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第59話 目標達成なんだよぉ

 秋ごろから売り出し始めた商品に、冬の初め頃には実家の父の耳にまで届き、そして食いついた。


  コンバットレーション。つまり戦闘糧食にも最適だとして注文を入れてきたのだ。まぁあの脳筋の家ならそうなるよな。だがはっきり言って私の工房だけでは回せないので市街地に大きな工場を立てることになった。これには父も出資という形で噛んでもらった。私の資金だけでは買えないからね。しかも工場は二つ。それぞれ戦闘糧食用と傷用ポーション用だ。


 こうなってくると親子経営みたいな感じだが、父はあくまで領主と言う立場で距離を取ってやってくれるようだ。私の下へ来るのはあくまで役人だけだ。


 彼らと話を詰めていく。工場は急ピッチで建てる予定で、来年の春には二つの工場が出来る。


 そこで必要になったのが工場の総管理責任者だ。


 私はそんなものはやりたくないので断った。


 私がやることは錬金術でフリーザー等の装置を作ることだけ。それ以外のことは改めて人を雇うことで対応する。


 管理は領主である父の子飼いの役人に任せることになった。これはもう領主主導の大事業となったことの証左。本来なら喜ぶべき案件だが、私はどうでもいいので、それ以上は関わらないことに。とはいえ既に凍結乾燥の特許が下りているので、父が戦闘糧食と傷用ポーションを作れば作るほど私は大儲けなんだけどな。


 あぁそうだ。フリーザー等の装置の特許者に使用料も払わなきゃな。その辺のことも工場の管理責任者に丸投げした。私はあくまで工房の運営のみに従事するつもりなのでね。


 父からは「でかした!」とお褒めの言葉を賜ったらしい。家出中なので直接は会ってないけど。


 と、まぁそんなこんなで私は十六歳の冬を忙しく過ごしたのだった。


 そして新年を迎えて私は十七歳となった。シエラは七歳だ。


 この調子だと、お金だけの問題を考えるなら私の目的は達成できたと言える。錬金術で左団扇。もうこれから一生働かなくても特許料だけで生きていけるのは確定した。ボル師匠にも払うお金はいずれ用意できるだろう。


 で、新年から三日ほどを鍛錬だけして過ごしたのだが……


「暇だ……」


 それに当初の目標でもあった生理用品を作るという目標が宙ぶらりんだ。なので結局、シエラとともに錬金術の勉強もしつつ過ごす。


 そして……


 それから私の目標としていた生理用品を作るのに二年もの歳月がかかった。生命を弄るというのは思いのほか大変だったのだ。


 それでも二十歳になる前の十九歳に私は億万長者になった。


 目標は達成したけど……


 これからどうしよう?


 何を目標に生きていけばいいのか……


 困った私は結局、筋肉を鍛えることに。ただひたすら筋肉を鍛えるだけの日々が過ぎていく。


「あれ? 振り出しに戻っちゃった」


 まぁいっか。


 人生なんてそんなものだ。

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