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第13話 進展?!

またとある夜、湊音は李仁のバーにいた。先日は学校帰りに本屋に寄って、遠くから李仁を見ていたのだが、最近は駅に近いこともあり、毎日のように本屋に寄ってから帰るか、本屋にいなければバーに足を運ぶ生活が続いて1ヶ月が経過していた。


ちょうど1ヶ月前に志津子から、マンションのベランダでタバコを吸うことが禁止になったと言われ、さらに職員室にあった喫煙室がなくなり、校内は全面禁煙になった。

モール内の喫茶店でさえも禁煙となり、喫煙者が追い込まれる事態に。湊音が唯一タバコを楽しめる場所は、李仁が働くバーだけとなった。


ビールとタラコスパゲティ、そしてタバコ、さらに李仁。湊音にとって、ここは憩いの場所となっていた。

彼自身も、なぜか分からないが、ほぼ毎日のようにメールをやり取りしていた。内容はたわいのない話や本の話など1日数件だが、それが続いている。本屋では遠くから見守り、時々気づいてもらってリアクションをもらう。バーでは同じ空間にいれば、それだけで満足だった。


だが、それ以上の進展は湊音には起こせなかった。どうしてこんなことをしているのか、本人もわからない。アクションを起こすことができない。明里との件が関係しているのか、それとも、相手が異性ではなく同性だからなのか。


そんな中、湊音の授業中に、手紙を周りに回している生徒がいた。メモ用紙を器用に折っていたのだ。メールでは伝えきれない、声にするのにもどうにもならない感情を、手紙に託す。

その手紙の折り方を生徒に教えてもらい、湊音は今、それをポケットに忍ばせていた。本屋では渡せなかったが、バーでならカウンター越しに渡せるかもしれない。


手紙には湊音はこう書いていた。

「二人きりになれるところでお話ししたいです」

それだけだ。言葉にすればいいのに、メールで打てばいいことなのに。

『どのタイミングで渡そう』

と、李仁の様子をチラチラと伺う。相変わらず姿勢も良く、動作一つ一つに湊音は惚れ惚れしてしまう。しかし、今日はこの手紙を渡してから帰りたいと思っていた。


「どうしたの、湊音くん」


どうやら、湊音の視線と仕草で李仁に勘付かれたようだ。微笑む李仁に、湊音は決死の思いでポケットから手紙を取り出して差し出す。


「あら、なぁに?」


その場で手紙を開けられ、湊音は焦るが、李仁がそれを読んで納得した様子で、湊音の耳元でささやいた。


「ねぇ、あと一時間で上がりなの。そのあと付き合ってくれる?」


そのささやきに、湊音はどきっとしてしまう。その異常さに悶えるが、冷静になり、小声で答えた。


「はい……待ってます」

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