今年もクリスマスイブがやってきた。
これは聖なる夜の出来事である。
わたしはサンタクロースの衣装を身にまとい、音を立てないよう、細心の注意を払って息子の部屋に入って行った。息子はベッドでぐっすり眠っている・・・・・・ように見えた。
「サンタさん」
どうやら息子は眠っているふりをしていただけだったようだ。わたしは驚いて声をあげそうになったが、なんとか
「本当はサンタさんなんていないんでしょう。実はパパがサンタさんに化けてるんだよね」
息子のかわいい顔をのぞき込む。そしてわたしは目だけでにっこり笑うと人差し指を左右に振った。
「そんなことないよ」白い髭が左右に揺れる。「わたしは本物のサンタクロースなんだ」
わたしはそっと息子のひたいに手を当てる。そして小さな声で言った。
「メリークリスマス。かわいい坊や・・・・・・」
枕元にそっとプレゼントを置くと、息子は小さな声でひとこと「ありがとう」とつぶやいた。
わたしはそっと息子の頭を
息子が静かに眠りにつくと、わたしは先ほどと同じように静かに部屋を出て行った。
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リビングに戻ると、妻はロッキングチェアで編み物をしていた。
「あなた」妻が目に涙をためている。「今年もあの子に会えて?」
「ああ」
わたしも胸が熱くなっていた。わたしは息子の髪を触った掌で、彼女の両手を優しく包みこんだ。
「今年も優しくていい子だったよ」
「そう・・・・・・よかったわね」
妻は嬉しそうに微笑んだ。
聖なる夜・・・・・・なぜかサンタに扮したわたしにだけ、病気で亡くなったはずの息子が姿を見せてくれるのであった。