フルメタルジャケットの弾丸だったせいか、着弾した後に跳弾となる。
車のボンネットで弾かれた弾丸が刹那に火花を放った。古い建物のせいか、地下の至る所に照明が行き届かない所があったが、その一瞬で敵の位置が判明する。
すぐに狙いをつけて、そこにいる男の肩を撃ち抜いた。
殺傷沙汰は初めてではないし、銃の扱いもそれなりに身につけている。
表面上、戦闘には向かない能力者の俺にとって、そういった技術は生きるために必要だった。
また嫌な気配を感じた。
視線を彷徨わせることなく、近くにあった車の反対側へとダイブする。ボンネット上で体を滑らせている途中に衝撃波が来た。
車体の片側が少し浮くほどの威力だ。
傾いた車体が俺を弾き飛ばす。
咄嗟にフロントガラス横のAピラーを掴むようにして、体が浮く勢いを殺した。それでもしっかりと掴めるはずもなく、地面に背中から落ちて激痛を感じる。
受け身をとったことで立ち直りは早い。
上体を起こして、車のサイドガラスを銃把で叩き割る。ロックを外して中へと入り、運転席に座った。警報音が鳴っているが無視してブレーキを踏み、左手でインストルメントパネルに触れる。
大抵の車はインストルメントパネルの裏側に、スマートキーからの信号を受け取る受信部があった。能力を使ってその信号を読み取り、プッシュスタートボタンでエンジンをかける。
本来ならばスマートキーがなければエンジンの始動はできず、始動できたとしても車から離れると警告音が鳴り響く。しかし、そこは能力でコンピューターに錯誤を起こさせることで、無理矢理打開してしまう。
シフトをドライブへ入れて、電動パーキングブレーキを解除する。アクセルを踏み込み逃走を計った。
5メートルも進まないうちに横から衝撃波が来る。
生身で動くよりも車内の方が安全だろうと考えたが、その分だけ標的としては大きい。当然、狙われるものだと考えていたのだが、今回の衝撃波はこれまでとは比較にならない威力だった。
一瞬で車が横転し、そのまま車の底面に圧がかかり吹っ飛んだ。
おいおい、どれだけ派手にやらかすんだ。
頭の中ではそう冷静に考え、この後の展開について頭をフル回転させる。
このまま壁に叩きつけられると、ルーフが潰されて圧死するかもしれない。わずかな時間でそう考えてリクライニングレバーを引き、シートの背もたれを倒した。
結果は途中でフロント部分が柱に接触して、車が横倒しになったまま回転するというまさかの事態となる。