間をおかず、第二波が来た。
横っ飛びで衝撃波をかわすが、床で受身を取るのにも痛みが走る。映画などでは何事もなかったかのように逃げ惑うが、現実では擦り傷や打撲などで痛みが蓄積してそのうち動けなくなってしまうものだ。アドレナリンが沸騰している時ならともかく、恐怖や不安に苛まれている時にはただ痛いだけである。
すぐに立ち上がって全力で走った。
敵の能力者が連続して何発撃てるかは未知数だが、ただ逃げるだけでは助からないだろう。
そいつがいると思しい所へと向かって、ジグザグを描きながら疾走する。
気配がぼやけた感じで敵の正確な位置はわからない。能力者同士は互いの存在を知覚するものだか、それほど珍しい事象でもなかった。
衝撃波を操るということは、空間や空気などに干渉できる能力を有しているということだ。例えるなら、蜃気楼のように存在をぼかす手段も使える可能性がある。また、それ以外にも、簡単な能力の行使や気配を隠蔽できる能力も存在した。
総じて、敵の詳細位置を把握できなくとも焦る必要はない。気配を隠蔽して遠距離からの攻撃を組み合わせる手法なら、銃を使って暗殺や戦闘行為を行う者と何ら変わりはないといえよう。
俺個人としては、そういった手合いとのやり取りは慣れていた。
広い駐車場だが、等間隔で柱が配置されている。壁際以外にも駐車スペースが確保されているため、柱や車の影など身を隠すスペースは十分にあった。
逆を言えば、こちらが身を隠すスペースもそれなりにあるということだ。
車が並ぶ位置に体を滑り込ませる。
車と車の狭い空間に侵入した拍子に、そこにいた奴と目が合った。
刹那の時間、硬直した相手の鼻に拳を見舞う。
ジャブ程度の軽いパンチだが、瞬間的に視界を奪うのには有効打となる。
そのままもう一方の手で相手の側頭部を持ち、横に止められている車のドアに叩きつけた。
ドアが凹み、それなりの音が鳴ったが、最近の車はフレーム技術の向上と軽量化のために、それほどドアの鉄板に強度はない。
側頭部への衝撃が脳震盪を引き起こしたのかはわからないが、念の為に白目を剥いている男の頭をもう一度車にぶつけておいた。