ちなみに今日は山狩の日だ。山に入って魔物や獣を狩る。私たち以外にも冒険者は何名か居て彼らとは連携を密にしながら行動する。基本的にパーティで動くのだが……
「バッツ?」
「ん。何だ?」
「何でうちのパーティに加わってるの?」
「はっは。冷たいことを言うなよハニー。俺と君の仲じゃないか」
「誰がハニーか。それと親密になった覚えはないよ」
「いずれなるかも知れないだろ?」
「ならないよ」
しょうがないのでバッツも加えて山狩り開始だ。五歳のシエラには少々キツいかも知れないが、まぁいざとなれば私が抱っこすればいいので一緒に参加した。
山ではゴブリンがちょっと多く生息していて、たまぁにホブゴブリンが居る程度。ちなみにホブゴブリンはオークとほぼ同じぐらいの強さだ。時折この二匹が争っているのを目撃することがある程度には仲が悪い。
「そういえばバッツの冒険者ランクって未だにGランクなんだって?」
私が話題を振ればバッツが答える。
「おう!」
「Gランクって初心者そのままじゃない。どうして?」
「どうしてって、そりゃランクを上げることに興味がないからだな」
「興味がないって、もうすぐ二年目じゃないの? 仕事してる?」
「はっは。たまにな」
「はっはって……どうやって生活してるの?」
「そりゃあ。女の子に食わしてもらってる」
「ヒモなの?」
「そうなる……のかな? 別に特定の女性に食わしてもらってるわけではないが」
「じゃあ、どうやって?」
「あぁ。まぁそうだな。冒険者ギルドを通さずに直接、女の子たちから仕事を請け負ってる」
「デートする代わりに魔物を討伐する感じ?」
「そうそう」
「はぁ」
女のために生きてるタイプの男だ。そういうのも居るだろう。だが……
「ねぇ。知ってる?」
「何だ?」
「冒険者ランクって上げると女の子の食いつきが良くなるのよ?」
「な、何だと!」
「仕事を頑張って、その上デキる男がモテないわけないじゃない」
バッツが両膝から崩れ落ちる。
「し、知らなかった」
「今はまだ一六歳だから低ランクでもいいけど、年齢が上がっても低ランクだと仕事が出来ない男として女の子たちから総スカン食らうわよ?」
「なんてことだ」
相当にショックだったらしい。
「まぁ今からでも頑張ったらいいんじゃない?」
「……そうする。ありがとうリサ」
「いいえ。どういたしまして」
ちなみにそんな事を言っている私の現在の冒険者のランクはGランク。まぁ一年目だしそんなものだよね。それに私は魔道具士としても錬金術士としても活動してるので少々遅めだ。シエラもGランクだが私と行動を一緒にするのでしょうがない。ジンはEランクで順当に頑張っている感じとなっている。
それから山狩ではホブゴブリンと一対一で戦ってみた。オーク並に耐久力があるとかはなく、私の木の棒(元ホウキの柄)でボコったら簡単に倒せた。まぁ今の私の攻撃力ならオークでも倒せるだろうが。
村の宿屋に戻ってきて、ホブゴブリンと戦ってみた感想は「うぅん。木の棒だと、そろそろ限界かなぁ」だった。
するとバッツが呆れた顔を隠そうともせずに言った。
「木の棒でホブゴブリンをボコボコに出来るのってリサっちぐらいじゃね?」
「そうかな?」
「普通はせめて鉄の棒とかにするだろ。攻撃力も武器の耐久力も明らかに違うんだから」
「そうなんだけどね。今はお金を貯めてるとこなのよ」
「ほぉ?」
「来年の春に王都でシエラのお爺さんの形見から杖とローブを仕立てたいの。その時に私の棒も新調したくてさ」
「へぇ。いいな。王都かぁ。綺麗な女性がいっぱいいるんだろうなぁ」
そう言ってグヘヘと嫌らしく笑うバッツ。そんな彼にジンが言った。
「別に王都じゃなくても綺麗な女性なら居るだろ?」
「そりゃあそうだけどよ。でも考えてみろよ。都会の洗練されたお嬢様方とお近づきになりてぇじゃん? 田舎に咲く野菊もいいけどよ、綺麗なバラも愛でてみてぇじゃん?」
「都会の洗練された女性が冒険者なんて相手にするとは思えんが?」
「バカだなぁ。そんなのやってみなくちゃ分かんねぇだろ? 世の中には色んな人間が居るんだからよ!」
前向きだなぁ……って、ん?
「あれ? バッツってばもしかして付いてくる気?」
「あん? だって王都に行くんだろ?」
「えぇ。そうだけど……」
まぁいっか。別に害があるでなし。結局、いつの間にやらバッツという人間がパーティに加わり行動を共にすることになっていたのだった。