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第12話

各階にゴミの投入口が設置されている。


先ほど俺が身を投じたのもその一つだ。


手足の摩擦で緩まった落下速度は、少しがんばれば停止することも可能なほどにまでなっている。


少し先に見える投入口の扉に片手の指をかけた。


投入口の蓋はメンテナンス用なのか、内部からも開けられるように小さな取手が備わっている。指を脱臼しないように、細心の注意を払いながらそこに手をかけた。


背中と足を突っ張って体をその場に留める。裏側には先ほどと同じく養生テープが貼られているのだろう。少し押しただけでは開きそうにない。上方を見ると、飛び降りた階の開口部から手が内部に差し出されていた。


こちらに向かって攻撃を仕掛けてくるつもりだと判断し、急いで次の行動に移る。


少し無理な体勢ではあるが、強引に投入口の扉を蹴った。空間に余裕がないため、あまり勢いはつけられない。


三度目の蹴りでバクンッという音と共に扉が勢いよく開く。すぐに足から先に入れて両腕の力で体を押し出した。


投入口から先のフロアに身を投げ出した瞬間、ダストシュートのチューブ内で雷光の様なものが走る。


『痛っ!』


投入口の扉の縁に指がかかっていたため、指先に感電のような鋭い痺れが襲った。


間一髪だったが、ここで安堵しているわけにはいかない。すぐにあの白人男性が追いかけてくるだろう。


立ち上がり、帽子を目深にかぶって足早に去る。


このフロアはODS社のものではない。別の会社のフロアに侵入してまで追ってくるかはわからないが、セキュリティレベルによっては可能と思った方がいい。会社によって個室にはセキュリティを設けているが、ランニングコストを抑えるために通路までカバーしていないところも少なくはないのだ。


目立たないように歩く。


清掃員の格好をしているのだから、それほど気にはされないはずだった。


業務用エレベーターがある場所へと向かい、その手前にある従業員用のドアにIDをかざす。ここは清掃スタッフなどが専用に使うブースで、ODS社にいた白人男性が入ってくるためにはセキュリティを壊す必要がある。そのようなリスクまで背負って追ってくるかは一種の賭けになるが、可能性は狭まるはずだった。


タイミングよくエレベーターに乗れれば、そのまま建物外への脱出も難しくはないだろう。




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