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答え合わせ14「お師匠様 (3/5)」

「――クゼーション】! 【精神安定リラクゼーション】ッ!!」


「っは――」


 気がついた。


「状況は!?」


 飛び起き、膝枕してくれていたらしいノティアに問う。


「変わっていませんわ。クリス君が気を失っていたのも数分のことです」


「ありがとう。――皆さんッ!!」


 依然としてアリス・アインスと交戦中の前衛職の方々へ、全力で呼びかける。


「アリス・アインスの動きを止めてくださいッ!!」


「よっしゃぁああああああッ!!」


 フェンリスさんの強烈なシールドバッシュ!!


「ゥゥォオォオオオオオオオッ!!」


 そこにアスモデウス様の、聞いているこっちが気を失いそうなほどの【威圧の咆哮シャウト・オブ・プレッシャー】!!

 体勢を崩したアリス・アインスを、前衛職の皆さんが羽交い締めにする!!


 僕は、走る。


「【無制限アンリミテッドォォォオオオッ!!」


 右手の平の一点に全魔力を集中し、


「【収納アイテムゥゥゥウウウウッ!!」


 その手を、アリス・アインスの丹田に打ち付ける!!


「【空間ボックス】ッ!!!!」


 ぎゅるぎゅると魔力が吸い出される感覚。

 お師匠様の腹の中に眠る魔石を、確かにつかんだという感覚。

 あとはそれを、【収納】するだけ。


 だというのに――…


「ふ……はつ……?」


 アリス・アインスが僕の腹を勢いよく蹴り飛ばす!


「うげっ」


「――【治癒ヒール】!!」


 すかさずノティアが駆け寄って来て癒してくれる。


「魔力だ、魔力が足りない!」


「【魔力譲渡マナ・トランスファー】! ――あぁ……でも、わたくしもこれ以上はありませんわ」


「バルベラさん!」


「もうありません!」


「ベルゼビュート様!」


「【魔力譲渡マナ・トランスファー】――これで最後だ」


「あぁ……くそっ」


 足りない!

 さっきつかんだ感覚だと、僕の魔力が満タン近くなければ【収納】できる気がしない。


「何か、何か――」


 前衛組の方は、再び死闘が始まっているし、レヴィアタン様はその前衛が命の危機に瀕したときに退避させ、治癒し、また前線に送り込むというギリギリの仕事で、こちらを見る余裕はなさそうだ。


「何か――…」






「ありますわッ!!」






 ノティアが叫んだ。


「魔石ッ!! 飛翔レースの優勝賞品!! 先王アリソンの魔力が詰まった奇跡の石ッ!!」


「――――あッ!! 【収納アイテム空間・ボックス】ッ!!」


 目の前に、一抱えほどもある巨大な魔石が出現する。

 宵闇の中で、魔石は燃えるように真っ赤に輝いている。


 ノティアが、右手を魔石に、左手を僕の丹田に添えて、


「【吸魔マナ・ドレイン】――【魔力譲渡マナ・トランスファー】ッ!!」


 体中が熱くなる。

 燃えるように、熱い。

 自分の魔力では感じられないほど、熱く、体中を循環しているのが感じられる。


 神の、魔力。

 それがいま、僕の体を循環している。


 魔力は、あっという間に満タンになった。


「――――いってらっしゃい、クリス君」


「うん!」


 走り出す。


「うぉぉおおおおおおッ!!」


 己を鼓舞する為に、叫ぶ。

 そうでもしなければ、泣いてしまうかも知れなかった。


 僕に気づいたフェンリスさんが再びシールドバッシュを敢行し、お師匠様の体勢が崩れたところを、前衛組全員が【威圧の咆哮シャウト・オブ・プレッシャー】を叩きつけた。






 あれほど猛威を振るっていた暴風雨が、ぴたりと止まった。






 ゆっくりと倒れながら、お師匠様がこっちを見ている。

 僕はお師匠様のもとに駆け寄り、いまや仰向けに倒れたお師匠様の丹田に、その手を打ち付ける。


「【無制限アンリミテッド――」






 …………さようなら、お師匠様。






「【収納アイテム空間・ボックス】ッ!!」

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