その後、講義から解放されたのは深夜もだいぶ遅くなった時間帯だった。シエラは完全におネムの時間でケダマと一緒に寝てる。それにしても……
「怒涛のごとく始まったな」
凄かった。ヒーリアのお爺さん、なんかめっちゃ輝いていた。帰る時はめっちゃツヤツヤしていた気がする。
「あれは本物だ。本物の錬金術師だ」
さて、冒険者。魔道具士、錬金術士の三つを始めたわけだが冒険者の方は基本的に生活費を稼ぐ為のものだ。現在、私の懐はけっこう潤っているといって良い。
「でも、勉強のために貴重な紙や筆ペンやインクは必須。そうなると貯蓄はあっという間になくなるわけで……」
やはり冒険者稼業は辞められそうにない。魔道具士としては本を読む程度で良いだろう。特に魔物事典。どの魔物にどんな属性があるのかを知っておくと色々と捗るはずだ。
でもスライムかぁ。それも水と光に属してるやつ。この辺には居ない種だなぁ。
「あっそうだ。ボル師匠に魔物事典を借りなきゃ」
さて、今日は私も、もう寝よう。
「おやすみぃ」
※
※
※
お腹の付近が何だか、もそもそとするな。なんだろうと思って目が覚めた。まだ夜が明けきらない早朝のようで室内は暗い。懐をみたらシエラが抱きついていた。足元にはケダマもいるようで重みを感じる。秋の気配がだいぶ色濃くなってきて少し冷えるから寒かったのだろう。私はシエラを抱きしめて再び眠りについた。
しばらく寝てたら、やっぱりお腹の付近でもそもそと動く物体が。私は寝ぼけながらもシエラだろうと頭を撫でる。するとシエラが「お腹すいたぁ」という声が聞こえてきた。うぅ……もう朝か。そうだ今日はボル師匠に本を借りに行く予定があったんだ。その後はジンと鍛錬の約束もあったな。
というわけで起きたら、朝はすっかり明けていた。
「準備するから先に食堂に行ってて?」
シエラのそう行って食堂に降りてもらう。私は朝の支度だ。
※
※
※
支度を終えて食堂に降りたところで女将に声を掛けられた。
「おはようさん。ずいぶんと遅い、お目覚めだね?」
「あはは。昨日ちょっとありまして」
「夜勤の連中に聞いたよ。ヒーリアの爺さんに捕まったって?」
「捕まったというか、弟子入りしました」
「おやまぁ。錬金術もやるのかい?」
「そうですね。必要な知識なので」
「ほへぇ。大変だねぇ」
「いえ。今すっごい充実してます」
「そうかい。あまり無理はするんじゃないよ?」
「はい。ありがとうございます」
女将さんの気遣いに感謝しながら朝食を頼むとすぐに出てきた。ちなみにシエラが給仕をしてくれた。もうすっかり宿の子だ。でもシエラには宿から給料は出ていない。正確にはご飯代と相殺されてる感じになっている。
「そうだ。今日は昼から鍛錬もあるけどシエラも一緒に行く?」
「行く!」
よっしゃ。
「筋肉を感じに行くぞ!」
「うん!」