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聖なる夜

 今年もクリスマスイブがやってきた。

 これは聖なる夜の出来事である。


 わたしはサンタクロースの衣装を身にまとい、音を立てないよう、細心の注意を払って息子の部屋に入って行った。息子はベッドでぐっすり眠っている・・・・・・ように見えた。

「サンタさん」

 どうやら息子は眠っているふりをしていただけだったようだ。わたしは驚いて声をあげそうになったが、なんとかえることに成功した。

「本当はサンタさんなんていないんでしょう。実はパパがサンタさんに化けてるんだよね」

 息子のかわいい顔をのぞき込む。そしてわたしは目だけでにっこり笑うと人差し指を左右に振った。

「そんなことないよ」白い髭が左右に揺れる。「わたしは本物のサンタクロースなんだ」

 わたしはそっと息子のひたいに手を当てる。そして小さな声で言った。

「メリークリスマス。かわいい坊や・・・・・・」

 枕元にそっとプレゼントを置くと、息子は小さな声でひとこと「ありがとう」とつぶやいた。

 わたしはそっと息子の頭をでてあげた。

 息子が静かに眠りにつくと、わたしは先ほどと同じように静かに部屋を出て行った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 リビングに戻ると、妻はロッキングチェアで編み物をしていた。

「あなた」妻が目に涙をためている。「今年もあの子に会えて?」

「ああ」

 わたしも胸が熱くなっていた。わたしは息子の髪を触った掌で、彼女の両手を優しく包みこんだ。

「今年も優しくていい子だったよ」

「そう・・・・・・よかったわね」

 妻は嬉しそうに微笑んだ。

 聖なる夜・・・・・・なぜかサンタに扮したわたしにだけ、病気で亡くなったはずの息子が姿を見せてくれるのであった。

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