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第44話 王都の酒場

 採寸を終え、装備品を預けた私は次に武器屋を紹介してもらった。そこではアダマンタイト製の棒を購入した。硬くて重いがその分、魔力との親和性が高く攻撃力という点においては結構な一品だ。その点ではミスリルでも良かったが、さすがにそっちは高くて買えなかった。


「むふふ。けっこう良い品が買えたかも」


 ジンは武具品を見て回っているだけ。


「買わないの?」と聞いてみたら、「武器はこれがあるからな」と刀を撫でた。


「けっこう良い品なの?」

「あぁ。耐摩耗性とか血を吸えば吸うほど切れ味が上がるとか、色々とあるらしい。オレも日々の手入れするぐらいしかしてないが、それでも刃こぼれ一つなく使えているからな。良い品だと思う」

「へぇ。どんな素材が使われているんだろうね! 錬金術かなぁ?」

「さぁ……オレも家にあった物を持ってきただけだから由来は分からない」

「分解してみる気はない?」

「元に戻せるならいいけど?」

「あはは。自信ないかも」

「じゃあ駄目だ」


 当然と言えば当然の話しをしながら今度は防具屋へ。ちなみにバッツはナンパに出かけたので、この場には居ない。レオル少年とシエラとケダマは店内をちょこちょこしてる。そのレオル少年が「オレもなんか欲しいなぁ」とか「いずれは冒険者になって大成功してやるぜ」とか話してる声が聞こえる。シエラは相槌を打っているだけだが、何だか二人は楽しそうだ。ちなみにケダマはシエラの横で顔を洗っている。


 武器屋で装備を買い、防具屋に向かった。そこでは小手と脛当てだけを購入した。どちらも革製の安いやつだ。それでも結構な値段がした。


「さすがに買いすぎちゃった。王都は物が高いね」


 その分、いい品も多いのだが。高いものは高いのだ。


 買い物を終えた私たちは、酒場へと繰り出す。南の賢者様と会う方法がないか。王と謁見が出来ないかを調べるためだ。酒場は値段はそこそこで活気があると言われる場所をレオル少年に紹介してもらった。


「それならキツネの巣穴亭だな。冒険者やら王都の人間がよく行く場所なんだ」

「レオルも一緒する?」

「良いのか?」

「好きなものを食べていいよ」

「やったぁ!」


 私たちはレオルの先導のもと狐の巣穴亭へと向かう。そこは王都の中心とも言えそうな場所にあった。


「豚の角煮が美味いらしいぜ」

「へぇ」


 中へ入って見回すとバッツが居た。女の子と一緒だ。給仕の子かな? 胸元を開けて大胆な格好をしている。


 私たちは少し離れた場所に移動して、別の給仕の女性に適当にオススメの食べ物を三人前お願いする。レオル少年はやはり豚の角煮を注文していた。


 そこに「相席良いか?」と聞いてきたオジさんがいたので頷く。冒険者っぽい。そのオジさんが仲間を呼び寄せて六人掛けの椅子が満杯になった。隣の机を引っ張って来てそこにも男たちが座る。


「よぉ。姉ちゃんたちは冒険者か?」


 最初に相席を良いかと聞いてきた男に話しかけられた。


「えぇ。っていっても新人だけどね」

「ってぇことはGランクか?」

「そう」

「Gランクがわざわざ仕事の少ない王都に何しに来たんだ?」

「ちょっと買い物に。後は……南の賢者って人に会いに」

「南の賢者?」

「知らない? スライムの養殖に成功した人って聞いたけど……」

「あぁ。スライム博士か」

「知ってるの?」

「あぁ。噂じゃあ相当のバカなんだとか」

「バカなの? 賢者って聞いたけど?」

「あっはっは。スライムに関しては、という”但し書”が必要らしいけどな」


 へぇ。私が「そうなんだ」と頷くと、男は「そんで? 会えたのか?」と聞いてきた。私は答える。


「それが王の直轄の組織らしくて会えなくて困ってるの」

「あぁ……だろうなぁ。今やスライム事業は王都になくてはならない事業になったからなぁ」

「そんなに?」

「あぁ。今の王都しか知らないヤツらには分からんだろうが、昔はな匂いが酷かったんだ」

「匂いって、街の匂いのこと?」

「そうさ。それが今やスライム様々ですっかり臭くなくなっちまった。もう昔には戻れねぇって話だ」


 なるほど。それだけ重要なことなんだね。男が更に質問してきた。


「でもよぉ。スライム博士に何の用なんだ?」

「私ね。錬金術士見習いでもあるの。それで一緒に研究しませんかって」


 すると男は笑った。


「あっはっは。まぁなぁ。これが四年ぐらい前なら喜んで一緒に仕事をしてくれたんだろうがなぁ」

「今は無理?」

「だろうなぁ」


 はぁ。そっかぁ……


 無理かぁ。そうなると自分で水属性のスライムと光属性のスライムを捕まえるなりしなきゃいけないんだよなぁ。あぁ気が遠くなる……

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