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第26話

通路は薄暗いが、何をされたかはすぐに把握したようだ。


いい動きをする。


味方が殴られたことに気づき、すぐに戦闘態勢を取ろうとしたことは賞賛できた。しかし、油断しすぎた所がこの結果を招いたのだ。


精神的に余裕がありそうな方を先に叩くのはセオリーである。


ボヤいていた奴は、それだけメンタルも弱かったりすると経験則でわかっていた。


「貴様・・・」


喉に手刀を入れた。


顎を引き、巧みに防いでくる


間を与えずに股間に膝を入れるが、そちらも膝を上げてガードされた。


メンタルが弱いというのは見くびり過ぎたかもしれない。


銃を持つ方の手首を掴まれた。


手首を回転させ、相手の肘に自らの肘を近づけて拘束を外す。


クラヴマガでエルボーキッスと呼ばれる手法で、テコの原理を利用したものだ。


クラヴマガとは日本では護身術の色合いが強いが、イスラエルの近接格闘術である。


開放された手に持つ銃を再び相手に向けた。


男はその銃を掴もうとしてきたが、こちらはフェイクである。意識が銃に向かえば隙ができやすい。


左手で掴みかかってきた腕を解くフリをして、コメカミに肘を入れる。


浅く入ったため、相手は一歩下がって間合いを取ろうとしてきた。


そこに銃を握った右手を上から打ちつける。


両手をクロスにして、打ち下ろした腕を防ごうと前に出て来た相手の腹に右膝を入れた。


それほど深くはないが、一瞬動きを止めた男の顎を掌底で叩く。糸が切れた操り人形のように膝を落とした相手は、そのまま意識を落としたようだ。


装備品を漁ったが、またスミス&ウェッソン M&Pシールドだった。少し考えた末に、グロック G47を背中側に回して新たに手に入れたスミス&ウェッソン M&Pシールドをベルトのバックル横に差しておく。


弾倉マガジンを抜き取り、男たちがポケットに入れていた結束バンドでそれぞれの手首足首を縛っておいた。


このふたりは能力者ではない。


知っていることを洗いざらい吐かせたい気もしたが、こいつらの正体を知ったところで身の危険が増える気しかしなかった。


余程の切れ者以外は余計なことをしない方がいい。


イギリスの諺に『Cat has nine lives』というのがある。直訳すると猫は9つの命を持つということになるが、その猫すらも好奇心は身を滅ぼすといわれている。


どうにかできるような相手ではないため、大人しくしている方が賢明だろう。





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