酒場でシエラに地球の日本産の手遊び歌を教えたり、また逆にこの世界の手遊び歌を教わったりした。
他にもボーリングのオモチャを作って、それで遊んだりもした。
驚いたことに酒場の片隅でボーリングをやっていたら大人が食いついた。
ボールは木製で完全な球体ではないしピンだって不揃いだ。でも逆にそれが受けたようで、けっこう皆が真剣に遊んでいる。遊びってのは真剣にやるから楽しいまである。
そして、それを見ていた商人が私に商品化していいかを聞いてきたので許可をしたら、それなりに良い額のまとまったお金をくれた。
どうやら真剣に商機を見出したようだ。
ならばと他にも案を出した。ボールは出来れば綺麗な球体でとか、レーンも綺麗で滑らかな場所を作るとかレーンの両脇にガーターを作るとか。大人向けにボールを重くしてみるとか。点数制を導入して競い合うとか。まさに地球のボーリングそのもののルールだ。
そんな話を商人としていたらシエラが少し
「またお仕事してる……」
私はすぐさま謝りながら、彼女の膨らんだほっぺたを軽く摘んで潰したら機嫌が治ったので、また遊ぶ。そんな生活を四日ほどしたところでヒーリアのお爺さんがやってきた。時刻は昼を少し過ぎた時間帯だ。シエラに謝ってからヒーリアさんが少し飲んで落ち着いた頃に声を掛けた。
「ヒーリアさん」
「……なんじゃ?」
「弟子を取る気はないですか?」
「……」
「授業料も払いますから」
「……魔道具士になったんじゃなかったのか?」
「なりました。まだ見習いですが。ただ私の作りたい道具には錬金術の知識が必要そうなので」
するとヒーリアさんの目がキランと光った。
「ほぉ。錬金術を、な。具体的にはどんな道具なんじゃ?」
私は小さな声で言った。
「その、女性の月のものに関することでして……」
「む? それは……」
「はい。それの”おりもの”に関することです」
「……儂は全然詳しくないのじゃが、今あるものでは駄目なのか?」
「そうですね。今は布をあてたり、詰めたりと、その……正直不満でして」
「そうなのか?」
「はい。匂いとか下着の汚れとかが大変に気になります。そこでスライムをずっとずっと弱くしたみたいな存在を作って、こう……吸収して分解できないものかと」
私が考えているのは、地球で言えばナプキンやタンポンと言った生理用品だ。それに使われる高級水性ポリマーをスライムみたいな存在で代用できないかと考えたのだ。これが成功すればオムツだって作れる。赤ん坊から老人まで皆が幸せになれる品だ。大人だって幸せになれる。例えば着脱が面倒な鎧を身にまとっている戦士や騎士だって。オムツがあればトイレに行く回数が減るのだ。
護衛の任務中とかでトイレに行けないとかそういう場面できっと役に立つはずだ。
まぁその辺のことは追々やるとして、兎にも角にも生理用ナプキンとタンポンだ。私は冒険途中で度々、生理にみまわれて大変だったのだ。女性の騎士や冒険者だってきっと喜んでくれるはずだ。
ヒーリアさんにそう力説する。プレゼンテーションというやつだな。まぁ誰がこれを一番欲しているかと言われれば私なんだけどな!
するとヒーリアさんの瞳に輝きが宿った。
「面白い。それは確かに面白い。まぁ儂に作れそうではあるが……他人のアイディアを盗む下賤なものには落ちたくないのでな。いいじゃろう。錬金術を教えてやろう。生命を弄って新たに作り出すというのはホムンクルスとゴーレムの融合の類じゃな。かなりの高等錬金術の力が必要になる。付いて来いよ?」
私には神から授かった錬金術の才能はあるはずなのだ。だからきっと大丈夫。だから私は「はい! お願いします!」と力強く頷くのだった。