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第9話 激しい戦いの末に


 賢一たちは、三種類のゾンビ達を前に、それぞれが持っている武器を向ける。



「ウアアーーーー!?」


「ギャウウッ!!」


「うわっ! ゾンビが来るっ! こっちからもっ! ぎゃああああ」


「逃げろおおおお、うわわわわわわっ!?」


 走るゾンビや小走りゾンビ等は、逃げる囚人と看守たちを追っていく。


 白人囚人は、逃げ道を塞がれてしまい、ゾンビ達に喰われ、黒人看守はゾンビに殴られる。



「ドアの向こうからも来たぞっ! 両側と、上から…………これは、キツい戦いになるな」


「海兵隊コマンドは、これくらいでは、ビビらないわ」


 走ってくるゾンビの群れを見て、賢一は特殊警棒を強く握りしめて、棒先を敵に向ける。


 モイラは、多用途銃剣を構え、何時でも相手の首を斬れるように姿勢を低くする。



「てやああっ! 腰を砕いてやるっ!」


「はああっ!! くたばりがれっ!!」


 走ってくる囚人ゾンビの襟を掴むと、賢一は思いっきり、壁に叩きつける。


 モイラは、回し蹴りで、兵士ゾンビの肋骨を折る勢いで、胸を蹴り飛ばした。



「まだまだ、来るわねっ! 殴りまくるしかないわっ! 覚悟するしかないっ! 死体はカメラに取って上げる」


「喧嘩なんて、もう何年もやってないっ! 俺は、こう見えて、平和主義者なんだっ! ギャングなのは見た目だけだぜ」


「ギャウアア~~~~」


「グルアーーーー!!」


 エリーゼは、囚人ゾンビの頭を何度も左右から殴って、向こうが攻撃する事を許さない。


 その後ろから走ってくる女性兵士ゾンビを、ダニエルは喉を掴み、後ろに押し倒した。



「いやあっ!? 来ないで下さいっ! ぐっ! うう…………もう止めてっ!」


「うらっ! このまま足で踏み潰してやるっ! 俺は、はやく民間人を助けに行かないと成らないんだっ! 邪魔するなっ!」


「ギャアアアア~~」


「グオオーー!!」


 メイスーは、囚人ゾンビの体を掴んで、壁に押し付けたが、右手を噛まれて血を流す。


 兵士ゾンビが殴りかかってくると、ジャンは後ろに下がり、素早く奴の喉元に肘鉄を喰らわせた。



「いやあっ! このっ! このっ!」


「グアッ! グッ! ゲアッ!」


「退きやがれっ! この変態野郎っ!」


「止めだっ! 俺は暴力沙汰は嫌いなのにっ!」


「グアアアア~~~~!?」


「また、来るわよっ! 不味いっ! 今のより、数が多いわっ! 一度撤退をしましょうっ!」


 メイスーは、壁に押さえつけた囚人ゾンビの頭を揺らして、後ろに何度も叩きつける。


 その右側から、賢一は髪を掴んで、奴を地面に押し倒して、後頭部を踏みつけた。



 拳を振るいまくる、ダニエルの連続攻撃を喰らって、兵士ゾンビは後ろに倒れた。


 モイラは、そう言いながら叫び声が聞こえる方向とは逆に、勢いよく駆け出していく。



「ギャアアアア~~!!」


「グオオオオッ!」


「アアアアァァ」


「ウエエーーーー!」


「マジだな? みんな下がれっ! とにかく、走るんだっ! 俺は自衛隊員であって、飛脚じゃないが、走るしかないか…………」


「これは、火事場から逃げるより、キツイなっ! でも今は下がるしかない」


「火の海とゾンビ、どっちもスクープだけど、今は逃げるのが先決ね」


「まっ! 待って、私を置いてかないでよっ!」


「いいから、走るんだっ! ゾンビの餌に成るなんて、俺はゴメンだぜっ!」


 ゾンビの大集団が走って来る声が聞こてくると、賢一は踵を返して、モイラを追って行った。


 ジャンも、すばやく後ろに振り返り、廊下を一心不乱に駆けていく。



 エリーゼは、このまま突っ立っていると不味いと思い、彼等を追っていった。


 メイスーが走り出すと、彼女を励ましながら、自らも悲鳴を上げつつ、ダニエルは走る。



「兵士の死体があったっ! 撃たれているわねっ! みんな伏せてっ!」


「銃撃する気だっ! 全員、床に這いつくばれっ!」


「うわっ! これは、不味いわっ!」


「ひぇ~~! もう銃撃は止めてくれ~~!」


 頭を撃たれて、死んでいる兵士の死体から、M4カービンを、モイラは拾った。


