李仁は検査入院も含めて数日で退院した。特に後遺症も無く、頭の傷も問題ないとのこと。二人はほっとした。
入院中にお見舞いに来てくれた人たちからのプレゼントがいくつかあり、中にはひまわりがあった。
湊音はそれをテーブルの上に飾ってニコニコと眺めている。2人にとってひまわりはとても重要なものである。
6年前、夏の終わりに訪れた北海道の富良野のラベンダー畑のある施設で湊音は李仁にプロポーズされた。
しかし李仁はラベンダー畑もひまわりも時期が終わってしまうことを調べておらず、ラベンダーはちょうどスタッフたちに刈り取られ、近くにあるひまわり畑に移動したが、たくさんのひまわりたちがうつむいて枯れていた。
李仁は普段オネエな喋りに仕草なのだが、こういうふうにカッコつけた時に限ってうまくいかない、ある意味残念な人である。
枯れた花たちの前でのプロポーズになってしまったのを李仁は今でも悔やんでいる。だからこの時期になると枯れない造花のひまわりを置いて飾っているのだ。
だがそれでも湊音はすごく嬉しかった。ずっと恋人同士でいた2人、男同士の結婚はどうなのか。結婚せずこのままズルズル一緒にいていいのか、モヤモヤと湊音は悩んできた時期であった。
自分からプロポーズすることは全く考えていなかったが、李仁からのプロポーズにはすごく驚いていた。
『同性同士の結婚、これから色々と乗り越えなくてはいけないけど2人なら、ミナ君となら乗り越えられる。だから一緒に歩みましょう』
その時の言葉、湊音は思い出す。普段李仁がしないとても真面目な眼差し、今でも思い出すと惚れ惚れしてしまう。
「みーな君」
李仁に後ろから抱きつかれて驚く湊音。首筋に無数のキスをする。
「やめてよぉ」
李仁はやめない。腰に手を回して服の中に手を入れてくる。
「あの頃も夜激しく愛し合ったじゃない」
「あの頃はあの頃! もう寝るよっ」
と振り向くと、李仁がキスをする。湊音は堪忍してそのキスに応える。
「しょうがないなぁ……」
「ふふふ」
「明日はお互い早いんだから」
「はいはい、わかりました」