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第14話

周波数はあくまで機械で拾うチャンネルでしかない。直接言語を把握されてしまえば、セキュリティもクソもないのである。


また、あの白人男性が電気を操る能力者だった場合、意識を取り戻して電気信号でこちらの言葉を解するという可能性もあった。


エレベーターが目的のフロアに到着する。


扉がゆっくりと開くのを警戒しながら待ったが、すぐに後悔した。


あの白人男性が気絶する前に連絡していたのか、地下駐車場には他の者が先回りしていたようだ。


状況にもよるが、能力者同士は互いの存在を知覚する。


反発するような感覚を覚える場合もあれば、逆に共鳴するようなこともあった。おそらく、能力の相性か何かだろうとは思うが、今はそんなことを考えている暇はない。


すぐに『閉』ボタンを押すが、一度扉が開ききらないと機能しないようだ


気圧が急激に圧縮されるような感覚が伝わってくる。


嫌な感じがした。


何も考えずに体が動いたのは、長年に渡って通っていた習い事のおかげだろうか。 


兎にも角にも跳躍して側壁を蹴り、三角跳びの要領で床と平行に近い体勢となって、天井近くまで跳び上がっていた。


その真下を強烈な衝撃波が襲う。


エレベーター内の壁が瞬間的に見えない力で押されて軋んだ。


壁が変形するレベルの強さだと、エレベーターのセキュリティが反応する可能性があるため加減したのだろう。それでも、人体に当たれば脳震盪を起こすくらいの強さはあったと思える。


着地する際に体を前に投げ出して、エレベーターから外へと出た。そのまま能力者の気配がしない方向を選んで全力で駆け出そうする。


咄嗟に別の気配を感じて警戒を高めた。


足もとをすくおうとする攻撃がくる。


それを軽く前方に跳ぶことで避け、同時に視界に入った相手の胸ぐらを掴んだ。


跳躍の勢いと体のひねりでバランスを崩させ、そのまま回転運動で生まれる遠心力を使って投げ捨てる。


能力者以外の人間も配置されていたようだ。


戦闘特化の人員というわけではないのだろうが、荒事に慣れた手合いだった。


起き上がるモーションから、転がった相手の顎に蹴りを入れる。


他に何人が配置されているかはわからないが、とりあえずの脅威は能力者だった。


斜め前方から、また先ほどの能力者の気配がする。


咄嗟に意識を奪った男の体を引きずり起こして盾がわりにした。


またもや嫌な感じがしたため、男の体を突き飛ばして自らは横へと跳ぶ。


次に放たれた衝撃波は強烈だった。


盾がわりに突き飛ばした男の体は、宙に浮かぶと同時に4〜5メートル先にあった壁際の車の方へと吹っ飛ばされたのだ。


衝突によってボンネットが大きく凹み、フロントガラスは蜘蛛の巣状にひび割れてしまった。


誰の車かは知らないがご愁傷様である。というか、新車っぽいので持ち主は泣くだろう。


叩きつけられた男は口から血を吐いているため、内臓を損傷しているかもしれない。エレベーターの時とは違って容赦なしのようだ。




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