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第39話 年始と出発

 年が明けた。ヒーリア師匠にお礼を言って朝には宿に帰る。一晩中語り合っていたので疲れたし眠いので新年初日は寝て過ごした。


 私はね。


 シエラは暇だったようで、一人で部屋の隅で瞑想をしていた。何か……子供らしくない子供になっちゃったな。外で遊ぶとかすればいいのにと思ったけど、すぐに友達がいないのだと気がついた。これはちょっと考えたほうが良いかもしれない。


 さて二日目。ジンとバッツが宿にやってきた。バッツは案の定というかアンジェラを見た瞬間から口説いていた。しかしアンジェラはそれを言葉巧みにかわしてみせる。なんか見ごたえがあるな。軽薄な男対身軽な女みたいな?


 私は気になったので聞いてみた。


「お金で買えるのに何で回りくどいことしてんの?」

「リサっち。それだと口説き落としたことにならないだろ?」

「はぁ……?」

「彼女としたいだけなら金を払えば良い。でもそうじゃないんだ。口説くという過程を楽しみたいんだ」

「……カッコいいこと言ってるけど、単にタダでやりたいだけなんじゃないの?」

「そうとも言う」

「……はぁ」


 真面目に聞いて損した。


「シエラ。いい。こんな男の口車に乗るような女にはなっちゃ駄目だからね?」

 シエラが「ん」と頷く。まったくもう! シエラの情操教育に悪い人間ばかりだ!


 さてと。一通り馬鹿な話も終えたし、ここからは真面目な話だ。


「で、どうするの? 明日辺りからまた村を見て回る?」


 ジンが頷く。


「あぁ、そうだな。どうせだ。王都側の村々を見て回っていこうと思うがどうだろう?」

「私は賛成」

「オレも賛成だ」

「シエラも賛成だぁよぉ」


 全員が賛成なので王都側の村を見て回ることになった。ちなみに王都のある方角は奥側と言われ雪が深い土地になっていくのが特徴だ。つまり、より人間が身動きが取れなくなっていく。ただ開発が進んでいるので魔物の数も少ないので仕事といえば、雪かきがある程度だろう。そう思っていた。


 しかし実際にはゴブリンやホブゴブリンがちょこちょこと湧いていて被害にあっていたのだ。


「よ!」


 ゴブリンの頭を木の棒で殴りつける。すると頭が粉々に砕け散った。


「ふぅ。今日はこの辺で切り上げる?」


 私がパーティのメンバーに問うとジンが答えた。


「そうだな。この調子だと明日もありそうだし」

「それにしても、このゴブリン何処から湧いてきたんだろうね」

「わからん。まぁ飯の種になるから良いんだけどな」

「そうだね」


 私たちの新年はゴブリン狩りから始まり、冬の多くをゴブリン狩りで費やした。そして春を迎えて雪が溶けた時点で王都に向けて出発した。


 順調に行けば十五日ほどの旅で、現在の私たちは王都まで行くという行商人さんの護衛の仕事をしている。ちなみに行商人さんの名前はルンバさんといって、お掃除が捗りそうな名前だ。


 御者台には私とシエラとルンバさんが座り、後ろの荷台にはジンとバッツが座り、ケダマは案の定シエラの太ももの上で丸まって寝てる。

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