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第43話 ソラの魔法屋さん

 少年は「レオル」と名乗った。駄賃は小銅貨一枚からとのことだったので最初に試しに小銅貨一枚を渡した。すると目に見えてがっかりした表情をした。


「しけてんなぁ」


 まぁそうだろうとも。


「もし今後も納得のいく仕事をしてくれるなら最終的には大銀貨一枚を払うけど?」

「大銀貨!」


 すると目に見えてやる気を取り戻した。私は少し彼のことが心配になった。なんの保証もなく口約束だけで報酬につられて頑張る子供。いいカモにされそうだ。なので彼に忠告した。


「口約束だけで信じない方が良いよ?」

「ん? 姉ちゃんたちは嘘をつこうってのか?」

「そうじゃないけど。ちょっとだけ心配になったから忠告をね」

「大丈夫だよ。これでも良い人か悪い人かは分かるから」

「そう? ならいいけど」


 宿は可もなく不可もなくと言う感じだった。まぁ値段がそこそこならこんなものだろうと言う程度。その後は冒険者ギルドに行って、ルンバさんの完了印を見せて報酬をもらった。


「ねぇレオル?」

「ん、何?」

「次は魔法の装備品に詳しい武器屋と防具屋をそれぞれ教えてほしいんだけど……分かる?」

「おうさ。いくつかあるけど?」

「評判の良いところがいいかな。値段はこの際だから気にしないで」

「おっ景気が良いね! 分かった。ならソラさんの魔法屋さんかな。魔法の装備品に詳しいんだ」


 そう言われて言った場所は辺鄙な場所にあった。


「地下?」


 建物の地下を指差されて少し戸惑う。でもまぁジンとバッツも一緒だし何かあっても大丈夫だろうと地下への階段に足を踏み入れる。そこは薄暗い店だった。


「おぉ。雰囲気あるぅ」

「だろ。穴場なんだ。知る人ぞ知る名店」


 すると奥から人が出てきた。若い女性の声だ。


「あら、嬉しいことを言ってくれるんだね」


 ランプの火に照らされて出てきたのは私より少し背の低い。そして、びっくりするぐらい白い肌と髪をした紫色の瞳の女性が居た。


「おっ、ソラの姉ちゃん。居たんだ?」

「まぁね」

「奥に居るのかと思った」

「暇だったからお店の掃除をね。それで、そちらの人たちは?」


 レオルが「客だよ」と言って手を出した。


「にひひ。お駄賃くれよ」


 するとソラさんは口を尖らせながらレオルに小銅貨を三枚渡した。


「毎度あり!」


 そのやり取りを見て少し不安になったがまぁ気に入らなければ別の場所をお願いすれば良いと切り替えて、私はソラさんに用件を切り出した。


「あの、この子用の装備をお願いしたいのですが……」

「まぁ、可愛い!」


 そう言ってソラさんはシエラにちょいちょいと手招き。シエラがちょこちょこと前に進み出た。私は魔法のカバンから杖とローブを引っ張り出す。


「これを、この子用に仕立て直して欲しいんです」


 そう言ってソラさんにアイテムを渡す。


「へぇ。神聖樹の枝から作られた杖ですか。それにローブは、水龍の表皮にスパイダーシルクを編み込んだんですね。珍しい!」


 おぉ。一発で見抜いた!


「それであの、仕立て直してもらえますか?」

「そうですね。ローブの方は可能ですよ」

「杖は無理ですか?」

「いえ。杖は持ち主のイメージ次第で長さが変化する仕様のはずなので」


 するとソラさんが杖をシエラの渡してから言った。


「使いやすい大きさをイメージして魔力を流すの」

「あい」


 シエラが言われた通りにすると、杖がシュルシュルと短くなった。


「おぉ!」


 驚いた。そんな事ができるのか!


「ローブの方は……詰めましょうか。切るのは勿体ないので」


 シエラを採寸するというので奥の部屋へ私も付いていく。現在シエラの服は女児用の布の服だ。それを脱がせながら水龍の皮とスパイダーシルクのローブのことを説明してくれる。


「水龍の皮は水の精霊への働きかけをしやすくしてくれる効能があります。スパイダーシルクは主に耐刃性の為ですかね。後は着心地を良くする為にも使用されていると思われます」


 へぇ。ボル師匠が言っていた通りだ。


「うぅん。スパイダーシルクの糸がところどころ解れていたり、水龍の皮が傷んでいる部分がありますね。修繕に少し費用と日数が掛かりますがどうしますか?」


 私は値段と日数を聞いて、どちらも許容範囲なのでオッケーを出した。


「それではしばらく預かりますね」


 ソラさんはそう言って、採寸を始めたのだった。

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