杉村行俊
歴史・時代外国歴史
2024年12月06日
公開日
19,249文字
連載中
第一話 マルコポーロは東洋に黄金の国があることを訊き、東洋見聞録を発刊するまえに自国の軍隊で金を搾取してしまおうと考えた。ところがマルコポーロたちがそこで見たのは想像を絶するものであった。
第二話 世界初の有人飛行を成し遂げた人物の話。そこには意外な事実が隠されていた。
第三話 河川の氾濫で行く手を阻まれた諸葛孔明は、竜神へのいけにえの生首の代わりに肉まんをお供えることにする。ある日孔明が見回りに来てみると、そこで意外な光景を目の当たりにすることになる。
第四話 若くして一家の大黒柱にさせられてしまったベートーヴェンは、次第に変人、無礼者、非常識、無精者などと言われるようになってしまう。彼の才能とは裏腹に心は閉ざされていってしまうのだった。
第五話 自動車整備士をやめた主人公は、母親の営む女性用下着の販売セールスマンとなってしまう。ある日ぼんやり海を見ていると、彼の頭に突飛なアイデアが浮かび上がるのだった。
第六話 ジョンレノンを暗殺しようとした犯人には小人たちが見えていた。そして彼らは暗殺の真の目的を見抜いていた。
第七話 ズットナーは第五回ノーベル平和賞を授与された。でもこれはもともとズットナーのために作られた賞だったのだ。
第八話 ゴッホは芸術家を集めて真の芸術を追究しようとしていた。ゴッホの死には自殺説、他殺説があるが、真実は少し違うところにあった。
黄金の国
「本当にそんな国があるのですか?」
イタリア商人マルコ・ポーロは目を見開いた。
「本当ですとも。その国の名は“ジパング”といいます」
中国人の李は小さな声でささやいた。
「なにしろ宮殿や民家が、黄金で出来ているそうですよ」
「その話、わたしが『東方見聞録』に書くまでは他言しないでいただきたい」
そう言うとマルコ・ポーロは李に金銭の入った包みをそっと渡したのであった。
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その年の暮れ、イタリアは“ジパング”に向けて大船団を集結させた。旅行記『東方見聞録』が出回る前に、ゴソッと大量の黄金を独り占めするのが目的である。
「商人マルコよ。本当にあるのだろうな。その“黄金の宮殿”というのは!」
舵をとっていた船長がマルコ・ポーロに向かってそう叫ぶ。
「“中尊寺”というのだそうです。ジパングの“イワテ”という東北にある寺だということです」
船長は大きくうなずき、船団をジパングの北東に向けて速度を上げさせた。
しかし当時の海図はいい加減であった。大船団が着岸したのは当時の“イワテ”ではなく、“アキタ”なのであった。
すでに夜も更けている。船団からイタリア軍が続々と上陸した。
「第一師団前へ!」
身を低くして単式銃を抱えたイタリア軍が一列に行進していく。
「全軍ふせろ!」
その時、松明を手にした集団が彼らの前を横切ったのである。その姿を目の当たりにして、イタリア軍は一人残らず震え上がってしまった。鬼の集団であった。手には大きな出刃包丁を持ち、髪が逆立ち、大きな口からは鋭い牙がむき出しになっていた。
「泣く子は居ねがあ!悪い子は居ねがあ!」
狂ったように叫んで辺りを睥睨しながら練り歩いている姿は、あたかも地獄から這い上がった悪魔の宴のようである。
腰を抜かしたイタリア軍は、その場で祖国イタリアへ一斉退却を余儀なくされた。
その後「東方見聞録」には黄金の国ジパングの注釈が補足された。
“気をつけよ。黄金の国ジパングには、人喰い習慣のある人種が住んでいる。”
その後しばらくは、日本に近づく者が現れなかったという。