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第7話 ここから脱出を目指して


 賢一たちは、収容施設から脱出しようと、両ドアに向かったが、その後ろでは異変が起きていた。


 囚人や看守のゾンビ達が、いきなり立ち上がり、彼等に襲いかかった。



「グアア~~!?」


「ギャウウッ!!」


「きゃあっ! ゾンビ達が動き出したっ!」


「下がりなっ! 私たちは戦うしかないんだよっ!」


 囚人ゾンビと兵士ゾンビたちの動きを見て、メイスーは驚きながら叫んでしまった。


 恐怖で身を震わせる彼女を守らんと、モイラは前に出て、コルト45を撃ちまくった。



「グアアッ!?」


「ゲエ…………」


「頭さえ、狙えばっ! 簡単に殺せるわっ!」


 囚人ゾンビは、モイラによる射撃で、脳天を拳銃弾に貫かれて、崩れ落ちるように倒れた。


 兵士ゾンビも、右目を撃たれて、髄液を撒き散らすと、直ぐに動かなくなってしまった。



「俺も、指輪さえ填めてれば、お前らは怖くないぜっ! この距離なら、拳銃より殴る方が強いっ!」


「グアアッ! グルアーー! ガッ!?」


「連中を、近寄らせないようにしましょうっ! ここは白兵戦をするしかないわっ!」


「グアアアッ!?」


「ああ、そのために消化斧を取ら…………動きだしやがったなっ!」


「ウオオオオ~~」


「このっ! 賢一、俺が押さえているうちに、頭を叩いてくれっ!」


 ダニエルの連続パンチを食らって、右側から迫りくるゾンビ達は、次々と押し倒される。


 エリーゼも、サップを何度も振るっては、連中を寄せ付けないように、頭を中心に叩きまくる。



 敵が暴れる中、賢一は特殊警棒を握り締め、近くの看守ゾンビに狙いを定める。


 しかし、死んでいたと思われた囚人ゾンビが、彼の背後で、のろりと起き上がりだした。



 その瞬間に、ジャンは両手で、奴を動けなくするため、肩を掴んで壁に押さえつけた。



「分かったっ! 今、叩きまくるからなっ!」


「グエエーー!? ギャ~~~~!!」


「よし、消化斧で、殺れたっ!」


 賢一は、囚人ゾンビを特殊警棒で、滅茶苦茶に殴りまくり、反撃できないように押さえた。


 身動きが取れなくなった、奴の頭上に、ジャンは奪い返した消化斧を叩き込んだ。



「ザックリと、頭が割れたな?」


「他は? どうなっている? 仲間を助けねば」


「いや、退いてっ! 気持ち悪いっ!」


「グアア」


「うらっ! 民間人に手は出させないわよっ!」


 囚人ゾンビが座ったまま動かなくなると、賢一とジャン達は、辺りを見渡す。


 すると、メイスーに襲いかかった看守ゾンビが、後ろに押し倒されて、再び起き上がる。



 だが、奴による再度の攻撃も、モイラが放った回し蹴りが頭に当たった事により、未然に防がれた。



「ギャ~~~~」


 脳が破壊された、看守ゾンビは、凄まじい叫び声を上げながら崩れ落ちた。



「これで、全部か? だったら、さっさと次の部屋に向かうぞ」


「準備は、出来てるわ…………クリア」


「うう、怖いわ」


「それでも、行くしか無いぜ、それでもなっ!」


 両ドアの右側を開き、賢一は即座に通路へと、音もなく走り出した。


 左側を開いて、モイラは回転しながら中に飛び込み、コルト45を辺りに向ける。



 幸いな事に、この廊下には、ゾンビと囚人たちは存在していなかった。



 しかし、それでも何処かに敵が潜んでいるのではと、メイスーは疑ってしまう。


 もちろん、同じく気を抜かず、ダニエルも両手で、トカレフを構えながら歩く。



「はっ! あっちから銃声がするっ! このまま行ってみるぞっ! 誰かが戦っているのかも知れないっ!」


「危険だけど、音が鳴る方向が、向かう先だから、仕方ないわねっ!」


「戦場さながらの雰囲気だわ? しかし、私はジャーナリスト、確かめに行くのが使命っ!」


「大した度胸だな、俺は戦場よりも美しいビーチに行って、美味い食い物と、綺麗な姉ちゃんに囲まれたいだけだぜ」


 賢一は、遠くから轟いた射撃音に驚き、直ぐに音源へと走り出した。


 その後に続いて、モイラも金髪を揺らしながら、気を引き締めつつ駆け出す。



 サップで、左右の肩を叩き、エリーゼは首をゴキゴキと鳴らして、小走りし始める。


