目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第5話 収容施設


 賢一たちは、迫りくる大量のゾンビ達を前に、逃げられないと判断して、六人とも敵と退治する。



「グアアアア~~!?」


「ギャウウウウッ!!」


「来たぞっ! もう殺るしかないっ! ほんっとに、ナイフだけでも有れば…………」


「行くわよ、海兵隊員として心の準備は出来てるわ」


 走ってくる囚人ゾンビの襟を掴むと、賢一は思いっきり、壁に叩きつける。


 モイラは、回し蹴りで、兵士ゾンビの肋骨を折る勢いで、胸を蹴り飛ばした。



「まだまだ、来るわねっ! 殴りまくるしかないわっ! 覚悟するしかないっ! 死体はカメラに取って上げる」


「喧嘩なんて、もう何年もやってないっ! 俺は、こう見えて、平和主義者なんだっ! ギャングなのは見た目だけだぜ」


「ギャウアア~~~~」


「グルアーーーー!!」


 エリーゼは、囚人ゾンビの頭を何度も左右から殴って、向こうが攻撃する事を許さない。


 その後ろから走ってくる女性兵士ゾンビを、ダニエルは喉を掴み、後ろに押し倒した。



「いやあっ!? 来ないで下さいっ! ぐっ! うう…………もう止めてっ!」


「うらっ! このまま足で踏み潰してやるっ! 俺は、はやく民間人を助けに行かないと成らないんだっ! 邪魔するなっ!」


「ギャアアアア~~」


「グオオーー!!」


 メイスーは、囚人ゾンビの体を掴んで、壁に押し付けたが、右手を噛まれて血を流す。


 兵士ゾンビが殴りかかってくると、ジャンは後ろに下がり、素早く奴の喉元に肘鉄を喰らわせた。



「いやあっ! このっ! このっ!」


「グアッ! グッ! ゲアッ!」


「退きやがれっ! この変態野郎っ!」


「止めだっ! 俺は暴力沙汰は嫌いなのにっ!」


「グアアアア~~~~!?」


「また、来るわよっ! 不味いっ! 今のより、数が多いわっ! 一度撤退をしましょうっ!」


 メイスーは、壁に押さえつけた囚人ゾンビの頭を揺らして、後ろに何度も叩きつける。


 その右側から、賢一は髪を掴んで、奴を地面に押し倒して、後頭部を踏みつけた。



 拳を振るいまくる、ダニエルの連続攻撃を喰らって、兵士ゾンビは後ろに倒れた。


 モイラは、そう言いながら叫び声が聞こえる方向とは逆に、勢いよく駆け出していく。



「ギャアアアア~~!!」


「グオオオオッ!」


「アアアアァァ」


「ウエエーーーー!」


「マジだな? みんな下がれっ! とにかく、走るんだっ! 俺は自衛隊員であって、飛脚じゃないが、走るしかないか…………」


「これは、火事場から逃げるより、キツイなっ! でも今は下がるしかない」


「火の海とゾンビ、どっちもスクープだけど、今は逃げるのが先決ね」


「まっ! 待って、私を置いてかないでよっ!」


「いいから、走るんだっ! ゾンビの餌に成るなんて、俺はゴメンだぜっ!」


 ゾンビの大集団が走って来る声が聞こてくると、賢一は踵を返して、モイラを追って行った。


 ジャンも、すばやく後ろに振り返り、廊下を一心不乱に駆けていく。



 エリーゼは、このまま突っ立っていると不味いと思い、彼等を追っていった。


 メイスーが走り出すと、彼女を励ましながら、自らも悲鳴を上げつつ、ダニエルは走る。



「兵士の死体があったっ! 撃たれているわねっ! みんな伏せてっ!」


「銃撃する気だっ! 全員、床に這いつくばれっ!」


「うわっ! これは、不味いわっ!」


「ひぇ~~! もう銃撃は止めてくれ~~!」


 頭を撃たれて、死んでいる兵士の死体から、M4カービンを、モイラは拾った。


 彼女の声を聞いて、賢一は、スライディングしながら、床に伏せた。



 エリーゼは、それを見ると一気に飛びながら伏せて、銃撃を切り抜けようとする。


 タタタタと続く、銃撃音を耳にして、ダニエルは恐怖の余り叫んでしまう。



「ギャアアーー!!」


「グアアッ!?」


「リロード中、今が走るチャンスだよっ!」


「走れっ! メイスー、行くんだっ! 今は逃げろっ!」


「うん、行かないと」


「ジャン、お前も行けっ!」


 ゾンビの集団は、何発もライフル弾を受けて、先頭を走る連中が倒れていく。


 モイラは、弾倉が空になると、それを取り替えるべく、兵士の死体を探る。



 ジャンは、メイスーを励ましながら、二人して、廊下を逃げて行った。


