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第34話 李仁が倒れた!

 数日後のことであった。李仁が倒れたと湊音は勤務中に連絡が来てタクシーで病院に向かう。


 朝、李仁は普通に料理をしていて何も変わらない様子だった。

 今まで大病も怪我どころか風邪でダウンしない李仁であったが……。


 病院に着いた湊音は受付に行く。

「……槻山李仁は!」

「しばらくお待ちください……失礼ですが、ご家族の方で?」

 受付の人は湊音をじっと見る。彼はあがる息をコントロールして落ち着かせて


「家族です! 李仁は僕の夫です!」

 と、咄嗟に言ったもののなんかしっくりこない。


 教えてもらった病室に慌てて駆けつけると点滴をしてベッドに横たわる李仁がいた。少し顔色が悪い。そして頭を打ったのか包帯が巻かれている。倒れた時に打ったのであろう。

「ミナ君……」

「李仁ぉおおおお」

 湊音はボロボロに涙を流し、李仁に抱きついた。

「大丈夫よぉ、心配かけてごめんね」


 李仁は過労で倒れたと診断された。他に異常はなく、命に関わることでもないそうだ。 

 昼は書店本部、夜はバーテンダーとして働く。李仁は好きで働いているものの、かなりのハードワークである。


 夜になって湊音も落ち着き、李仁の隣で付き添う。

「あとね、お医者さんに禁煙外来すすめられちゃった」

 湊音の心配をよそに笑顔でいる李仁。しかし湊音は暗い顔をしている。

「……そんな顔しないでって。人間ドックも毎年受けてて異常もないし、まぁ、ちょっとあそこが元気ないけどぉ」 

 と笑わせようとしても湊音は笑わない。それどころか涙ぐんでる。

「もう嫌だよっ、死なないでっ」

「だからわたしは死なないって」

「もしなにかあったとしたらっ!」

 湊音の両目からボロボロと涙が流れ続ける。


「大丈夫、パートナー協定結んで私たち#夫夫__ふーふ__#だし。家族だし。互いに何があってもなんとかなるんだから。貯金もしてるんだし、心配しないで」

「金とかそういう問題じゃない! 李仁そのものがっ、いなくなったら……」


 李仁は湊音の頬に手をやる。

「私いなくても周りを頼って。貴方は甘え下手なんだから。みんな守ってくれるわよ」


 付き合い下手でもあり友達の少ない湊音だったが、李仁が自分の友達を湊音に会わせていたのも、そういう理由があった。


「って、私はまだ死なないから。仕事も調整しなきゃね。バーテンダーの仕事もやっぱり引退ね。来年40だし無茶はしちゃだめね、お互い」

 まだ泣き続ける湊音。


「もぉ、私だって心配なのよ。貴方はただでさえ怪我や病気絶えないんだからっ」

 李仁の親指が湊音の口に入る。それを含み、湊音は舐め、しゃぶる。

「もぉ、こんな時までエッチなことしないの。甘えん坊、ミナ君。貴方を残して逝けないわ」

 李仁も涙をこぼした。湊音の頭を撫でて。

「ミナ君、私のあそこ元気ないけど欲しい?」

「うん……」

 李仁の指を口から出して李仁の元気がないアレを湊音は口に含んだ。

「ミナ君っ……本当好きね」

 湊音は無言でしゃぶりつく。李仁は声を押し殺して悶えながら湊音の頭を撫でる。湊音は李仁のを舐りながらも自分のあれも触る。だんだん大きくなる。吐息も漏れて鼻息も荒くなる。


 実はそんなラブラブな病室の外には一人……しどろもどろして落ち着かない。

「どうしようかなぁ……今日は帰るか?」


 彼らの友人である、テーラーのシゲさんが見舞いに駆けつけに来たのだが、二人の世界にいつ入ればいいのかわからないまま。しかも今は……。

 そこに看護師さんが検診に来たが、シゲさんが止めた。

「少し待っててもらえますかね」

「え、でも……」

「また呼びますから……」

「時間ですから」


「だからそのー……お取り込み中なんで!」


 つい大きな声を出してしまったシゲさん。その声が病室まで聞こえて慌てて李仁と湊音は元どおりにする。二人は目があって笑う。

「李仁、元気じゃん」

「ミナ君のおかげ……」

「ちょっとトイレに行ってくる……」

「待ってて、後でお口でしてあげる……」

「だめっ、今は休んでなさいっ」



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