目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第25話

スプリンクラーを壊したのは、排水口に水を貯めることで集中升に後から侵入しにくくするためだ。


こういった抜け道が存在することはそれほど知られていないため、ODS社の人間も想定外の脱出経路となる可能性が高かった。


最近の建物なら排水ポンプなどで対策しているのだろうが、古い建物の独特な設備のおかげで助かったといえる。


もし、この先で待ち伏せていた場合は銃撃戦を覚悟するか、最悪の場合は俺の本当の能力を発動するしかなかった。


まあ、あちらもこんな事態に陥るとは考えていなかったからこそ、このような状況になったといえるのだが。


警戒を解くつもりはないが、あまり考え過ぎても仕方がないので気配を探りながら先へと進むことにした。


メンテナンスのためにのみ作られた通路だ。狭く天井も低い。集中枡からどうやって汚泥などを運んでいるのかと思っていると、小さな倉庫のようなものがあり疑問を解消できた。


土砂や砂利を運搬する台車のような物が立てかけてある。大きさはサーフボードほどあって大きい。四隅に取手があるため、そこに汚泥を載せて二人一組で搬送するのだと思えた。


随分とアナログ的なことをするのだなと感じたが、何せ建物が古いのだがらそんなものかもしれない。新しい設備を導入したくても、構造上の問題で建物の強度を落とすわけにもいかず、改装を断念するということも多いと聞く。


定期的に清掃する人も大変だろうなと思っていると、通路の先から話し声が聞こえてきた。


「本当にこんな所にいるんですか?」


「さあな、可能性がある所は虱潰しにしろという指示だから仕方ないだろう。」


ぶつくさとつぶやいている男を、もうひとりがなだめているようだ。


誰かを探しているような会話である。


まあ、十中八九俺のことだろう。


先ほどの台車の影に隠れた。


このまま通り過ぎてから先に進もうかと思ったが、考え直すことにする。


この通路から出た所で他の者と出くわす可能性がないともいえない。後ろから挟撃されないよう、対処しておく方がいいだろう。


ふたりの後方から誰も来ないかを確認し、目の前を通ったタイミングでひとりの後頭部を銃把で殴った。


それに気づいたもうひとりが上着の中に手を入れたが、何かを出す前にこめかみに銃口を突きつける。




コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?