空には、真っ黒な暗雲が漂い、落雷を光らせ、轟音を途切れなく鳴らしている。
ここは太平洋であり、アメリカを主導とする各国海軍&海洋警察などが有する艦艇が集まっていた。
そして、訓練施設がある島々に上陸したり、対テロ訓練が行われていた。
「嵐が近づいている…………第一班、第二班は直ちに船に戻れっ!」
「了解した、撤収する」
自衛隊の水陸機動団員たちが、ゾディアック小型ボート部隊に乗っている。
荒れ始めた海に、何時までも彼等を待機させていると危険なので、指揮官は退避命令を下す。
緑色の迷彩服を着ている彼等は、荒波に体を揺られながらも、船に戻れると聞いて安堵する。
アメリカ海兵隊でも、同じく嵐に備えて、上陸訓練を中止する事にした。
『上陸部隊は、そのまま島に上陸するんだ』
『了解、直ちに移動を開始する』
アメリカ海兵隊の上陸部隊も、砂浜へと、ホバークラフトを揚陸させようとする。
茶色い迷彩服の彼等は、顔色を変える事なく、冷静に任務をこなす。
しかし、予想より暗雲は早く島々に到達した。
上空では、雷が鳴りまくり、海面や島に黄色い光が落下していく。
「うわああっ!」
「ぐあっ! あっ! 尾野っ!」
「尾野が落ちたっ!」
落雷は、第一班のゾディアック小型ボートを攻撃して、船体を激しく揺らした。
また、それにより、一名の隊員が運悪く海に落ちてしまった。
『大変だっ! JSDFの隊員が落ちたぞっ!』
「何だって? ぐわっ!」
「モイラッ!?」
「うあっ! う…………」
落雷は、ホバークラフトにも落ちて、外で作業を行っていた、黒人女性の海兵隊員を海に落とした。
『緊急自体だっ! 二名の兵士が海に落ちたっ!』
『この嵐では、救助隊は出せないっ!』
荒れ狂う波は、各国の艦艇を激しく揺らし、落雷は火災を発生させる。
こうして、嵐は豪雨を大量に降らせて、悪意の如く艦隊を襲った。
それから、二日後、平和なビーチでは観光客が賑わいを見せていた。
「アハハッ! 待ってくれっ!」
「待たないよ~~♡」
白い砂浜では、海パン姿の白人男性が、ナンパした、現地人女性を追いかけていた。
ワイワイガヤガヤと騒ぐ、他の観光客や現地人たちも、砂浜や道路を呑気に歩く。
「ふぅ? いい景色ね、ビーチの風景は絵になるわ」
「なあ、ここは初めてかい? 良かったら、俺と一緒に…………」
黒人男性が、バスでの隣席に座っている北欧系と思われる白人女性に声をかけた。
彼は、灰髪ロングブレイズヘアで、大きな黒い瞳を光らせる、褐色肌の持ち主だった。
頭には、紺色のロングタオルを巻いており、さらに、薄茶色いビーチサングラスを載せている。
服装は、水色のTシャツを着ており、上から黒いジャケットを羽織っている。
脚には、黒くて厚い生地の短パンと、青いスニーカーを履いている。
「良いわね? 奢って、下さるかしら? それなら、別に考えなくも無いわよっ!」
「えっ! 良いの? マジで…………因みに、こう見えても、俺は金持ちだからな」
話しかけられた白人女性は、男遊びなれているのか、黒人男性に笑顔を向けた。
彼女は、明るい金髪を、三つ編みロングテールにしており、丸顔に碧眼の瞳が目立つ。
そこに、小豆色のバンダナを巻いており、赤茶色のシャツを着ていた。
脚には、青灰色の膝丈ジーンズと、赤黒いランニングシューズを履いている。
そして、方からはベージュ色のバッグを大事そうに下げていた。
「ん? 何かしら? アレは…………きゃああああ」
「うわっ! どうしたっ! 死体、いや溺れてしまったのか?」
先ほど、海で遊んでいた男女は、砂浜に打ち上げられた男性の遺体を見つけた。
そう思って、二人は騒いだので、ライフセーバー達が、すぐに現れた。
「おい、頼むっ! 生きててくれっ! AEDを使うっ!」
