森の中に降りると、フェンリスさんが盾を構えながら森の奥の方へ【
達人の域に達した【
「……その先に、いるぜ」
急に、雨と風がぴたりと止んだ。
そして――
「――――【
森の奥から、アリス・アインスの声!
同時に、目の前が炎で埋め尽くされるッ!!
鬱蒼と茂っていた木々が、溶けるように無くなっていく。
…………死んだか、と思った。
けど、視界に闇が戻ってくると、僕らはまったくの無傷だった。
「ベルゼビュート様の【
ノティアに囁かれて、僕らの周りを薄っすらとした白い光が囲んでいることに気づく。
その魔力光が消えると、そこには――…木々が消し飛び、広大な広場が出来上がっていた。
そして、そんな広場の中心に、僕らの行く手を阻むように、数十の人影と、それからひとつの人影がある。
数十の方は、黒い軍服を着て、マスケットや、見たことのない据え置き銃で武装した人たち――西の軍人だろう。
そして、そんな軍人たちの先頭に立つのが。
「アリス・アインス……」
「おや、もう『お師匠様』とは呼んでくれないのかい?」
遠目にも月明かりで金糸の肩章が輝いているのが分かる、
ウェーブがかった長い金髪が、美しく輝いているように見える。
美しい……この段になってもなお、僕の心はそう思ってしまう。
こいつは敵だ。敵なんだ。
僕のことをずっとずぅっと欺き続けてきた、最悪の敵。
「待っていたよ、クリス――我が愛弟子よ」
「アリス・アインス……ッ!!」
精一杯の怒りを込めたはずの声は、情けないほどに震えている。
「さぁ、怖がることはない。こちらにおいで」
「行くものか! 僕はお前を倒す!」
「そうかい」
アリス・アインスが右手を上げる。
途端、陣形の両端に設置されている装置から目もくらむような強い光が発せられ、僕らを照らし出す。
「
重い金具の音とともに、西王国の軍人たちが一斉に小銃を構える。
「クリス――ここが、この場所が、儂とお前の旅路の果てさね」
『じゃ、行くよ』
……1ヵ月前。
『え? 行くってどこへ――』
『修行の日々へ、さね』
僕はお師匠様に命を救われ、そう言われた。
「楽しかったよ、クリス。この1ヵ月の旅路は、本当に楽しかった。けど、もう、終わりにしよう」
お師匠様が腕を振り下ろす。
何十