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第25話 寂しがり屋さん

 覚悟を問われて答えた私に、さらにボル師匠が言ったのは何を専攻するか、だった。


「何を学んでいくか。何を極めるかを決めたほうがいいよ。毛皮や革を使うのか、木工か金属か布なのか。何かを中心に据えて、そこから可能性を広げていく方が職人として強みが出るんだ」

「強み、ですか。師匠は何を中心に据えているんですか?」

「僕は毛皮が中心だね。そこから布に広げていった感じだ。製品としては主に貴族向けの寝具を扱っているよ。それ以外だとカーテンとか間仕切りなんてのもある。間仕切りは香木とか紙や布も使う」

「私が習ったのはそれらの基礎の部分なんですね?」

「そうだね」


 なるほど。色々と分かってきたな。


「リサちゃんは何か作りたいものでもあるのかな?」

「そうですね。あります」

「へぇ。もうあるのか。それは良いね」

「私は布が中心になりそうです。後は錬金術も必要そうなんですが……どうしましょう?」

「ふぅむ。ならヒーリアの爺さんにも師事するといい。弟子にしてくれるかどうかは分からないが」

「師匠が二人も居て良いんですか?」

「あぁ。魔道具師、錬金術師、薬師。この辺は境界が曖昧だからね。三つを同時進行でやる人もいるよ」

「ふへぇ。それは凄いですね」

「リサちゃんだって冒険者もやっているだろう?」

「それはそうですけど……」

「まぁいい。分かった。布に関することなら僕も多少は協力できるから、布の工房とかの紹介が必要なら言って。協力するよ」

「ありがとうございます。まぁそれもこれもヒーリアさんが弟子にしてくれなきゃ進まない話ですけどね」


 というわけで、私が寝泊まりする酒場件宿屋の『熊さんの憩いの場』に戻ってきた。そこにはお客に可愛がられるシエラが居た。みんなが彼女の頭を撫で、そして給仕をしてもらって喜んでいる。


 そんなシエラが私を見つけて駆けてきた。


「リサ姉ぇたん」


 そしてそのまま私の腰にしがみついた。


「いい子にしてた?」


 コクンと頷くシエラ。


「何かあったの?」


 するとふるふると無言で首を左右に振った。どうしたんだろう?


 私がお客さんたちに視線を向けると客の一人が言った。


「寂しかったんだろうさ。俺の娘がちょうどそんな感じになった事がある」


 客の何人かがウンウンと頷いている。なるほど良いことを教えてもらった。子を持つ男親たち。売春宿に居たことは突っ込まないでいてやろう。


 私はシエラの頭に手を乗せて「寂しかったの?」と聞くと、私のお腹に埋めてた顔を上げた。そこには涙目のシエラが。


 あらら。けっこう本格的に寂しかったみたいだ。


「ごめんね。寂しかったね。お仕事は一段落したから、しばらくは一緒だよ」


 すると小さな涙声で「本当に?」と聞かれたので私は「うん。本当だよ」と頷く。ヒーリアさんが酒場に顔を出すのは本当にたまになのだ。なので、しばらくは酒場でシエラと過ごそうと決めるのだった。

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