「どう思われます?」
ぼくはレントゲン技師である。その日はある患者についてのカンファレンス(会議)を行っていた。
「この女性の患者は肺を患っておりまして」ぼくはモニターに映し出された画像を見せた。「それで、どうにも説明がつかなくて困っているのです」
「ほう」
一同の口から驚きの声が漏れた。
「この影が白いということは、
と、頭の薄い年配の医師が最初に感想を言った。
「肺の下側に影がありませんから、
メガネをかけた秀才医師が言う。
「影が肺の中心から左右に広がって見えます。もしやこれは『バタフライシャドウ』・・・つまり心不全の可能性はないでしょうか」
髪を後ろで束ねた女医が言葉を重ねる。
「たしかに
茶髪の若い女医が意見を発した。「それにしてもこれは・・・・・・なんて言ったらいいのかしら・・・・・・」
ぼくは言った。
「そうですよね・・・・・・」
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患者の町田さんを診察してぼくは驚きを隠せなかった。
「町田さん。正直言って奇跡としか言いようがありません」
「はい?」
「完治しています」
「そうなんですか?」婦人は驚いた顔をしてぼくの顔を見る。
「こんなことってあるんでしょうか。わたしてっきり肺ガンなのかと・・・・・・」
「・・・ですよね。ちょっとこのレントゲン写真を見てください。」
ぼくは初診のときの写真を町田さんに見せて言った。
「あきらかに影が見えます。悪性なのか良性なのかわかりませんが、何かがここにあったはずなのです。それが・・・・・・」
ぼくは先日カンファレンスした時の写真に切り替えた。
「あらまあ」婦人は口に手を当てて画像を食い入るように見ている。「あのひとったら。本当にしょうがない人ね」
「あの・・・・・・」
婦人はにこやかに微笑んだ。
「うちの主人は昔から目立ちたがり屋でしょうがなかったのよ」
「・・・・・・といいますと」
「この、手に見える影、主人のVサインですわ」
「やっぱり」
そう、このレントゲンに映っていたのは亡くなったご主人の心霊写真だったのだ。