 彼女の声を聞いて、賢一は、スライディングしながら、床に伏せた。



 エリーゼは、それを見ると一気に飛びながら伏せて、銃撃を切り抜けようとする。


 タタタタと続く、銃撃音を耳にして、ダニエルは恐怖の余り叫んでしまう。



「ギャアアーー!!」


「グアアッ!?」


「リロード中、今が走るチャンスだよっ!」


「走れっ! メイスー、行くんだっ!」


「うん、行かないと」


「ジャン、お前も行けっ!」


 ゾンビの集団は、ライフル弾を受けて、先頭を走る連中が倒れていく。


 モイラは、弾倉が空になると、それを取り替えるべく、兵士の死体を探る。



 ジャンとメイスー達は、廊下の奥へと逃げていき、必死で走り続けた。


 賢一は、二人の後を追って、立ち止まる事なく、がむしゃらに床を蹴っていった。



「ドアだぜっ! 鋼鉄製だっ! 鍵がかかってるっ!」


「内側だから、開けられるわ、焦らないでっ!」


「もう、ダメだねっ? 数が多すぎるわ」


「また、格闘するしかないのかよ…………」


 ダニエルとエリーゼ達は、両ドアを開けようとして、必死で動かした。


 モイラは、弾帯付きベストを拾う暇なく、逃げていたが、M4カービンの弾が尽きてしまった。



 そのため、他に使える弾倉がなく、多用途銃剣を使わざる負えなくなった。


 賢一も、踵を返して、特殊警棒を振るうべく、頭の後ろに右腕を引いた。



「ギャアアアアアア」


「グルアアアアァァ」


「おい、これは覚悟を決めるしかないのか? タガネ一本で、戦えと?」


「不味いですよ、早くドアから逃げましょうっ!」


「いや、間に合わないわ? 私達は、この手持ち武器で敵と戦うしかないのよ、はぁ~~」


「だったら、やるしかな…………はあ? 誰が撃っているんだっ!?」


 走るゾンビ&跳躍力の高いゾンビ達は、津波が如く、一気に距離を詰めてくる。


 ジャンとメイスー達は、それぞれの武器を構え、冷や汗を、体中から滴しながら敵を見る。



 エリーゼは、サップを振り回せるように、腰を低くして、派手に暴れられるように構えた。


 ダニエルも同じく、腹をくくり、ファイティングポーズを取り、軽くジャンプを繰り返す。



 だが、そんな彼等の背後から銃撃音とともに、ライフル弾が何発も飛んでくる。


 三連発と単発で、連続で放たれる射撃で、ゾンビ達は、次から次へと倒れていく。



「グエッ! ギャ、ギュア~~?」


「グルアアーー!?」


「いったい誰だ、助かったけど? アンタ等は?」


「民間人かい? いや、ラテン系の組合員かい?」


「おいおい、俺達は観光客だぜ? 見た目が、それに見えるだけだよ」


「それより、中は安全なんでしょうね…………」


 向かって来ていた、ゾンビ達は、今の銃撃により、完全に殲滅されてしまった。


 二人の人間を前にして、賢一は質問してみたが、モイラは彼等が犯罪者であると見抜く。



 しかし、ヘラヘラと笑う男は、右肩に自動小銃CARー15を抱えて、それを否定した。


 一方、女性の方は、刑務所内に、自動小銃M16A2を向けながら呟いた。



「ミュレット・カスティージョ・アルマスだ? こっちは妻のダフネ」


「名前より、はやく逃げましょう? 外は敵だらけよ」


 ミュレットは、黒髪オールバックに茶色い瞳で、日に焼けた白い肌、髭の生えた濃い顔をしている。


 服装は、黒メッシュベストを、白いTシャツの上に着ており、腕には黒いタトゥーが見える。



 下は、膝丈の短いジーンズと、赤いランニングシューズを履いている。


 全体的な雰囲気は、モイラが予想するようなラテン系の麻薬カルテル構成員と言った感じである。



 ダフネは、外に銃を向けながら、何処から敵が来ても良いように身構えている。



 容姿は、黒髪ロングヘアーを真ん中で分けており、アジア人に近いラテン系の冷利な顔だ。


 瞳は、薄茶色くて、体は結構グラマラスであり、胸と尻は出ている。



 服装は、やや濃い褐色肌に、黒い水着ブラしか着ておらず、腕や背中には黒いタトゥーがある。



 下は、水色のスカートで、少しだけ黒い水着パンツが上から見えている。


 そして、両足にも、黒いタトゥーがタイツ模様のような感じで、入れてあった。

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