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109(2,998歳)「王都でお店を開くのです! TVゲーム屋兼宝石店兼ITコンサル屋を!」

 城塞都市の領主様には、王都に住みたいとお願いした。

 領主様は快く魔王国直轄領への移転を受け入れてくれた――というか、トラブルメーカーの私を自領に置いておきたくない様子だった。


 その日中に私、デボラさん、サロメさん、クロエちゃんの国民カードと、王都直轄領への転入届を作ってくれると約束してくれた。

 私と領主様とで諸々の調整を行っている間に、この街のことに詳しいデボラさんに宿を取ってもらい、領主様へ宿を伝えた。


「じゃ、まずは服屋さんに行きましょう。可愛い服を山盛り買いますよ!」


「「「ふぉぉぉおおおおおお!!」」」


 奴隷として、必要最低限の小綺麗なメイド服しか着れなかったお三方が大興奮!

 今は一応ビジューさんからもらった女性服を着てるけど、デボラさんとサロメさんなんかは、自分で好きな服を買うなんて経験は初めてなんだそうな。

 特にデボラさんなんて浮浪児歴が長いから、


「長年の夢のひとつが叶いました! アリソン様、本当にありがとうございます!」


 ちなみに今後は『アリソン様』呼びしてもらうことにしている。当面、私が魔王の【従魔テイム】を上書きできることは隠すため。


「いえいえ。あと仕事着用にパンツスーツも用意しましょう」


「「「はい!」」」


 ってことで滅茶苦茶散財した。あ、ちなみにお金はビジューさんから一生遊んで暮らせる分だけもらった。

 もらったといっても、私たちが出した金銀財宝を通貨に換えてもらっただけのことだけど。


 いやぁ、王国で服と言えばオーダーメイドか古着が普通だったもんだから、色とりどりの服が各種サイズを取り揃えて店頭に並んでいる様子を見るのは物凄く久しぶりのことだった。

 前々世以来――実に数千年ぶり!


 買った服・下着・靴や生活用品、化粧品なんかは各自身に着けている時間停止機能付き【アイテムボックス】で保管。


時計クロック】で確認すると、お昼になっていた。


「これ食べたら、サロメさんは明日朝まで自由行動とします」


 カフェで軽食を食べながらそう言うと、


「いいんですか、アリソン様?」


 驚いたような顔のサロメさん。


「ま、今日一晩くらいならね。出身孤児院の院長さんに孝行してくるといいよ。あ、もちろん『私のこと』は口外禁止で」


 サロメさんの夢である『孤児院の院長さんへの恩返し』と『積もる話』は、悪いけど半日で終わらせてもらおう。ま、恩返しの方は現金渡すなり金銀財宝渡すなりすればすぐに終わるだろう。


「ありがどうございまず! ありがどうございまず!」


「あはは、泣かないでくださいよもー……あ!」


 恐る恐るクロエちゃんの方を見ると、果たして復讐少女は冷たく微笑んでいた。


「えーと……クロエちゃんも自由時間、要る?」


「――頂けるのなら」


「あ、あのっ、私の基本方針は理解してるよね? 人死にはなしだからね!?」


「嫌だなぁ、そんなことしませんよぉ。ただ、あいつらの目の前で金銀財宝を生成して見せてやるだけです」


 あぁ……これは本当に『見せる』だけで『与える』わけではなさそう。


「じゃ、じゃあ悪いけどデボラさんは私と一緒に買い出し継続ってことで」


「喜んで!」


 居酒屋かよ!



    ◇  ◆  ◇  ◆



「それで、これからどうするんです?」


 買い出ししながらデボラさんが聞いてきた。


「王都で会社を立ち上げます!」


「何かを売るんですか?」


「宝石とゲームと、知恵と技術を売ります」


「宝石は分かりますし、ゲームも分かります――養殖の時、息抜きにプレイさせて頂きましたから。でも知恵と技術、とは?」


「コンサルティングです」


「はい?」


「問題解決、業務改善、バイ・ディータ謹製コンピュータ! ITコンサルでさらば紙社会! 来たれデータ連携による情報社会! 魔王国の全ての領主、全ての経営者を、私なしちゃいられない体にしてやるのです!!」


「は、はぁ……」



    ◇  ◆  ◇  ◆



「というわけで王都に行きたいのですが」


 翌朝、魔王国、城塞都市の冒険者ギルドに行くと、


「ヒッ!?」


 受付嬢にビビられた。


「あ、ああああなたがウワサの、金銀財宝製造機ご一行様ですね!?」


 機械呼ばわりかよ!


「はい。王都へ行ける【瞬間移動】持ちの方を斡旋して頂きたくて。お代はコレです」


 手のひら大のダイヤモンドを生成し、ブリリアントカット・バイ・【アイテムボックス】する。

 すると、ギルドホールにいた冒険者たちが一斉に声を上げ始めた。


「俺がやる!」


「いや俺が!」


「僕なら滑らかな【瞬間移動】でストレスない旅を保証しますよ!」


「私にやらせてください! ね、お嬢さん、同じ女性同士の方が安心できるでしょう? これでも【時空魔法】レベル8持ちで、魔王国中の主要な街全てを【瞬間移動】登録しているんですよ!?」


 最後の女性、キャビンアテンダントみたいな格好をした人がやたらとグイグイ来て、言ってることも納得感があったので、


「ではお姉さん、あなたにお願いしますね」


「ぃよっしゃあダイヤモンドゲット!」


 ずいぶんと現金でサバサバした人のようだった。



    ◇  ◆  ◇  ◆



「改めてよろしくお願いします! 私、【瞬間移動】による旅専門冒険者のアジェンテと申します」


 名刺を渡された! 前世を思い出すよ。


「ウワサによると、お嬢さん――アリソンさんは、今まで山に住んでいて、この国のことをあまりよくご存じないんですよね?」


 もうそこまでウワサになってんのか! まぁこの街一番の魔力持ちであるビジューさんを実質、屈服に近い状態に追い込んだんだから、ウワサにもなるか。


「というわけでこちら、魔王国全土の地図です」


 ギルドホールの片隅で、アジェンテさんがテーブルの上に地図を広げる。

 地図には赤い印が百個近く付けられていて、


「この印が、私がご案内可能な街です。ちなみにご希望の王都はここ。追加報酬を頂けるなら、この中から19個、ご希望の街へご案内し、最後に王都へご案内しましょう」


「おぉぉ……一気に【瞬間移動】登録ポイントが増やせるんですね! あの、さらなる追加報酬と、私からの【魔力譲渡マナ・トランスファー】があれば、この印全てに連れてって頂くことってできます?」


「ええ、もちろん! そうですよね、アリソンさんほどの魔力持ちなら、【魔力譲渡マナ・トランスファー】なんてわけないですよね」


「では、どうぞ!!」


 追加で5つの手のひら大ダイヤモンドを渡すと、アジェンテさんは小躍りしてた。


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