「教授はUFO現象をどう考えていらっしゃいますか?」
ここは大学のゼミ室である。教授と学生がふたりで顔を突き合わせて話し合いをしている。
「アメリカでは、とうとう政府がUFOの存在を認めたそうですね」と学生が言う。
「うむ。あれは衝撃的なニュースだったな」教授は腕を組みながら回想している。「きみはあれを見てどう思ったのかね」
「たしかに未確認の飛行体がいたことは確かです。でもぼくは必ずしもあれが宇宙人の乗り物だとは考えていません」
「ほう。と言うと?」
「人間が乗っているのだと思います。あるいは無人で動かしているか」
「なるほど。わたしはそうは思わんね。あれは地球外生命体のなせる業だと考えるよ」
「どうしてでしょうか」
「あんな動きをして飛んでいたら、人間なんてすぐに酔ってしまうに違いない」
「そこは科学の力でなんとかなるのではないでしょうか」
「あり得んだろう。あのスピードで直角に曲がったりしたら首がへし折れるよ」
「そんなものですかね。もしかしたらまったく違う物体を、単に我々がUFOと見間違えている可能性はないでしょうか」
「世の中のUFO騒動のほとんどが見間違いだろうね。遠くの街の灯りとか、ガラスに映った蛍光灯だとか、はたまた灰皿を吊るしてUFOに見せかけたとか」
「ぼくは宇宙人がこの広い宇宙の中で、わざわざこんなちっぽけな地球に来る意義がわかりません」
「きみだったらどういう意義が考えられるのかね」
「しいて答えるならば、核戦争で地球が破壊されて宇宙のバランスが崩れることを懸念しているとか。まあSF小説によく出てくる話ではありますが」
「・・・・・・そうだな。きみの考えは正しいと思うよ。しかし宇宙人に訊かなければ本当のところはわからないだろうがな」
「宇宙人がこの世にいたらの話ですから、尋ねようもないです」
「ほんとうにそう思うのかね」
「もちろんですよ」
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ふたりの議論は結論が出ないまま終わった。
学生が部屋を出て行く。ひとりになった教授はため息をついて仮面を脱いだ。そう、教授は宇宙人が人間に成りすましていたのだった。
廊下に出ると学生は肩をすくめた。学生は未来からタイムマシンでやってきた未来人だったのである。