「な、なんてことだ……金銀財宝の生成など、四天王のお三方にしかできない秘術のはずなのに!」
ビジューさん宅に戻り、感心しきりなビジューさん。
そして綺麗にいなかったことにされてる四天王最弱のアデスさん。ほんっと魔力至上主義ってひどいね!
そしてどうやら、金銀財宝を魔法で生成するのは、別に法律違反ではないらしい。というかできる人がほとんどいないらしい。
つまり『四天王のお三方』以外の魔力と魔法力と【土魔法】スキルレベルは、私とディータとノティアさんに劣るというわけ。
しかもアメリアさん以下精鋭従士数名もダイヤモンドを出せる。どころか陛下もフェッテン様も宰相様も出せる。
リスちゃんとホーリィさんは出せない。リスちゃんは脳みそ筋肉だし、ホーリィさんも【光魔法】以外に関しては脳筋だから。ホント、なんであの人が【聖女】なんだろうね!?
パパンも基本脳筋だから出せない。ママンも魔法はあまり得意じゃない方だから出せない。バルトルトさんは確か出せたはず。3バカトリオはトニさん以外のふたりは出せる。というかトニさんがお酒作り以外の魔法を覚える気がない。
なぁんだ大したことないじゃん魔王国!
まぁ私たちには何百年何千年と無限レベリングできる環境があるから、当然か。
「あ、アリソン……ダイヤモンドをどのくらい出せる?」
「どのくらいでも」
「は?」
「どのくらいでも出せますよ!」
ずももももももももも…………
私たちが今いる部屋――ビジューさんの書斎――の床を埋めるほどの巨大なダイヤモンドプレートを生成し、からのぉ、
「ブリリアントカット・バイ・【アイテムボックス】!」
床一面に転がる、見事なカットで手のひらサイズのダイヤたち!
ビジューさんの方を見ると、
「ま、また気絶している……」
◇ ◆ ◇ ◆
ってことで、その日はビジューさんに求められるまま、無数の金銀細工や美しいカットの宝石の数々を生み出しまくった。
ビジューさん大喜び。この調子で毎日続けていれば、貨幣の相場大暴落間違いなしで魔王国大混乱間違いなしなことが分かっている私も大喜び。
っていうかビジューさんは魔王国の混乱のことを考えないのか? 『この町一番の魔力』持ちの自分なら許されると思ってる?
その日の夜、奴隷用の部屋にて……ビジューさんは私に個室を与えようとしたけど、もう荷ほどきもしたしってことで辞退したんだよ。
ま、本音は別のところにあるんだけど。
「しくしくしく……」
「幼い子供が入ってきたから、私たちの扱いが少しはマシになると思っていたのに……」
「こんなことって……ご主人様からの扱いが余計にひどくなってしまったし」
ベッドの中から聞こえてくる悲しそうな声。
そう、哀れな待遇に置かれている奴隷メイドさん3名を放っておくのが忍びなかったんだよ。
「あ、でもアリソン様、朝下さったお食事は本当にありがとうございました!」
私のベッドの下にいる、一番年上らしい女性が声をかけてきた――って、
「さ、様は止めてくださいよ……皆さんは先輩なんですから」
「えっとじゃあ……アリソンちゃん」
「はい!」
「私たちみんな、アリソンちゃんには感謝しているから。あんなご主人様だけど、困ったことがあったら相談してね」
「ありがとうございます! ところでこれ、食べます?」
すちゃっとベッドから飛び降り、【アイテムボックス】からパン、串焼き、サラダ、シチューというド定番メニューを取り出す。
目の色を変えるお三方。
◇ ◆ ◇ ◆
いろいろな話を聞いた。むしゃむしゃとデザートのケーキを頬張りながら。
1番年上のデボラさん21歳は幼くして両親を亡くし、時折春を売りながら浮浪児として長く生きていたんだそうだ。でも15歳の時に『未選別者狩り』に遭って捕まり、選別の儀でMP不足と判定された。
「天涯孤独の身だったから、奴隷落ちを選ぶことに躊躇はなかったのよ。下手に家族がいて成人できないとなると、奴隷落ちを選ぶと家族に累が及ぶから……。ここではもう6年働いている。ご主人様はよく私たちを足蹴にするし伽の相手もお命じになるけど、命の危険にかかわるような仕事をさせられる他の奴隷に比べれば、まだ温情があるくらいね」
覚悟キマってんなぁ魔力至上主義社会!
って待て待て何気に『伽の相手』って……大丈夫だよな、ビジューさん!? 私に手を出したら殺されるぞ、フェッテン様に。
2番目のサロメさん17歳は孤児院出身。
選別の儀でMP不足と判断され、3日だけ与えられた猶予の中で孤児院の院長さんといろいろ話し合ったそうな。
で、院長さんはサロメさんの奴隷落ちを快く受け入れてくれた。孤児院の評判が落ちて寄付金が減るのを承知の上で。
「いつか、何とかして恩返しがしたい……それが私の夢よ」
とはいえ奴隷はお給金がもらえないから、恩返しの方法については考えあぐねているそうな。
1番年下のクロエさん――ちゃん?――15歳は、本当につい最近ここに来たばかり。
元は下級貴族の長女だったんだけど、生まれつき魔力が少なく、両親や兄弟全員から疎まれ、家族や使用人たちから何度も事故死に見せかけて殺されそうになったんだとか。
それでも必死に生き延び、しかして15歳の選別の儀では基準値に全く届かず成人できないこととなった。
ここで屑魔石化ではなく奴隷落ちを選べば、クロエさんの家族は確実に没落する。
「でも……私にあれだけのことをしてきたんですもの。いいザマですわ」
「ヒッ!」
壮絶な笑顔に、思わず悲鳴が出てしまった。
とはいえ、お三方の過去はよーく分かった。つまり魔力と魔法力さえあれば良いわけだ。
「力が……欲しいか……」
「「「……え?」」」
「そ、それはどういう……?」
代表で質問してくるデボラさんに対し、
「それなりの苦痛は伴いますが、たった1秒で10万超えの魔力を手に入れる方法があります」
「「「!?」」」
「力が……欲しいか……」
「「「欲しい!!」」」
「――くれてやる!」
そうして私は、新たに3人の従魔を手に入れた。