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第41話 スライム養殖場の町

 その後も旅は順調に進んだのだが、頻繁に魔物が出てくるようになった。そしてその傾向が気になった。


「ゴブリンやホブゴブリンの数が多いね」


 ここ数日が特に顕著で、王都の一つ前にある街道沿いの町ではゴブリンやホブゴブリンによる被害も出ていた。この町は防御機能をほとんど取っ払っており外壁が薄い町なのだ。


 平和な時代で、それも開発が進んだ都市部近郊にある町とあって、大きな外郭を作って小さくまとまるより、王都の食料庫として拡張性を重視した町作りがされていて、ここ二年ほどで出来た新しい町らしい。ルンバさんと酒場に行っていたバッツが情報を持って帰ってきた。


「リサっち。聞いたか?」

「ん? 何?」

「ここの町の中心部にな、スライムの養殖場があるんだってよ」


 私の今回の旅の目的の一つだ。


「えぇ! ここがそうだったの!」


 私が驚いていると、ジンが更に情報を追加してくれた。


「なんでもスライム養殖場が一番最初にあったんだそうだ。そこに職員用の酒場や宿ができて、そうすると商売を考える奴が出てきて、それならいっそ王都の食料自給率も上げるかぁ的な感じになっての今らしい」

「えぇっとぉ、もしかしてスライム養殖場ってこの街の中心なの?」

「らしいな。どうする? 養殖場の管理者に会って話をするんだろ?」

「会える、かな?」

「行ってみれば分かるだろ」


 というわけで取り次ぎをしてもらうために、養殖場の管理をしている役場のような場所を探したが見つからない。そこで酒場で聞いて回ったのだが、どうやら王が管理しているようだということが分かった程度だった。


「会ってくれそうにないねぇ」

「そうだな。一介の冒険者ごときが会える立場ではないみたいだな」

「これは困った。まさか交渉すら出来ないとは……」


 うわぁ。どうしよう。暗礁に乗り上げちゃったよ!


 私がうーうー唸っていると、バッツが言った。


「とりあえず王都に行ってみねぇ?」


 ジンが同意の声を上げた。


「そうだな。ルンバさんを送り届けないといけないし。とりあえず出来ることからやろう。シエラの杖とローブの作製。その間に情報収集。何とか王に取り次いでもらえる方法を探すのが建設的だろうな」


 なるほど。確かにそうだと意見に賛成する。


 順調で単調だった旅がもうすぐ終わろうとしている。

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