 疲れた表情で、ダニエルは愚痴りながらも、他に行く宛もないので、三人に着いていく。



「とにかく、行くしかないっ! おっ! 誰かが来るっ!?」


「ウガアアッ!」


「ギャアアアアーー!!」


「止まりやがれ、止まれ~~~~!」


「殺せ、生きて監獄から出すなっ!」


 曲がり角の右側から、賢一は顔を出して、様子を確かめたが、そこではゾンビ達が走っていた。


 そして、看守が自動小銃M16A2から、何度も三発ずつ、ライフル弾を発射する。



 兵士は、M4カービンを撃ちまくり、走る敵を次々と倒していく。


 これにより、ゾンビ化していた、囚人や看守の死体が、そこら中に頃がった。



「危なかったな? まだ、敵が潜んでいるかも知れない」


「警戒は怠るな? 何処かに囚人が隠れているのは間違いないからな」


 看守は、そう言うと死体の頭をブーツで踏みつけて、起き上がらないかと確かめる。


 兵士も、銃口を周囲に向けながら、囚人の生き残りやゾンビ達を探し始めた。



「アイツら、厄介だな? ダニエル、モイラ? 銃撃を頼めるか?」


「先制攻撃なら、任せな…………」


「俺は、銃なんて、使った事が無いんだが」


 賢一は、壁際に身を寄せて、歩き回る二人の行動を密かに観察し続ける。


 モイラは、コルト45を右手に握り、ダニエルも両手で、トカレフを強く握り締める。



「こっちに来ますよっ! ヤバいですっ!」


「来たら、斧で叩き割るしかないな」


「アイツら、話は通じるかしら? 通じないなら、叩くしか?」


 足音が近づいてくる度に、メイスーは顔を真っ青にさせながら、体を丸めてしまう。


 ジャンは、消化斧を確りと抱え、エリーゼは姿勢を低く構えて、サップを振るう準備をした。



「ここは危険だ、外に出よう」


「ああ、そうだな? それから、他の部隊と合流しよう」


 看守と兵士たちは、二人とも敵は居ないと判断して、ゾンビが走ってきた道に戻っていった。



「ようやく、行ってしまったか?」


「グアアッ!?」


「しまったっ! まさか、上から来るとはねっ! 撃つのは出来ないからっ!」


「喰らえっ! 頭を薪のように割ってやるっ!」


 賢一が、ほっと胸を撫で下ろした瞬間、天井の通気孔から、ゾンビが飛び降りてきた。


 それを目にした瞬間、モイラは腹に蹴りを喰らわせ、ジャンが両目に消化斧の刃を叩きこんだ。



「グエエ…………」


「何だっ!」


「あっちに誰か居るぞっ!」


 ゾンビが悲鳴を上げた事で、看守と兵士たちは、曲がり角に注意を向ける。



「不味い、俺たちは生存者だっ!? 囚人じゃあないっ!!」


「居たぞっ! 怪しい奴だっ! 撃ち殺せっ!」


「妙な迷彩服を着ている? 反政府ゲリラかっ!」


「どうやら、話は通じないようだね…………なら」


 見つかったので、賢一は両手を上げながら、曲がり角から、ゆっくりと出ていこうとする。


 しかし、それでも看守と兵士たちは、彼も囚人であると思い、二人とも銃撃してきた。



 モイラは、横から飛び出て、コルト45から即座に、二発の弾丸を発射した。


 それは、正確に連中の胸に当たり、こちらに対する射撃を中断させた。



「不味い、隠れないとっ!!」


「がっ!」


「うわ、この野郎っ!」


 そう言いながらも、賢一は曲がり角に行くより、素早く地面に伏せる事を選んだ。


 彼を狙っていた、看守は直ぐに死んでしまったが、兵士は手榴弾を転がしてから動かなくなった。



「ヤバいわっ! 手榴弾よっ!」


「早く投げ返せっ! いや、逃げろっ!」


「きゃああああっ!」


「離れろっ! 下がれっ!」


 エリーゼとダニエル達は、直ぐに走り出し、メイスーはジャンが手を引っ張る。



「賢一、早く逃げなっ!」


「いや、これは…………」


 モイラは、仲間たちとは反対側の曲がり角に隠れており、賢一は転がってきた手榴弾を拾う。


 そして、それが爆発する前に、敵の死体に向かって、勢いよく投げかえした。



「うわああああっ!? 終わったか」


 その二秒後、爆風から頭に両手を当てて、身を守った、賢一は顔を前に向けた。


 すると、そこには爆発の直撃に巻き込まれた惨たらしい死体が、二体も残っていた。

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