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第57話 凍結乾燥


「出来たー!」


 凍結乾燥フリーズドライをするために夜な夜な作っていた三つの機材が完成した。


「さっそく挑戦だぁ!」


 まずは凍結工程。マイナス四〇度で乾燥させる物(今回はメリンダさんが作ってくれたシチュー)を急速凍結させる。そのために私がフリーザーの中に入るのだが、そのまま入ると寒いのでホットドリンクを飲む。これで寒さが気にならなくなる。


 次に真空排気の行程でフリーザの中に置いてある減圧器と真空ポンプの出番だ。マイナス四〇度の世界で減圧器と真空ポンプの機材の中に試験液(メリンダさんが作ってくれたシチュー)を入れて稼働させる。稼働させる前に私は当然フリーザーからも出る。そのまま中に居たら私も凍結乾燥されちゃうからね。


 今回の試験液であるメリンダさんが作ってくれたシチューは、ガラス容器の中に一食分づつ小分けにして入れてある。ガラス瓶もいずれは耐熱耐圧ガラスに変えたいが、まぁ今はいいや。


 次に加熱工程。加熱言うても温めるのではなく、減圧と真空ポンプによる昇華を活発に促す工程だ。やることは見守るだけだけどな。


 そうやって出来た試験液(メリンダさんが作ってくれたシチュー)。最後はそれをフリーザーから取り出すために真空ポンプと減圧器を止めて人が入れる状態まで待ってから入る。


「あっ、ガラス瓶がいくつか割れてぇら」


 まぁしゃーない。やはり近いうちに耐熱耐圧ガラスに替える必要があるな。ガラスの欠片を除けてから錬金符で作った保存用の革袋にいれる。これにも神字が使われているので革袋は使い捨てではない。


 さて。どうやら凍結乾燥は成功のようだ。後は保存期間とかを試す必要があるが、これは実際に食べてみるしかないので、いくつかサンプルを作らなきゃいけない。


 って、一段落したら眠くなってきたな。とりあえずフリーザーを止めて私は一眠りすることにしたのだった。



 翌早朝。出勤してきたメリンダさんに起こされて目が覚めた。朝食を軽く摂ってから工房へ。そこで凍結乾燥させたシチューを温めてから元に戻すと言う工程を行う。


「味が変わってないといいけど……」


 一袋分だけ解凍して、いざ実食。


「はむ」


 ふむ。特に変わったところはないかな。後はこれが保存食として機能するかの実験もしなくてはいけない。そのためにサンプルをもう少し作る必要があるな。ちなみに耐熱耐圧ガラス……つまり強化ガラスに関しては既に特許が出されていた。つまり作り方は特許庁から出された本に載っていたのだ。これは僥倖。ありがたいな。


 というわけで強化ガラスでトレイのような平板を作った後で、食品サンプルの数も増やすためにフリーザーも稼働させるのだった。



 朝は鍛錬して昼は栄養ドリンクを作り、夜は勉強。ときおりフリーザーを稼働させて実験しては、翌朝にはメリンダさんに叩き起こされる日々が過ぎていく。


 季節は春から夏へ。そして秋へと変わる。


 来年からはシエラ達にも仕事を任させないといけない。まだ七歳だが、世間一般では仕事の見習いをさせ始める時期だ。本人たちに希望を聞いたところ、一人は親の家業。つまり薬師をやりたいとのこと。メリンダさんの娘は店員がやりたいと言っていて、シエラは私と一緒に錬金術がやりたいという。ならばシエラは私といっしょにヒーリア師匠のところに弟子入りだ。


 ついでなので私は工房の他に店も開業することにした。売り出すのは保存食と栄養ドリンクだ。本命のスライムを使ったオムツ商品はまだ私の技術が足りなくて作れていない。


 ただしそれも時間の問題だ。スライムのサンプルは養殖場から届けてもらえるので、それで実験を繰り返しているのだ。


 保存食の特許も取るべく動き出している。現在は特許を申請中で冬頃には下りる予定になっている。


 色々と忙しいが順調と言って良いだろう。

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