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第30話 冬のスケジュール

 三日ほど鍛錬をして過ごした後で、再びボル師匠の工房を尋ねた。


 皮をなめすのは終わったが、今度はこれを防虫加工したり縫わないといけないのだ。ボル師匠の工房でそれらの作業方法を習ってこなしていく。全部で三十二枚あるので少々失敗しても大丈夫だ。最初は不出来な加工と縫い合わせだったが、それも数をこなしていくとだんだんマシになっていった。


「これって売れますかね?」


 ボル師匠に質問してみると「バザールでなら売れるかもね」とのことだ。つまり正規の販売店や魔道具師ギルドでは買い取ってくれないということなのだろう。バザールについて聞いてみる。


「バザールは誰でも出せるよ。商業ギルドに出店の許可をもらったらね。年末に冬のバザールの開催があるから出店してみるといい」


 年末かぁ。三ヶ月は先だな。


「一ヶ月ぐらい前から出店者の募集をするから、こまめに商業ギルドに顔を出すといいよ」

「はい」


 それにしてもこの冬は領都で何をして過ごそうか。仕事はしないといけないから冒険者業かな。



 秋も深まってきたこの頃。シエラとケダマが暖を取るために私に引っ付く事が増えた。まぁ私も温いからありがたく抱きしめるんですけどね。宿屋で暇を見つけては革を縫っていく。防虫加工は終えたので工房でなくても出来る作業だ。ちなみに裁縫道具はボル師匠から購入した。またお金が減っていく。


 それ以外だとヒーリア師匠の家に本を取りに行くというイベントもあった。驚いたことにヒーリア師匠の自宅はけっこう広く本宅と別宅、そして工房とがあった。別宅には本が大量にあるという。そこから初心者用の錬金術の本を探し出すのは非常に大変な作業だった。


「なにぶん昔に読んでいた本じゃからなぁ。何処にあるのやら。腐ってなきゃいいが」


 そんな事を口に出すヒーリア師匠。結局、暇を見つけてちょっとずつでも本の整理をしようという話になった。主に弟子の私がね。


 それからジンにも「一狩り行こうぜ!」と誘われた。ジンいわく。


「冬は魔物が食べ物を求めて人里に降りてくるんだ。防壁のある街はともかく、柵しかない村にとっては一大事。いちおう自警団とかある村もあるが素人だ。それに鍛錬ばかりじゃ飽きるし、たまには実戦に行こう」


 私もそれには賛成なので了承をする。


「冬……大忙しじゃん」


 というわけで、本格的な冬になるまで三〇日ほど。それまでに本の整理ぐらいは終わらせたいなと思ったのだった。

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