「この宇宙ステーションは我々がいただいた」
非常事態である。全身緑色の宇宙人にスペースコロニーが乗っ取られてしまったのだ。
乗組員たちは手足を縛られて一カ所に集められていた。
「我々の基地を乗っ取ってどうするつもりだ」と隊長が宇宙人を睨みつけて言った。
宇宙人はニヤリと笑って答えた。
「知れたことよ。ここをキー・ステーションにして、お前たちの地球を征服するのさ」
「なんだと。どうしてそんなことをするんだ!」
「簡単なことさ。お前たち地球人は科学を間違った方向に使ってしまったからだよ」
「なにを間違ったと言うんだ」
宇宙人がゆっくりと隊員たちを眺めまわした。
「宇宙では地球のことをなんと呼んでいるか知っているか」
「そんなことは知らん!」
「宇宙の掃き溜め。野蛮人のトイレ。愚か者の監獄」
「言いたいことを言いやがって。お前たちの勝手にはさせないぞ」
「地球人にいったい何が出来る。防御システムはすべてこちらが掌握した。手も足も出まい」
このステーションには80人の隊員が働いていた。隊長は隊員達全員を見回した。
「よし・・・・・・最後の手段だ。みんな覚悟はいいか」
80人の隊員がこっくりと肯いた。
「おい。お前、何をするつもりだ」
宇宙人の表情がにわかに険しさを増した。
「貴様、手も足も出まいと言ったな。手も足も出なくても、おれたちにはこれなら出せるんだ。3、2、1、発射!」
そのとき乗組員が全員、それまでガマンしていた体内のガスを一斉に放出した。
「な・・・・・・なにを」宇宙人の表情が歪んだ。
次の瞬間、宇宙ステーションは大爆発を起こした。水素、メタン、窒素、二酸化炭素、酸素、それに硫化水素でできたそのガスは、宇宙ステーションを破壊するのに十分な威力を持っていたのである。
かくして、宇宙人の地球侵略は一種独特な臭いとともに完全に終りを告げたのであった。