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第30話

14発の銃弾を撃ち込んだが、奴はまったくの無傷である。


何かが奴自身の前で防御壁となっていた。


念動力の大きさや技量にもよるだろうが、もしかすると大口径ライフル弾やロケットランチャーでも弾くのかもしれない。


過去に敵となった武装集団がいたとして、これでは悪夢でしかないだろう。


しかし、俺も能力者である。


どのような能力なのかを分析することができた。


奴は能力で防御壁を展開できる。


最初は弾丸をサイコキネシスで弾いているのかと思ったが、連射された際に奴の目が銃口や俺の肩を追っているのがわかった。弾丸を一弾ずつ弾くなら、もっと視線移動は多くなるはずだ。すなわち、射線を読んである程度の大きさの壁を作り、防御していると判断した。


防御壁といっても目に見えるものではない。となると、一番考えられる奴の能力は原子を操ることだろう。


原子というのは大気中にも存在する。そして、その中には金属系のものもあるため、それを活用しているのだと思った。


さて、厄介なのはそれをどうかいくぐって攻撃を当てるかである。


銃の連射はことごとく弾かれてしまった。これをさらなる速射で破壊しようとしても、同じ角度による射線では難しいだろう。


「無駄だ。もう一度言う。投降したまえ。」


「断る。」


普通に考えれば、能力による攻撃術を持たない俺の方が圧倒的に不利である。


ただ、それでも相手が慎重にかまえているのは、俺に隠し球があるのではないかと警戒しているからだ。


俺は再び横へと移動しながら連射を行った。


今度は三発ずつ慎重に狙いをつけながら撃つ。相手の顔が失意で歪んでいくのを見て、最初から大した警戒心を持っていなかったのだと感じた。


不意にヒリヒリするような感覚を得る。いつも危機を察知した時に感じるものだ。


刹那、走り高跳びのように体を地面と平行になるよう跳躍させた。無思考による反射行動だ。


宙を舞っている間に、体の下の空間が圧縮されたかのような異変を伝えてくる。目に見えるものではない。念動力による独特の作用を感じた。


着地して威嚇のための射撃を行いながら身を躍らせる。


またもや直前にいた空間が圧縮された。


おそらく、奴は防御壁と同じ様なものを对で作って空間を圧縮しているのだろう。不可視の壁で圧死させようとしているといった方が正しいかもしれない。


間を置かず、奴の眉間に向けて引き金を絞る。


奴の眼前で弾丸が弾かれたのが見えた。


そして、その奥にある顔には笑みが広がっている。


自分の能力を目のあたりにしても、いつまでも銃で応戦しているようでは、隠し球など持っていないと言っているようなものだ。そう感じているのだろう。それほど銃撃では攻略が難しい能力なのである。





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