気がついたらぼくの左肩には天使が乗っていた。天使はぼくが迷っているとき必ず正しい答えを教えてくれた。
「ありがとう。いつも助かるよ」ぼくがそう言うと、天使はぼくを見てただニンマリと笑うのだった。
ある日ぼくは二人の女性を愛してしまった。どちらがどのぐらい好きかっていうのではなく、どちらも同じぐらいに愛してしまったのだから始末に悪い。
タイプとしては、正反対と言えるだろう。A子はおしとやかでおとなしく、清楚な感じの女性であるが、B美は明るくて活発、太陽のように暖かみのある女性だった。
こうなったら天使に判断をゆだねるしかあるまい。
ぼくは天使に訊ねた。
「ねえ、ぼくはどっちの女性を伴侶に選べばいいんだろう」
天使はしばらく考えていたが首を横に振った。それはどちらもやめろという意味だった。
「ちょっと、それはないんじゃないか。A子もB美もすごく良い娘なんだぜ」
天使はちょっと小首をかしげ、あれにしろと小さく指をさした。
天使の指の先には、C江がいた。ひっそりと道端に咲いている花のように、どことなく寂しい感じがする女性であった。そういえば彼女は、ぼくに対してだけニコリと笑う娘だったのだ。
「まさか」
ぼくがそう言うと、肩の天使は姿を消してしまっていた。「あれ?」
結局ぼくはC江と結婚することになった。そして今では別の天使がひとりいる。
「ねえパパ。ママのこと愛してる?」天使が耳元でささやく「ママとあたしとどっちが好きなの」