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第16話

これが関係のない民間人なら大問題だが、そんなことは気にしていられない。それに、こんなところで身を隠すようにしているのだから、敵かどうかは別として無関係とは考えにくかった。


一般人の場合は事が起こった時に現実味を感じずに棒立ちとなるか、映画の撮影か何かと勘違いして傍観するのが相場である。


しかし、この男は荒事が起こるのを知っていて、身を潜めていたと思えた。


チャコールグレーのスーツを着ているが、上着の脇下あたりが不自然に膨らんでいる。襟元から開くと、中に小型の拳銃がホルスターにおさめられていた。


ナイロン製のショルダーホルスターで、マジックテープで留め具を外すタイプである。


躊躇わずに留め具を外し、銃把を握って確認した。


スミス&ウェッソン M&Pシールド。


海外の司法機関で幅広く採用されているオートマチック拳銃だ。日本ではまだあまり見ないモデルである。


そもそも、銃の流通や所持が厳格化されている日本で、この銃を所持していること事態が不自然といえた。


どうやら、このODS社もまともではないようだ。


警戒しながらゆっくりと移動し、位置を特定されにくいように身を潜める。


スミス&ウェッソン社は、アメリカ最大級の銃器メーカーである。


そのラインナップの中でも、M&Pシールドは小型軽量化とパワフルさを兼ね備えたモデルといえよう。


音があまりしないように弾倉マガジンを取り出し、9mmパラベラム弾が装填されているのを確認する。本来の装弾数は7+1発だが、この銃には4発しか装填されていなかった。スライドを静かに引いてチャンバーチェックを行う。チャンバーとは薬室のことで、弾薬がここに装填されてはじめて機能する。


何発か発射されたということはないだろう。特殊な職業を除き、銃の所持が禁止されている日本では緊急時の威嚇、もしくは応戦用としてこの程度の弾数で事足りると思われているのかもしれない。


この銃は22口径ロングライフル弾から45口径のACP弾まで、6つのバリエーションモデルがあった。その中でも、手にしたのは汎用性の高い9mm弾薬が使用されている。


ただ、汎用性が高いというのも世界的に見た話だ。


銃器に関しても、日本国内ではレアで火力が高過ぎるモデルといえるだろう。反社会的組織などでは高価で流通量も極端に少ないため、手に入れることは困難だといえた。




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