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宇宙の音

「確かに聴こえたんです」

「船長。きみは疲れているのだ。家に帰って少し休みたまえ」

「でも、たしかにあれは何かのうめき声でした。宇宙には得体のしれない何かがいるんじゃないでしょうか」

 宇宙探索から地球に帰還した乗組員が、指令室に報告をしに来ていた。

「疲れた時には山にでも登るといいぞ。自然の音は心を安らげてくれる。小川のせせらぎ、鳥のさえずり。そうだ、海でさざ波の音を聴くのもいい・・・・・・どれもアルファ波が出ているそうだからな」

「しかし室長。あれは明らかに不気味なうめき声でした」

「もういい!いいか船長。音というのは空気が振動するから起きるのだ。空気のない宇宙では音など起きようがないではないか。わかったらさっさと家に帰りなさい」

 船長はまだ何か言いたげだったが、最後には首をうなだれて指令室を出て行った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 後に残されたのは室長と事務官のふたりだけだった。

「室長。船長は本当に何か聴こえたのでしょうか」

「聴こえたさ」

「え?」

「あのときおれはマイクのスイッチを切り忘れていた」

「・・・・・・といいますと」

「おれはあのとき上機嫌でアメリカ国家を歌っていたんだよ。それをあの野郎、何かのうめき声だと抜かしやがったんだ!」

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