「またか、さっきは漁師が海兵隊員を助けたらしいが?」
アジア系のライフセーバーは、倒れている男性を助けるべく、必死で救助活動に専念する。
もう一人の白人ライフセーバーは、悪態を吐きながらも、医療キットを砂地に置く。
倒れている男性は、自衛隊員らしく、やや小柄だが、体格はガッシリしている。
黒髪を、角刈りに近い短髪にしている彼は、日々の訓練で焼けた肌は、薄く赤褐色がかっていた。
緑を基調とした、黒・茶・ベージュ等の自衛隊で着用する迷彩服を纏っている。
下には、黒いコンバット・ブーツを履いており、腰には特殊警棒を身に付けていた。
「向こうは意識があるっ? こっちも、助かったら良いが?」
「だな、おいっ! 起きてくれっ!」
「うう? ここは…………」
アジア系ライフセーバーと白人ライフセーバー達の助けにより、自衛隊員は意識を取り戻した。
「生きていたか? 救急車を呼ぶんだっ? ああ、何だって、今は無理だと? なら、ヘリを寄越せっ!」
「直ぐに、病院に運ぶぞ」
アジア系ライフセーバーは、無線機を取り出し、白人ライフセーバーは、野次馬を退かそうとする。
「やだ、何かしら? 海が騒がしいけど?」
通勤途中のアジア系女性は、道路を歩きながら、騒々しいビーチへと目を向けた。
その顔は、不安そうであり、厄介ごとに巻き込まれたくないと言いたそうな雰囲気だ。
彼女は、黒髪まん丸ショートボブヘアで、カラコンを入れているのか、瞳はサクラ色になっている。
少し肌が、日に焼け初めており、健康的な亜麻色になりかけている。
彼女は、スミレ色のヘアバンドを頭に着けており、薄紫サマーコートを羽織っている。
そして、その下には、薄ピンク色をした水着を着用しており、護身用に中華包丁を隠していた。
脚には、灰色スコートと、濃緑色に染められた、サマーシューズの履いていた。
「悪かったね? 私を助けて貰ってさ? もう少しで意識を失うところだったし」
「いや、運が良かったな? 偶然、見つけただけだし」
ビーチの端にある、ベンチに座る海兵隊員は、白髪頭が目立つ、老漁師と話をしていた。
黒人女性である彼女は、サンドベージュのパーマがかった髪を後ろで縛り、シニヨンに纏めている。
肌は、やや黒に近い褐色肌をしており、細い顔と大きな黒真珠のような瞳は、かなり印象的だ。
服装は、茶色を基調とする黒と緑の迷彩服と、緑色のベストを着ている。
開かれた胸元には、黄緑のスポーツブラと、隠し持つ、多用途銃剣が見える。
腰には、ベージュ色のホルスターを下げ、足には茶色い、コンバット・ブーツを履いていた。
「それにしても、騒がしいね」
ポケットから取り出した、八角帽を被り、海の方へと彼女は顔を向けた。
そこを、消防車が凄い勢いで、サイレンを鳴らしながら走っていく。
「急げ、急がないと、火事で人が死んでしまう…………」
消防車を運転する彼は、かなり慌てながらも、火事現場へと向かっていく。
彼は、茶黒いオールバックに、薄茶色い瞳で、ややピンクがかった白い肌で、精進な顔つきだ。
全体的な見た目は、サッカー選手やアメフト選手みたいな厳つい感じがする。
消防服に着替える間も無かったらしく、私服である黄土色のポロシャツを着ていた。
さらに、下も当然だが、灰白いカーゴパンツを履いているだけである。
唯一の消防装備は、燃えにくい特殊素材で作られた黒いブーツだけである。
「ウアア」
海の人間が騒々しくなっている中、内陸部からは不気味な存在が、人々に向かって来ていた。
「ウアアアア」
「ウオオオ」
それは人知れず、深いジャングルの中から、ビーチで遊ぶ観光客や、商売に励む人間を狙う。
しかも、一体や二体ではなく、何十から何百体もの人数で、茂みを掻き分けながら進んでいた。