 その一番後方では、賢一が敵を眺めて、何れくらい距離が離れているか測る。



「もう一回、撃つよっ!」


「やべっ!? 頭を下げないと」


「うわわ、不味いわね」


 モイラが叫び、M4カービンから再び射撃が開始されると、仲間たちは床に伏せる。


 エリーゼとダニエル達は、頭を両手で覆いながら、ゾンビ達が殲滅されるのを待つ。



「グアア…………」


「グエエエエ」


「ギャアアア~~!!」


「グルアーーーー」


 その間に、前方を走るゾンビ達は、ライフル弾で倒れてゆくが、後ろから来る連中も死んでいく。


 これは、銃弾が貫通しているからだが、それでも、生き残りが勢いよく突っ込んでくる。



「モイラ、もういいっ! 逃げるぞっ! 奥に向かえっ!!」


「不味いねっ! この数じゃあ、道路の二の舞だわ」


 賢一は、五メートルの距離まで迫るゾンビ達から逃れようと、必死で足を動かし続ける。


 モイラも、奥から次々と現れる群れに、銃撃を諦め、銃を抱えたまま走っていく。



「ドアが見えたぞっ! あそこなら、我々は無事に逃げられるっ!」


「よっしゃ? あそこを開ければ、後は閉めるだけだ」


「そこまで行けば、この地獄から抜け出せるわね」


「はあ、はあ、もう少しでっ! あっ!」


 ジャンは、奥に見える分厚いドアを見つけると、目を細めて、そこを指差した。


 それが分かると、ダニエルは走る速度を上げて、一足先に辿りつこうとする。



 エリーゼは、出口に向かって、ただひたすらに廊下を駆け抜けていく。


 そんな中、メイスーだけが運悪く、床に足を滑らせて、転んでしまった。



「いたた…………うあっ!」


「立てっ! メイスー、はやく行くぞ」


 転倒してしまった、メイスーを立ち上がらせて、賢一は彼女を先に走らせる。



「着いたわっ! 貴方たち、さっさと来なさいっ!」


「もう直ぐそこまで来ているぞっ!」


 モイラとダニエル達は、ドアを開けて、他の仲間たちを呼びながら、逃げてくるまで待つ。



「不味い、二人が…………」


「私達は、着いたけど」


「ううううっ! 最悪っ!」


「メイスー、泣くなっ! 先に行けっ!」


 何とか、ドアにまで無事に着いたばかりのジャンとエリーゼ達は、最後尾を走る二人を心配する。


 メイスーは、恐怖のあまり、半泣きに成りながら、ゾンビ達から逃げていく。



 最後に成るであろう、賢一は後ろを振り返り、追っ手たちの顔を睨んだ。


 そこには、傷付いたり、土色をした肌の兵士と囚人だった動く死者たちが、口を開いていた。



「モイラ、メイスーが入ったら、ドアを閉めろっ! 俺は良いっ! どうせ、必要な犠牲だっ!」


「賢一さん…………」


「後は、君だけだっ! 諦めるなっ!」


「そうだよ、まだ弾は残ってるんだっ! 賢一、頭を下げながら走ってきてっ!」


「グアアアアッ!?」


「グルアーーーー!!」


 賢一は、何とかして、メイスーだけを生かそうと、自らが犠牲になる事を選んだ。


 ジャンは、ドアから手を伸ばして、最後の一人となった彼を助けようとする。



 モイラは、M4カービンから単発で、何度もライフル弾を発射していく。


 その一発ずつ放たれた射撃は、ゾンビ達に当たって、次々と倒していった。



「ふぅ~~! モイラ、助かった」


「いいから、閉めるぜ」


「これで、一難去ったわ? でも、次はどうするの?」


「助かったのは良かったけど、とにかく海兵隊と無線連絡が取れれば…………」


「うう、怖かった、うっ!」


「泣いても仕方ない、メイスー、今は生き残った事を喜ぶんだ」


 賢一が、ドアを潜り抜けると、ダニエルは急いで、出入口を閉めてしまった。


 その向こうでは、ギャアギャアとゾンビ達が騒いでいたが、エリーゼは真剣な顔で冷静に呟く。



 モイラも、流石に肝を冷やしたらしく、少し疲れたような表情を浮かべる。


 ゾンビに追われていた恐怖感から、メイスーは、泣き崩れてしまった。


 そんな彼女を、ジャンは落ち着かせようとして、静かに声をかけた。



「そうだ、メイスー? 俺たちは、二度もゾンビと戦ったんだっ! しかも、噛まれてもゾンビに成らないんだぜっ! とは言え、次は何をするか?」


「そうだけど…………」


 賢一とメイスー達は、廊下の奥にある階段を見たが、そこからは銃声が何度も木霊していた。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?