「あれなんて言ったっけ?」
料理好きを自慢する男と食事をした。
「あれって」
「ほら、あれだよあれ。サラダ。イタリアの。なんかチーズっぽくて、クルトンとかのってるやつ」
「シェフのおすすめサラダ?」
「もっと偉いひとの名前がついているやつさ」
「人名?」
「ほら、あのローマの」
「・・・・・・まさかシーザーとか言うんじゃないだろうね」
「そう!それ、シーザーサラダ」
「言っとくけどあのシーザーは、ローマ帝国の将軍カエサルとは何の関係もないんだよ」
「カエサル?」
「Caesarを英語で読むとシーザーになるんだよ」
「へえそうなんだ」
「シーザーサラダのシーザーは、1924年にメキシコにある『シーザーズプレイス』というホテルのオーナー、シーザー・カルディーニが作ったサラダなんだ」
「ほんとうに?」
「あり合わせの材料にパルメザンチーズとクルトンを合わせて出したら大評判になったんだそうだ」
「マジか。料理愛好家のぼくとして恥ずかしい限りだ。頭を丸めて出直してくるよ」
「あ、それは正解だね。シーザーは髪の毛が薄かったから、坊主頭のことを“シーザーカット”って言うんだってよ」