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追放された聖女は第二王子と下剋上を目指します!
追放された聖女は第二王子と下剋上を目指します!
初瀬叶
異世界恋愛ロマファン
2024年12月05日
公開日
3万字
連載中
マディソン王国では聖女の力が弱まると魔物が暴れ出し、魔王の封印が解けてしまう。魔物からこの国を守り、魔王の封印を改める為、国は急いで代替わりの聖女を選ぶ聖女試験を行うことになった。
主人公のクラリスは聖なる力を持つ聖女候補としてその試験に挑む。そこでライバルに陥れられて……。

※私の頭の中の異世界のお話です。史実には則っておりませんのでご了承下さい

第1話

クラリス、最後まで頑張ってね!応援してるから!」

昔、孤児院で一緒だったジェーンが私の手を強く握る。また一人、この聖女試験から姿を消すことになった。


「うーん……あんまり自信はないけど頑張るわ」


「弱気なクラリスなんて、貴女らしくないじゃない。大丈夫、力なら貴女が一番よ」


「試験が夜ならね。昼だと分が悪いし、その上聖女試験に立ち振舞いまで加点されるのってなんでなんだろ」

私が口を尖らせると、


「まぁ、仕方ないよね。この国の聖女になれば王子様と結婚する確率は高いもん。特に今の王子二人は婚約者すら決めていないし」

とジェーンが肩をすくめた。


「現聖女様である王太后様もお歳だからね。そろそろ代替わりかも……って言われたら婚約者決めるのも躊躇うよ」


我が王国では、聖女の力が弱まると、魔物が暴れ出し、人々を襲ってしまう。これは魔王の封印の威力が弱まるからだが、そのまま聖女の力が失われると、魔王が復活。この国は大混乱に陥る事になる。

それを未然に防ぐ為には、早急に新しい聖女を決める必要があった。この国はそうやって何百年も魔王に対抗出来る聖女を輩出してきたのだ。


『聖女』

この国には稀に聖なる力を持った女児が生まれる。力の差はあれど、聖なる力を持った女児は『聖女候補』として国から保護を受ける事になっている。


「でもさぁ、私達みたいな孤児出身の『なんちゃって令嬢』にはそれって不利だよね」

今度はジェーンが口を尖らせた。

聖なる力を持った女児には身体の何処かに聖なる印が現れる。花の形をしたその印は、人によって千差万別だ。ちなみに私の花は『月下美人』

夜にならないと力を100%解放出来ない私にお似合いと言えるだろう。


「だよね。私なんて印が現れたのが十二歳の頃だから、令嬢らしく振る舞えったって今更難しいもん」


私の答えに、

「でも、クラリスは侯爵夫妻が良い人で良かったよね。私なんて、試験ダメだったって言ったら、家を追い出されるかも」


「もう伯爵様には一報が入ってるだろうしね」


「帰ったら既に私の部屋無いかもなぁ……」

ジェーンはふざけながらも真剣に心配している様だった。彼女の養父はかなりの野心家だし。


『聖女保護プログラム』

聖なる印が現れた段階で国は聖女候補としてその女児が平民であった場合、貴族の養女とするのだが、これも聖女となった女性のほとんどが王族と結婚した事に由来している。

歴史で習っただけの知識だが、初代聖女様を見初めた当時の王は、王妃を殺して聖女を娶ったらしい。

だが、初代聖女は平民で、それはそれは周りが反対。しかも殺された王妃は他国の王女だったから、さぁ、大変!ってな理由で、今はそんな悲劇を繰り返さない様な法整備が成されたという事だ。

ちなみに、殺された王妃の出身国とは未だ犬猿の仲だという。……まぁ、当たり前か。


「大丈夫だよ。聖女になれなくても、聖なる力を持った女性は保護され続けるんだから。ジェーンが犯罪でも犯さない限り、追い出される事はないわよ」


「肩身が狭くなる事は間違いないけどね」

ジェーンは本気で伯爵家に帰りたくなさそうな素振りを見せたが、今更平民に戻る事も無理なので、渋々教会を出て行った。



私はジェーンを見送り、充てがわれた自分の部屋へと戻る。

すると帰るなり声を掛けられた。

「クラリス様、明日はダンスの試験ですが?」


「ねぇ、アメリ。今って魔物が各地方で目撃されているのよね?人も襲われてるのよね?それなのに私達は優雅にダンス?おかしいと思わない?」

私は侯爵家から連れてきた自分の侍女に愚痴を言う。ダンスは苦手だ。


「文句をいくら言ったってダンスは上手くなりませんよ。さぁ、練習いたしましょうね」

アメリは私の肩に手を置いてニッコリと微笑んだ。笑顔が怖い。


「分かったわよ!やれば良いんでしょ!」

渋々私は椅子から立ち上がった。


「王妃になったら、ダンスは必須ですよ」


「アメリ……まだ聖女に決まった訳でも、王子の婚約者になった訳でもないわよ……」


「良いんですか?ウィリアム様をあの女狐に盗られても!」


「ア、 アメリ!!大きな声でそんな事言わないでよ!」

私は顔を赤くして俯いた。


ちなみに、見た目だけなら私の方が『女狐』と言われかねない容姿をしている。

銀に近いシルバープロンドに、薄いグレーの瞳。大きな目は少し釣り上がっていて、一見冷たそうに見える。それが私だ。

だがアメリの言うところの女狐……それはアナベル・ローナン公爵令嬢の事だと私も分かっている。

分かってはいるが、あっちは公爵令嬢、こっちはなんちゃって侯爵令嬢だ。誰かに聞こえたら失礼では済まされない。


「聖なる力だけでこの試験の合否が決まるなら、間違いなくお嬢様が聖女に相応しいんですから!さぁ、自信持ってウィリアム様のハートを射止めましょう!!」

何故か私以上に張り切っているアメリに背中を叩かれ、私は嫌々ながらダンスレッスンへと向かったのだった。





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