そろそろ領都に帰る頃になった。ダンジョン? 私は潜らないよ。魔石が流れたら博士が買ってくれるしね。
というわけで、ジンとバッツと帰ろっかって話をしたら、二人が謝ってきた。
「え、どうしたの急に?」
私が理由を問えば、ジンはどうやら帝国の領土に行きたいそうだ。
「騎士爵の位は得られたが、やっぱりもっと上を目指してみたいんだ。だからゴメン。ここでお別れだ」
おぉ。マジか……
「で、バッツは?」
「そりゃお前。俺は帝国の女の子をだなぁ」
「あぁ、はいはい。分かりました。ご自由に」
「酷え! 俺の扱い酷くない?」
「それだけのことをしてきたからでしょ。でも、そっかぁ。ここで二人とはお別れかぁ」
私がしみじみとしているとジンが言った。
「あぁ。たぶん、もう会うこともないだろう。お別れだ」
「そうだね……気を付けてね」
「あぁ。夢。叶えたいからな。リサも頑張れよ」
「ありがとう。でも何かあったら頼ってくれていいからね」
「あぁ。そうする」
私とジンが別れの挨拶をしているとバッツが横から入ってきた。
「なぁなぁ俺は? オレも頼っていい?」
「バッツは自力でなんとかなさい」
「酷ぇ! オレとリサっちの仲じゃん!」
「あはは。そうね。分かった。頼ってくれていいよ。二人が困る頃には私は生産職でがっぽり儲けて悠々自適の生活しているからね!」
「はは。それは頼もしいな。ならさ。これ、やるよ」
そう言って渡されたのはバッツが王様から受け取った報酬の金貨だ。
「ちょ、は? 何で?」
「先行投資ってやつさ」
「いやいやいや。受け取るわけには──」
「そんな連れないこと言うなよ。王様も言ってたじゃん。女の子へのプレゼント用だって。将来、俺が困ってたら助けてよ。ね」
正直ありがたい。モノ作りにも先立つものが必要なのだ。
「……ありがとう」
「おう」
「でも大丈夫なの? そのバッツたちだってお金がいるでしょ?」
「大丈夫。その分は取ってあるからさ」
「そっか。わかった」
ジンがバッツに「カッコつけすぎ」とか言って
「リサの言うことを良く聞いて良い大人になれよ?」
シエラが頷く。
「ん」
バッツもシエラに同様の別れの挨拶。
「良い女になれよ?」
私が突っ込む。
「その挨拶はどうかと思うよ?」
するとバッツ。
「はっは。将来オレが口説きたくなるぐらいの女になったら良いなって思ってな」
「アンタには指一本触れさせないから」
シエラには軽薄な男の口説き文句には気をつけるように教育をしようと心に誓う。
「んじゃあな」
二人はそう言って背を向けた。
「ありがとうね。楽しかった」
私が二人の背中にそう言えば、彼ら背中越しに手を振って去っていった。
「あっさりと行っちゃったね」
今生の別れになるかもなのに。
そんな私にシエラがポツリと言った。
「また会える?」
「どうだろうね」
私はシエラを抱き上げる。
「さて。私たちは私たちの今日を生きますか!」
「あい!」