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第55話 【重要】VRMMORPG BulletSメンテナンスとゲーム内ゴールドの扱いについてのお知らせ

 第6回VRMMORPG『BulletS RECOIL』が終了し、順位は下から数えたほうが早い10位……それを確認して、オレもログオフした。

 ギアを外し、先にログオフした2人がいるリビングへ向かう。


 秀明は何やら考え込んでいるようで、梓ちゃんが作ってくれたツナのカナッペをつまみながら、缶ビールをがぶ飲みしている。

 梓ちゃんは秀明の隣に座り、しんみりとしている。

 オレも冷蔵庫からビールを持ってきて、2人の前に腰かけ、一口飲んでからカナッペをいただく。ツナマヨに、にんにくの風味が効いていて、うまい。


 リーダーとして、何か言わなくちゃな。

「負けちゃったね……『鷹の目』に頼り切っていたオレが悪かった。ごめん。戦闘中、すぐに崔さんに連絡しようかとも思ったけど、いろいろ考えたんだ。でさ、オレたちが負けると一番得をするのは誰だろう? って。答えは――」

「運営」と秀明。

「そう。だから今回、運営はオレたちの力を削いでまで、他のプレイヤーに優勝のチャンスを与えたんだ。実際、『鷹の目』は昨日のPvPではちゃんと使えていたからね。これで、専属チームじゃなくても優勝の可能性があるってプレイヤーに印象づけた。それで、プレイヤー数も増える。そろそろ、プレイヤーのゴールドをオンライン通貨に換金できる計画も始まるんじゃないかな? もうあれから半年近く経つし」

「そういやそんなこと、プロ契約するときに部長だか社長が言ってたな」

「でしょ? で、今日の負けは負けとして認めてさ、他のチームの順位だけでもちゃんと見とこうよ。次回の参考にもなるし」


「ああ、そうだな……」

 渋々、秀明も同意した。


 オレは自室のノートPCをリビングに持ってきて、運営のユーザーページにログオン――「優勝はチームMP。たぶんプロの戦闘員集団か何かだろうね。準優勝と3位は知らないチームだ。Redたち、つまりカイとユーサクたちは意外にも4位だった。惜しかったね〜 あとでシステムログをちゃんと確認しなきゃね」

「それだけ他のチームも力をつけてきたんだろうな」

 秀明が苦虫を噛んだような顔をして言う。


「で、話なんだけどさ。今回の負けを受けて、チームの強化をしたいと思ってる。具体的には、メンバーの増強だね」

「ああ」

「で、考えたメンバーなんだけどさ……」オレはちょっと言いよどむ。


「なんだよ、忍。言ってみ?」

「あ〜うん。みんなには悪いと思うんだけどさ、カイ・ユーサクと、M・R……あの4人、特にRedなんだけど、一緒に戦いたいと思うんだよね」

「あ〜なるほどな。おまえ、Redとは気が合いそうだもんな。同じ……何だっけ? ヘカート使いだし、それに『鷹の目』仲間だもんな」

「そ、そんなんじゃないし。あいつ、マジですご腕だよ。もしオレが『鷹の目』を使えなくても、作戦的に有利じゃん?」

「わ、私はカイって人とは一緒に戦いたくないです〜 Redさんは……ちょっと怖そうですけど、悪い人じゃないな〜って」

「俺は反対だ。……が、ここはリーダーの忍にまかせる」

「そっか……。じゃ、カイ・ユーサクとは組まないで、M・Rと組む。このことをM・Rと、運営に連絡してみるよ」

「ああ。リーダーがそう決めたなら、付いて行くぜ」

「はい、私も異議ないです〜」

「じゃ、運営とRedに連絡を……あ、運営から最新のお知らせも上がってる――メンテナンスとかゴールドの扱いとか〜って」

「ん? なんだって?」


『Title:【重要】VRMMORPG BulletSメンテナンスとゲーム内ゴールドの扱いについてのお知らせ


いつも本VRMMORPG BulletSをお楽しみいただきありがとうございます。


明日XX月XX日00時00分よりXX月XX日23時59分の7日間に渡り、大規模メンテナンス作業を行います。

メンテナンス期間中は、VRMMORPG BulletS及び本ホームページへのログオンは行えず、プレイヤー様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。


主なメンテナンス内容は、下記となります。

 1.サーバー移転による動作確認

 2.ゲーム内ゴールドの換金確認

 3.その他軽微な不具合修正


今回のメンテナンスは、サーバーを日本からUS国LA州へ移転する最終確認作業となります。サーバー移転と同時に、弊社アストラル・ゲームス本社もUS国LA州に移転し、所在地の登記を行います。

メンテナンス後は、ゲーム内ゴールドの弊社指定の電子マネーへの交換、またはアストラルバンク口座への振込が可能となります。

使用可能な電子マネーと交換レートにつきましては、メンテナンス後に掲載いたしますので、本ホームページのFAQをご覧ください。

現在、リアルマネートレードを取り締まる法律は日本にはございませんが、VRMMORPG BulletSを含む多くのゲームが利用規約の中でゲーム内通貨やアイテム・キャラクター・アカウントなどの金銭による売買を禁じています。

これは日本では賭博行為が禁止されており、ゴールドの交換は賭博罪に当たる可能性もあるため、日本国外への移転となりました次第です。


今後とも、本VRMMORPG BulletSをよろしくお願いいたします。』


「あ〜これ、さっき言ってたことが始まるみたい」と、2人に画面を見せる。

「なるほどな。俺たち結構ゴールド貯まってるよな。毎月のプロ契約報酬もあるし」

「ま、1週間後が楽しみだね」

「負けちゃっても……報酬は頂けるんですかね〜? 毎月のって」と梓ちゃんが不安げに言う。

「あの連中なら、罰金取りかねねぇな」相変わらずの秀明。

「えぇ〜?」

「契約にはそんなこと書いてないし〜」

「そらそうだな」


「このゲーム、運営としてはあんまり儲かってなさそうだし、一般的なソーシャルゲームに比べてカジノゲームとかは、1人あたりの売り上げが40パーセントも高いって調査結果、どっかで見た気がするから、換金できるようになればユーザーも増えるんじゃない?」

「さすが、株やってる忍はちがうな」

「株やってなくても、それぐらい調べりゃわかるっての」

 相変わらず脳筋な発言をする秀明に言ってやる。


「じゃ、今日は負けたことは忘れて、ここまでにしてさ、しばらく……メンテ明けまでお休みね!」

「だな」

「は〜い。じゃ忍さん、明日また女の子デートしましょ?」

「なんでだよ〜 秀明とデートすればいいじゃん! 秀明! いい加減梓ちゃんのこと考えてやれよな!」

「お、おう……」


 ◇


 1週間後、メンテ明けの月曜22時すぎ――ユーザーページに行くと、『404. That’s an error. The requested URL was not found on this server. That’s all we know.』の表示……。


「えぇ〜〜〜? ログオンできない〜〜〜!

 今度はVRMMORPG BulletSがどっか行っちゃったよ〜!」


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