うため、体格のいいジャンが直ぐに近寄った。


 ダニエルは、バンバンと叩かれる両ドアを何とか押さえながら、焦った顔で叫ぶ。



 そんな中、右側に並ぶコマンドウ装甲車の側面ドアや背後から、様々なゾンビ達が走ってくる。


 さらに、正面からもゾンビの群れが続々と現れて、こちらを目指して、一直線に向かってきた。



 モイラは、多用途銃剣の切っ先を、敵に向けると、ダフネはM16A2を撃ちまくる。



「不味いです、このままじゃ…………」


「立ち向かうしかないっ! 行くぞっ!」


「やれやれ、やっと日陰に隠れられると思ったのになぁ」


 メイスーが怯えながら後ずさりすると、賢一は全員の前に立ち、ゾンビを迎え打とうとする。


 面倒そうな表情で、ミュレットはCARー15を構え、走る敵に対して、単発射撃を浴びせていく。



「ギャア~~~~」


「ギィィーーーー」


 看守や兵士、民間人や囚人のゾンビ達が走ったり、ジャンプしながら近づいてくる。


 何体かは、ミュレットとダフネ達による単発射撃&3連バースト射撃を浴びても、奴等は倒れない。



「ギュアア」


「グルル」


「ヤバいわね? このままじゃあ、敵に殺られてしまうわっ! 包囲されるわ」


「食い殺されるなんて、ゴメンだぜっ! 俺は餌じゃねえんだよっ!?」


「来たなっ! 鍛えた体で、相手をしてやるっ! 民間人の救出の邪魔はさせんっ!」


「連中、止まる気配は無いわね? 銃だけじゃ、死なないようね、参ったわ…………」


 右側にあるハンヴィーからは、兵士や民間人のゾンビ達が現れて、隙間から走ってきた。


 左側にある、コマンドウ装甲車の上には、囚人ゾンビや看守ゾンビ達が、屋根に飛び乗る。



 モイラは、走るゾンビのあごに、回し蹴り叩き込むと、次は多用途銃剣を振るう。


 小走りしてきた、女性や看守たちのゾンビを、ダニエルは両手に嵌めた、髑髏指輪で殴りまくる。



 ジャンは、ハンヴィーの上から飛びかかってきた、看守ゾンビが被る帽子をタガネで叩く。


 エリーゼは、サップで小走りするゾンビの頭を狙い、打撃を与えて体勢を崩させる。



「いや、近寄ったら斬るわよっ!」


「メイスー、下がれっ! あまり前に出るなっ!」


 メイスーは、中華包丁を、両手で不安そうな顔をしながら握りしめて、振り回そうとする。


 賢一も、特殊警棒を片手で、敵に向けると、走ってくる連中を睨む。



 すると、看守や兵士たちが、左側の建物二階から自動小銃を撃ってきた。


 M4カービン、M16A2からなる射撃部隊による銃撃は、ゾンビ達を次々と倒していく。



 ハンヴィーの上で、四つ足になっていた、ジャンプする看守ゾンビは頭を撃たれる。


 小走りしてくる兵士のゾンビ達は、防弾ベストやヘルメットを、弾丸が貫通して、力なく崩れる。



「頼むっ! そこの門から入ってくる、ゾンビ達を止めてくれっ!」


「我々が支援するっ! ハンヴィーを使えっ! バリケードにするんだっ!」


「分かったわっ! 何とか、連中を引き受けるわっ!」


「俺たちが、注意を惹き付けるっ! ミュレット、ダフネ、ハンヴィーを運転してくれっ!」


 看守と兵士たちは、右側の建物から射撃を続け、八人に入口を塞ぐように、大声で頼む。


 突然、門の下からから、朽ち果てた姿のゾンビ達が大量に現れた。



 連中の目は、虚ろに濁り、口からは汚ならしい唾液が垂れて、地面に落ちている。



 モイラは、しゃがみながら回転蹴りを放ち、走るゾンビを倒した後、その首を多用途銃剣で斬る。


 ゾンビに、特殊警棒で殴りかかりながら、賢一は、連続で格闘技を放ち、倒しまくる。



「お前ら、大丈夫なのか? ぐっ! このっ!」


「グア、グア、グアッ! グエエ~~!?」


「死にな…………」


「私たちは、抗体があるんだっ! だから、多少は噛まれても、平気なんだよっ!」


「ああ、だから早く動かしてくれっ!」


 CARー15で、走るゾンビを押さえる、ミュレットを左側から、ダフネが助けた。


 彼女の正確な射撃で、側頭部に一発弾丸を叩き困れた奴は、力無く倒れる。



 モイラは、コマンドウ装甲車の下から這い出してきた、飛びかかってくるゾンビを殴る。


 賢一は、走りながら、ゾンビ達を自らに惹き付け、邪魔する女性ゾンビを蹴っ飛ばす。



「分かったぜっ! ダフネ、援護してくれよっ!」


「分かったわ」


「ギャアア~~!?」


「ウギャアッ!!」


 近くに並ぶ、ハンヴィーに乗り込むと、ミュレットは運転席に座り、ダフネは銃座に上がる。


 直後、M60車載機関銃から機銃掃射が始まり、車両自体も、エンジン音を響かせながら走りだす。



 それに、正面から突撃してくるゾンビ達は、ね飛ばされたり、引き殺されたりする。


 真っ向から攻撃しても、死ぬと分からない連中は、何体も絶え間なく走ってくる。



 中には、機銃弾に貫かれて、倒れてゆく者もおり、これが映画のような派手な殺戮に見える。



「これで、塞いだぞっ! 後は内部の連中を倒せば、終わりだっ!」


「外の連中は、私が殺るよ、中は任せた」


 ハンヴィーのドアから出てくると、ミュレットはドアを閉めて、周りから迫る敵を撃ちまくる。


 ダフネは、M60車載機関銃から火を吹かせまくり、近づいてくるゾンビ達を、射殺しまくった。



「後は、中身の連中だけだなっ! みんな、行くぞっ! オラッ! オラッ!」


「ガギャア、ギャッ!! ギャアッ!!」


「残りは、動きの遅い奴等しか残ってないわっ! やるのよっ!」


「グガアッ!?」


 並んでいる、コマンドウ装甲車の隙間から現れた兵士ゾンビは、賢一が掴みかかる。


 フリッツ・ヘルメットを右側から押さえた彼は、そのまま装甲板に、敵を何度も叩きつける。



 女性ゾンビの額に、多用途銃剣を突き刺し、モイラは奴を蹴り飛ばす。


 そして、別な囚人ゾンビを相手に戦おうと、背後に振り向きながら、握り拳を振るう。



「やる気になっているのは良いが、戦争なら兵隊だけで、やってくれっ! てのっ!」


「戦場じゃあ、ジャーナリストでも、武器を取って、戦う必要もあるのよ」


「本当は、殺しよりも人を助けるのが、俺の使命なんだがっ!」


「いやですっ! 来ないでっ! 来たら、斬るしか…………くぅぅ?」


 文句を言いつつ、ダニエルは険しい顔つきで、嫌々ながらも、ゾンビを投げ飛ばす。


 サップで頭を殴り、体勢を崩した敵を掴み、エリーゼは地面に引き倒してしまう。



 ジャンは、勢いよくタガネと左手を降って、兵士ゾンビの額を砕き、ハーネスを握って押し倒す。


 メイスーも、怖がりながらも、囚人ゾンビや看守ゾンビ達の手や胸を、中華包丁で切り裂く。



 こうして、残りも動かなくなるまで、攻撃が続けられて、殆どが殲滅された。

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