世界の人口80億人中の20億人。つまり1/4の人々は日常的に安全な飲料水を手に入れることができていないという事実をあなたは知っているだろうか。
「ちょっとさ、“人口ポールシフト”をやってやろうかと思うのだが」
「なんじゃい。その“人口ポールシフト”というのは?」
地神は白く長いあごひげをいじりながら水神に尋ねる。
「教えてほしいか?」
丸顔の水神がもったいぶった言い方をする。水神と地神は、いわば
「
「仕方がない。
「あんたの説明、
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お母さん、水が出ないよ」
子供は洗面台にある水道の蛇口をのぞきこんだ。
「あら、どうしたのかしら?」
不審に思った母親が水道のバルブを開け閉めしている。
「おい、テレビを観てみろ!」
居間で新聞を読んでいた父親が大きな声を上げた。
“臨時ニュースを申し上げます。
現在日本にお住まいの全家庭の水道が断水しております。パニックにならず、落ち着いて行動してください。
なお、昨日まで飲料水が確保できていなかったバングラデシュやエチオピアなどの人々が、豊富な飲料水を確保できるようになったと発表されました。現地の子供達は、これで水汲みをする必要がなくなったと、まるで
「お父さん、午後から給水車が出るそうよ」と、母親が言う。地区のLINEグループからメールが入ったらしい。
「水を差すようだが、きっと焼石に水だろうよ」父親は肩をすくめる。「水源がないからすぐに枯れてしまうさ」
「そんなこと言ったってはじまらないでしょ。とにかく生きて行くには水が必要なのよ」
「わかった、もはや
しかし事態は父親の言う通りに進んだ。給水はすぐに行き詰まり、世界的な水の争奪戦が始まったのである。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「ひどいもんじゃな。あちこちで戦争が始まったではないか。
下界を見下ろしながら、地神が嘆き悲しんだ。
「少し
さすがの水神もこの惨状にはいささかやり過ぎたと反省しているようだ。
「まあ、
と、地神は水神をなぐさめる。
「うむ、それもいささか
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「人間というのは
水神と地神も心そこ感服した。たしかに水星に移住するのは